ガラスの靴で舞踏会行ったけど王子様がウザすぎて婚約破棄 #4
あれから1ヶ月が経ったころ、変わらずシンデレラは雑用をこなしていた。
しかし、継母から、今日だけは、部屋から出るなと鍵をかけられ閉じ込められてしまった。
なんだろうか。
窓を開けると……!
玄関に、アラン王子と国王が来ている!!
な、なんで!?
ドアから耳を澄まして会話を聞く。
「この、ガラスの靴が合う女性を探している」
ガラスの……。
私のだ。
それ、私のだ……。
今、出ていけば、この生活から、解放される。
解放、され……。
果たして、これでいいのか……?
いや、これでいい。これでいいに決まってる。なんで私は、こんなことで躊躇っている。
ガチャ、と、部屋のドアの鍵が開いた。
なんで? ドアを開けるとそこにはロバがいて。
他の動物たちも、一緒になって開けてくれていた。
……動物たちはみんな、私の味方なんだ。
……私に、味方なんていたんだ。
『さあ、早く馬車に乗りなさい。そうすれば、舞踏会に間に合うわ』
あの、魔法使いのお婆さんも
そっ……か。
私、ずっとひとりぼっちな気がしていたけど、そうじゃない、のかもしれない。
「待って、私もいます」
継母や姉が慌てて誤魔化そうとする。
それを家来たちが止め、私にアラン王子がガラスの靴を履かせようと。
ごたついていたから、ガラスの靴が宙に舞い、そして、パリーンという音とともに、地面に落ちた。
「ああ、これじゃあ、もう、誰のものか、わからくなってしまった」
「わかりますよ。だって、もう片方は私が持っていますから」
そのサイズは私の足にぴったりで。
そりゃそうだよ、だって私が、私が、私の、友達の、魔法使いからもらった大切な、大切なガラスの靴なんだから!!
「あなたが、シンデレラ……」
アラン王子は、箱を取り出し、スッと膝をついて、私の方を見つめ、箱を開けた。
中には、今までに見たこともないような、この世界の全ての光を集めたように輝くダイヤモンドの指輪が入っていた。
「僕と、結婚してください」
「はい、喜んで」
これで、よかったんだ。
これで。
これで……。
あれ。
なんでだろう。
目から、水が。
目から、たくさんの水が出てくる。
私、なんで、こんなに、嬉しいはずなのに……。
なんで。
こんなに。
苦しいの……?
「アラン王子、シンデレラ姫が泣いて喜んでおられるぞ」
「ああ、僕はとっても嬉しいよ。こんなに喜んでもらえるなんて」
違う。
違うの。
私は……。
ステンドグラスから光が差し込む。
十字架の下、タキシード姿のアラン王子の前と対峙する。今日のために家来の人たちが整えてくれた最高級のウェディングドレス。今の私は多分、過去最高に美しいんだろうな。
「アラン王子、シンデレラ姫に永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」
「シンデレラ姫、アラン王子に、永遠の愛を誓いますか?」
「誓……うわけないでしょ」
「なっ……!」
式場がどよめく中、流石は王子というべきか、アランは一瞬で、全てを察したかのようなギラリとした目に変わり、私の肩を掴みにかかる。
私はアランをドンと突き倒し、バージンロードを一気に駆け抜けた。
「追え! シンデレラを捕まえろ!」
そうアランが叫んだ頃にはもう遅い。
私は、外で待ち構えるカボチャの馬車へともう着きそうだ。
魔法使いのお婆さんが手を振っている。
馬車のドアに手をかけた。
「ロバに聞いて駆けつけたけど、シンデレラ、あなたは、本当に、これでよかったの?」
「うん、大丈夫。私は気づいたんだよ。私は、生まれた時から、自由だったんだって!」
それを聞いた白馬が吠え、ネズミの騎手は笑う。
「ハハ、最高だよシンデレラ姫、いや、レイチャミ!」
私は馬車に乗り込んだ。
カボチャの馬車は、追っ手をもろともせず、全速力で駆け抜ける。
このまま、どこまでも行こう。
もう、誰かに縛られたシンデレラは死んだんだ。
私はレイチャミ。
『あんなに僕の指図する通りに踊ってくれたり、この中庭に来てって、言ったらきてくれたり。そんな人は、あんまりいないかも』
『もし、もしだよ、シンデレラが俺と一緒になってくれたら、僕の家来に好きに命令してもいいよ。あいつらは僕の言うことを全部聞いてくれるから。君は、僕と結婚をすれば、全てを手に入れられるんだ。一緒に、幸せに暮らそう』
あのままだったら私は、必ずアランに縛られる。アランは継母と同じ考えを持っている。指図する通りに踊ってくれる。リードしてくれるなんてよく言ったものだよ、私はそんなの全く望んでいない。
私は自由な人間なんだよ。継母にも、王子にも、そして……。
『レイチャミ、これからは新しい継母と仲良く過ごすんだよ……そして、大きくなったら、素敵な王子様と、結婚して、そうすればレイチャミは、幸せで……』
私にレールを敷いてきた、お父様にも、誰にも支配されない、私は私のもの、それが本当の自由なんだよ。
『僕と、踊ってくれませんか』
あの時の、こいつは必ず俺のものになるって確信したかのような不敵な笑み。
そうやって生きてきたんだろお前は、女性はみんな俺のことが好きなんて勘違いしてるみたいだけど、私は違う。ざまあないね、そもそも自分が結婚相手を選ぶために国中の女を招待して舞踏会を開くって何様?
