魔法使いになりたいの
「いってきます」
夜8時、そう告げて、左手に大きなスーツケースを持ち、家を出た。
「にゃーん」
前から私の黒猫が歩いてくる。
この子は私が旅立つことも知らないんだろうな。
しゃがんで、「行ってきます」って告げたら「にゃーん」って返ってきた。
まだ、しゃべらないままだな……。
駅に向かう途中、夜空を見上げて、箒で飛んでいる魔法使いたちのことを想う。
パパもママも、空の飛び方を教えてくれなかったから。
「レイチャミ」
箒で飛んでいたアランが、私に手を差し伸べた。
私は道に捨ててある箒を手に取り、もう片方の手をアランに向かって、伸ばした。
「私も、連れてって」
アランはフフッと笑い、空を飛んだ。
星屑のシャワーが流れる空、私は初めて、箒で空を飛べた。
♢
やっぱなんか、物語の究極形ってこういうやつだと思うんよ。
別世界というか、そういうのに入り込めるのが、漫画とかドラマとかの魅力な気がする。
結局、前の初恋は夕焼け色に染めてやった、はあんまりインプ稼げなかったな。
今日は休日、だから今から街コンに行くよ。
ラブコメ作家っつっても、リアルでは、結局、こんなことしかしてないし。
これは多分、恋ではない。
社会人になってから出会ってきた奴ら。アプリだったりクラブだったり相席だったり。
でもそれは全部、恋じゃない。
恋してないよ。ずっとここ数年。
そうだよ。恋に恋してる、だけ……。
ああぁかなじいいい




