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2章 第25話  兄の戦果と空白

第二王子エリオスの到着は、静かなものだった。


だが、王族が門をくぐるという事実は、空気を一段引き締める。

領主は門前で深く礼を取る。

その動きは自然だ。

だが胸中は決して穏やかではない。


【王族だ】

【言葉を誤るな】

【今は戦時】


戦の影は、遠くにある。

だが政治は、目の前に立っている。


応接室へ通されると、香料と細工物が差し出された。


「兄も、深く感謝しております」

エリオスの声音は柔らかい。


領主は場を温めるように言葉を選ぶ。

「第一王子殿下の戦果、見事にございました。一度敗れながら、三日で再編し、丘陵を制したと」


エリオスの目が、誇らしく細められる。

「兄は強い」


その一言に、兄への尊敬が滲む。


カイが慎重に続ける。

「従軍された兵がご同行と伺いました」


護衛の一人が前に出る。

若いが、顔に刻まれたものがある。

「……我らは敗れました。丘を奪われ、谷へ押し込まれた」


部屋の空気が静まる。


「王子は退かなかった。誰よりも前に立った」


彼は続ける。


「命令ではなかった。ただ、そこに立った。それだけで、退路が消えた」

戦場の光景が、言葉の隙間に滲む。


「恐れが消えたのではない。恐れよりも、王子の背が大きかった」


リンドの胸が強く鳴る。

エリオスの内を読む。

【なぜそこまで】

【一度敗れたのに】

【何が変わった】

今度は読める。


真っ直ぐな疑問。


エリオスは小さく息を吐く。

「……それが知りたくて来ました」


正直な告白。


「敗戦の後、兄は何を見たのか。この土地で何を考えたのか」


領主は頷く。

客棟へ案内する。


川を望む窓。

質素な寝台。

静かな空気。


エリオスは立ち尽くす。

【兄上は、ここで――】

続きが崩れる。


ノイズ。

リンドはわずかに息苦しくなる。


読めない。


兄は強すぎた。

弟は、深すぎる。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。




この物語は、派手な奇跡ではなく、小さな選択と積み重ねを


大切にして書いています。


リンドの一歩一歩が、少しでも皆さまに届いていれば嬉しいです。




もし続きが気になる、応援してもいいと思っていただけましたら、


ブックマークや評価をいただけると励みになります。




いただいた反応は、今後の執筆の力になります。




これからも静かに、誠実に物語を積み上げていきます。


引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。

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