04 狭間と地球とセテラと
また、主人公が出てこなくなりました。
主人公、どこいった!!
無数の星たちは一斉に姿を消し、3つの存在だけがそこに残された。
狭間「さて、この星同士では初めての異世界渡りだったな?まずは自己紹介だ」
地球「No.○○×△号。太陽系・第三惑星【地球】」
先ほどイライラしていた星―――地球―――が、不機嫌な空気を隠しもせず名乗り出た。
セテラ「No.○○×□号。【セテラ】だ」
次に名乗り出た星―――セテラ―――は、幾ばくか申し訳なさそうな顔をしていた
地球「つい先ほどセテラの人間が、狭間を潜り抜けてこちらへ出現した」
セテラ「それは、こちらも把握している。
ちなみに、そのトラベラー・・・今は?」
地球「消した。問題はあるか?」
セテラ「いや、無い。しかし早かったな?つい先ほどの出来事だったんだろう?」
非道なことをあっさりと口にした地球だが、以外にもセテラは気にする様子を見せない。
星にとって自らに住まう生き物は、等しく【わが子】だ。
しかし、かのトラベラーは言わば星を捨てたのだ。
星は全てを助く神ではない。
己を拒否した者の存在まで気に掛けるほど優しい存在では無い。
第一、今のセテラは、新たに出来るかもしれないわが子”候補”の事で頭が一杯なのだ。
地球「こちらに来て早々に力・・・魔法だったか?を使ったのだ。
私の星では魔法やそれに順するものを禁じているのでな。すぐに分かった。」
もし地球が魔法やそれに順するものを禁じていなければ、気付くのは遅れただろう。
そうなるとトラベラーの野望は叶い、さらに被害が出ただろう。ということだ
狭間「地球は・・・科学が発展した星だったな。では異世界渡りも禁じているということだな。」
セテラ「そうか。不幸中の幸い・・・といった所か。
地球の、迷惑を掛けたな。星会議の準備で忙しくて・・・いやこれは言い訳だな。すまなかった。」
地球「それはもういい、そんなに自分の星に目を向けられない事ぐらいは分かる。
私が、気になるのは私の子の待遇だ。」
疲れたように首を振り、ため息をつくその姿には哀愁が漂う。
ちなみに、地球は別に【子】の心配をして消沈しているわけではない。
いや、それなりに心配はしているが、星にとっての【子】は人間だけではない。
動物や植物・・・生きているモノ全てがが、等しく【子】なのだ。
一秒のうちにあまたの命が失われる現状でいまさら気落ちするものではない。
単に、イレギュラーな事は地球の仕事を増やすのだ。
その対応に追われ地球は、文字どうり疲れていた。
セテラ「子?」
狭間「地球が、トラベラーは魔法を使ったと言っていただろう?
地球に着いた早々、現地の人間に向かって攻撃したんだ」
地球「まだ、生きている者はいるが・・・な」
狭間「今彼らは、狭間で保護している。」
セテラ「それは・・・・地球は受け取れないのか?」
地球「既に死んだものはもう命の巡廻をさせた。引き取れるものも何人かいる。
けれども生命力が強いものが少々生き残っている。
人間だ。
酷い障害が残るものや植物状態になるものがいるんだ。
もとより、生き物の営みには普通は手を出さないのだが、さすがに・・・これは、な」
セテラ「確かに。魔法を禁じている地球にとっては、天災というレベルじゃない、イレギュラーもいいところだからな。
わかった、それらはこちらで受け取ろう。」
地球「そうしてくれ。だがそちらとこちらでは生活レベルが違いすぎる事は理解して欲しい。」
セテラ「読み書きとかか?」
地球「生活レベルだ。言葉と文字を解しても環境に適応できずに、すぐ死にそうだ。・・・モンスターとかいるし」
セテラ「ふむ。」
地球「別に、常に見守れと言うわけじゃないがなぁ・・・危機感が・・・戦闘レベルも低いだろうし」
狭間「ちなみにセテラは、彼らをどういう扱いにするつもりだ?」
セテラ「言葉に文字は勿論の事。基本的な知識。衣食住の用意だ。食べ物はしばらくのあいだだけだけどな。
身体はそちらにあるからな、新たにこちらで生み直す。外見は変わらないがな。
・・・私が介入して人を生み出すことのできる場所があるんだ。
まぁ、その際に少々身体・・・体質?が地球にいた時と変わるかもしれない。
悪くはしないからそこは安心してもらっていい。」
狭間「母親の腹からやり直すとか?」
セテラ「無しだ。地球で生まれるのを待てば良い。それが嫌だというなら、殺して命を巡廻させればいい。
地球では満足に生きていけないだろうから、こちらで受け入れるのだからな。」
地球「ふうん?」
セテラ「足りないか?」
地球「いや、どうだろうな?」
地球としてはセテラが受け入れた時点で、仕事もだいぶ減るので問題は無い。
けれども、やはり自分の子の事なので少々煮え切らないものがあるようだ。
狭間「なら何か・・・俺が5個ぐらい願い事を叶えてやろうか?」
セテラ「狭間の・・・大盤振る舞いだな。」
吃驚したように目を丸くして、狭間を見た。
地球「それなら問題は無い・・・の、か?・・・なにもそこまでする必要な無いのだが(汗)・・・」
自分が渋ったために、何かとんでもない事が起こりそうな予感にこっそり冷や汗をたらした。
狭間「いいさ。普通の人間に願い事は扱いづらい。むしろ生き残れる人間がいるかどうか・・・疑問だな?」
地球「狭間・・・・」
さすがに地球がムッとした表情で狭間を見る
狭間「そこまで面倒は見切れんさ。そうだろう?」
セテラ「こちらは構わないが?」
地球「・・・・私の星は・・・というかあの国は、最近・・・(チートとか・・・)いや、まぁいいか。
(自己責任だ)じゃあそうしてくれ。」
色々考察し、納得したのかつき物が落ちたようにすっきりした表情でうなづいた。
それを見た狭間は話は終わりとばかりに手を叩いた。
狭間「じゃ。これでお終い。セテラ、巻き込まれた子らの所に行くぞ。」
セテラ「あぁ。じゃあな地球の、彼らのことはきちんとやっておくからな。」
地球「事後報告は頼むぞ。」
読めばわかると思いますが、異世界のセテラにわたる人間は何人かいます。
でも、地球の彼らがお互い出会うことはありません。風のうわさには聞くかもしれませんが。