★NO. cinque BOSS MATTO-ADONE
男はゴクリ唾を飲み込み、怖じ怖じと続きを促した。
「……で、どうなったんすか?」
「朝方帰宅したボスは“犯人”の身柄確保と事情聴取、一緒にいた『元老幹部首座アルベルト』が瀕死の四人を運んだっつうわけだ。構成員も何人か駆り出されたよ、だから“噂”が広まったんだろう」
「口止めされなかったんですか?」
「特別されなかったぜ。まああれだろ、肉体の成長が止まる現象は俺たちヴァンパイアにとって別に『隠す』ことじゃねえし」
そう言ってもう一人の男が煙草を捨てる。そして靴裏で火を消しながら言葉を継いだ。
「そっからさ……、マット・アドーネの通り名が組織全体に浸透したのは」
「――俺がなに?」
突如そこへ、話題の人物ヴェルヴィオ・カイン・ベルゴオッティが現れた。隣には現幹部首座で顧問、ジョゼ・パダラメンテイもいる。
「ボ、ボス!」
二人は慌てて直立した。暗闇でもわかる程、顔色は酷く青白い。
「俺の噂? なになに?」
そんな二人を余所に、ヴェルヴィオは興味津々な様子で歩み寄ろうとする。がその首根っこをガシリ、ジョゼが掴んだ。冷たい瞳で彼を凝視し、組織の掟を口にした。
「お前は顧問である俺を通さなければコイツらと話せない立場だ、何度言えば理解できるんだヴェル」
「へいへい、わーったよ」
適当な相槌を打ち、ヴェルヴィオは足の向きを変える。「お前はまた」と説教しつつ後を追うジョゼ、どうやら彼らは偶然ここを通りかかっただけらしい。
(……助かった)
遠ざかる背中を見送り、九死に一生を得た二人は目配せし合った。か細い声音で男が助言する。
「……お前が部下にこの話するときは、場所選べよ」
「はい……」
あの見目麗しい仮面の下は化物だ。二人の足は彼らがいなくなっても尚、見えない恐怖で動けなかった。




