2章 第21話 三度目
誰も席を立たない。
領主は地図を閉じずに言う。
「三度目は来る」
断言だった。
リンドは父を見る。
胸の奥に浮かぶ。
【確信】
領主は指を折る。
「第一。
勝利直後は補給が最大に要る」
奪還した領は荒れている。
兵も消耗している。
「第二。
残る一領を奪うなら、勢いを切らぬ」
攻勢は続く。
止めれば士気が落ちる。
「第三。
殿下の勝利は軍を昂らせる」
昂った軍は進む。
進めば消費は増える。
カイが頷く。
「兵站は拡張されるでしょう」
領主は机上に数字を書く。
「二度目までで備蓄は三割減」
指先が止まる。
「三度目が同規模で五割」
さらに続けば。
カイが静かに言う。
「冬越えが危うい」
執務室の空気が冷える。
妻は黙って聞いている。
領主は続ける。
「王子は配慮すると言った」
「はい」
「だが戦は約束だけで動かぬ」
補給は数字で動く。
熱は理屈を超える。
「抑えられても、来る」
確信。
リンドは読む。
【削られる】
だが今度は町ではない。
倉だ。
領主は深く息を吐く。
「対策を練る」
耕地拡張か。
配分変更か。
備蓄の再計算か。
どれも痛みを伴う。
川の音が遠い。
勝利は終わりではない。
加速だ。
三度目は来る。
そして今度は、
本当に危うい。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語は、派手な奇跡ではなく、小さな選択と積み重ねを
大切にして書いています。
リンドの一歩一歩が、少しでも皆さまに届いていれば嬉しいです。
もし続きが気になる、応援してもいいと思っていただけましたら、
ブックマークや評価をいただけると励みになります。
いただいた反応は、今後の執筆の力になります。
これからも静かに、誠実に物語を積み上げていきます。
引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。




