07 眠り姫
主人公のターン
「ヴ~、ヴ~ン。ム~」
狭間「魘されてるな」
セテラ「先ほどは心地よさそうに寝てたが・・・」
狭間「ほら、目を覚ませ」
「ん、んん?う~」
誰かに呼ばれたような気がして眠気を振り払うように頭をすりつけ、かすかに瞼を開いた。
此処は何処だろうかと夢うつつに考える。
真っ白な所、なにもない。
(もう、朝かな?)
え~と、今日は休みのはずだ。
狭間「起きたか?何がおこったか覚えているか?」
「・・・・・・・・・パソコン」
狭間・セテラ「「は?」」
「昨日、読んでた続きが見たい。むにゅぅ」
狭間・セテラ「「・・・・・・・・・・・」」
一日に必ず更新されてるのよね、面白いのよこれが。
「むぅ~・・そういえば新作が出る日だ。何処に片付けよう・・・パソコン1つで済んだら良いのに・・・」
セテラ「新作?」
狭間「本かゲームだと思う?この年頃なら。多分」
「パスワード・・・パスワードが分からない。こっちは有料・・・あぁ~全部、見れたら良いのに」
再び目を閉じもぞもぞと丸くなる。
狭間「おい、寝るな」
「うにゅ・・・お兄ちゃん、パソコンの動作が遅いんだけど、これウイルスなの?」
セテラ「ういるす?」
「え、古いから?」
狭間「いや、そんなこと言ってないし」
「買い替え時かなぁ?どっかに高性能なパソコンおいてないかな・・・んにぅ~」
狭間「聞こえるか?」
「にゅ?」
狭間「何がおこったか覚えてるか?」
お兄ちゃんだと思っていたけどよく聞いてみたら、ぜんぜん知らない人の声だ。
でも、起きなきゃとは思うものの目が開かない。身体も、何だか動きづらいような気がする。
とりあえず、この声の人に返事しないと
「・・・・・・・・・・なぁに?」
狭間「事故にあったんだ。覚えているか。」
「・・・じこ・・・・だれが」
狭間「お前が、だ」
じこ・・・事故?
「・・・・・・・じこ・・・・・・・・そうだ、わたし・・・ばすに・・」
バスに乗っていた。夏休みの宿題で読書感想文が出たから図書館に行こうとしていたんだ。
山の上にあるちょっと不便な図書館だけど、すごく広くて大きいんだ。時々行ってる。
そうだ、その途中で空から火が飛んできて、火が・・・とんできて
「わたし・・・しんだの?」
狭間「まだ死んでいない。だがもうじき死ぬ」
「・・・・しぬ」
狭間「こちらの不手際もあってな。お前を別の世界に送る事になった。」
「べつの、せかい・・・?・・・わたし、かえれないの?」
狭間「・・・・代償に願いを叶えよう」
「ねがい・・・・かぞくに、あいたい」
狭間「帰ることは出来ない。お前は事故にあったのだぞ。身体は無残なものになっている」
「・・・・・・・・・・」
狭間「生きたいのならば、別の世界で生まれ変わらなければならない。」
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残念だがこればかりはどうしようもない。
そもそも、地球は魔法やそれに順するものを禁じている。死に掛けている娘を助ける事はできないのだ。
「けんか、したの」
狭間「何?」
「おかあさんが、ないてる。」
セテラ「狭間の、どういうことだ。」
狭間「ここにいる彼女は、精神体だ。身体は地球に存在している。どうやら本体に引きずられているようだな。」
セテラ「地球で彼女はどうなっているんだ?」
狭間「押し潰されたのか酷い有様だ。正直、生きているのがおかしい。」
「おかあさんが、ないてるの、きっと、わたしが、きらい、って、いったから、だ」
狭間「いや・・・・・・お前の母親が泣いているのはきっと・・・」
お前が死ぬからだ。
とは言えなかった
「あいたい。あって、あやまらないと、」
夢うつつに丸まりながらも、開かない目からほろほろと涙を零しながら、会いたいと、ただただ繰り返す
狭間「・・・・お前は、事故にあったのだ。身体は無残なものになっている。その身体に戻る事になる。どういうことかわかるか?想像もつかないほどの激痛がその身を襲う。・・・・・・・それでも、会いたいか?」
ショックでそのまま狂うか死ぬかもしれない。それほどの痛みだ。それが分からないでもないだろうにこの娘は、目元と口元を少し緩めた。
「・・・・・・・・・ありがとう」
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主人公が起きられないのは泣いているお母さんに会いたいと願っているからです。
精神体が身体に戻ろうとしているからです。
主人公は些細なことでお母さんと喧嘩しました。理由も思い出せないぐらい些細なことです。
でも主人公が悪いことは覚えています。
謝ってから死にたいと思っています。
謝ってから死にたいと思っています。
大事なことなので二回言いました。
主人公は異世界に渡る云々を聞いていません。