2章 第22話 半量という重み
冬の気配はまだ遠い。
だが、空気は硬い。
城門を叩いたのは、王都からの使者だった。
父は応接室で迎える。
リンドはその背後に立つ。
「第三次徴収の通達です」
使者は簡潔に告げる。
父の指先が机の縁をなぞる。
「量は」
「前回の半分。穀物のみ」
静寂。
重いのは量ではない。
来た、という事実だった。
「……半分か」
「第一王子殿下の意向です」
その瞬間、リンドの視界に文字が浮かぶ。
【これ以上は崩れる】
使者の本音ではない。
その背後にある意志。
【勢いは維持する。だが壊さない】
王子の設計。
父は問う。
「戦況は」
「進軍は継続中。敵は再編を急いでいると」
誇張はない。
勝利の装飾もない。
ただ、進んでいる。
父はゆっくりと頷いた。
「アムレストは応じる」
使者は去る。
扉が閉まる。
窓の外には変わらぬ町並み。
煙はいつも通りに上がっている。
父が低く言う。
「半分、か」
安堵ではない。
計測だ。
リンドは町を読む。
【また減る】
【冬は越えられるか】
【まだ大丈夫】
“まだ”が、揺れている。
父が続ける。
「備蓄はどれほど持つ」
「五割を切ります」
「……そうか」
机の地図は動かない。
戦は遠い。
だが確実に影を落とす。
リンドは理解する。
半量は優しさではない。
継続の意思だ。
【止まらない】
王子の文字は遠くからでも鮮明だった。
父は窓の外を見つめる。
「冬を越える策を考えねばならん」
命令ではない。
事実だ。
町は変化を好まない。
だが、変化は来る。
静かに。
確実に。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語は、派手な奇跡ではなく、小さな選択と積み重ねを
大切にして書いています。
リンドの一歩一歩が、少しでも皆さまに届いていれば嬉しいです。
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これからも静かに、誠実に物語を積み上げていきます。
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