2章 第11話 届かなかった熱
夜。
執務室の灯りは消えない。
リンドは廊下に立つ。
中から、椅子の軋む音がする。
そして、小さな、押し殺した息。
【情けない】
【私は焦った】
【期待した】
すすり泣き。
【まだ変わらない】
【私だけが動こうとしていた】
リンドの胸に、前の世界の記憶が重なる。
会議室。
理想を語り、
部下がついてこず、
空回りする上司。
(言えば、救えるか)
導くことはできるかもしれない。
「まだ可能性はある」と伝えれば、
父は立ち上がるだろう。
だがそれは、父の熱をこちらが方向づけることになる。
リンドのスキルは、読むだけだ。
導くのは、自分の意志になる。
(また、同じことをするのか)
前の世界で、自分はそれで失敗した。
理屈で人を動かし、
結果、崩れた。
足音が近づく。
カイだ。
何も言わず、リンドの肩に触れる。
首を横に振る。
今は、違う。
リンドは扉を見る。
【それでも、諦めたくない】
その一行だけを読む。
何も伝えない。
ただ、立ち去る。
町は変われない。
だが、変わりたいと思った瞬間は確かにあった。
それが、今日の唯一の救いだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語は、派手な奇跡ではなく、小さな選択と積み重ねを
大切にして書いています。
リンドの一歩一歩が、少しでも皆さまに届いていれば嬉しいです。
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これからも静かに、誠実に物語を積み上げていきます。
引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。