そんな奴に、私の自由を奪われてたまるかよ。
もう、追っ手は遠くなって来ている。
1番前にいる追っ手の馬車から声が聞こえる。
……アランの声だ。
「シンデレラ、最後にお願いがある、君が舞踏会で言いかけた、本当の名前を教えてくれー!!」
息をすうっと吸った。
「レイチャミ! シンデレラはもう、いないから!」
ハハ、アランが悔しそうな顔をしてやがる。
あいつはずっと周りの人たちを思い通りにし続けて来たから、生まれてこの方こんな気持ちを味わうなんて思ってもいなかったんだろうな。
私はその逆。ずっとその逆を生きてきた。
でも、今は違う。
ウエディングドレスにしまっておいた婚約指輪。
このまま別の国に着いたら、まずはこれを換金して寝床を確保しよう。
誰にもコントロールされない、1人の生活。
困った時は、この馬車のみんながいる。
そして、魔法使いのお婆さんという最強の味方もいる。
仕事を探して。
怖くなんてないさ。
今まで雑用をたくさんこなしてきたんだから。
私はこれから生きていける。
継母のためでも、お父様のためでも、そして、王子様のためでもない。
私のため、そのためだけに、生きていける。
フフッ!
空が青い!
最高の気分だわ!
♢
完結できたぁぁ!
「空が青い!
最高の気分だわ!」
やべえ、レイチャミに超共感できる。
まあ、自分の作品だからそりゃそうか。
この作品、どれくらいインプつくかな。いいねつくかな。
わからんけど、俺は、個人的にこの作品超好きかも。
人は自由を手に入れた時、どうしていいかわからなくなる、らしい。
少しだけ、このシンデレラが心配になる。
でも多分、大丈夫。だって、俺も、大丈夫、だから。
ちょっと、つらいけど。
はぁ。この物語の結末が正解って思いたい。
思いたいけど、やっぱ。
インスタを開くと結婚ストーリーばっかじゃねーか。
会社の先輩にも、早く結婚した方が、とか言われるし。
何より、田舎の実家から解放されて、遠くへって言って、一人暮らししたら、カップルだらけじゃねーか本当にイラつく。
大学生の頃に戻りてえ。
あの、バカみたいに1人で孤独に自由に、夢を追いかけていた大学生の頃に。
戻るか、大学生に。
マンガの世界で。
どこから描こう。
……最初から描いていくのめんどくせえし、大学4年のクリスマスあたりでいいか。
久々に、学生の恋愛漫画か。
なんか、楽しみになってきた。
そう考えたら、明日からも生きれそうな気がする。
また、街コンでも予約しようかな。
金を無駄に溶かすだけか?
はあ。結婚なんて死ねや。死ねばいいのに。
クソがっ……っと。今日は壁は殴らんぞ。
よっしゃ、鍵付き完全個室でブルジョワも悪くなかったけど、腹減ったし帰ろ。ブルジョワ? ブルジョア?どっちや。どうでもいいや。
外に出ると、雪が降っていた。
その雪が綺麗で幻想的で。
明日も頑張ろうなんて、普段絶対に思わないことを思いながら帰り道を歩いた。




