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第80話「ミッドナイトデート」

ここは東の森の、手前にある草原……


俺が昼間、レベッカとイチャしていた草原だ。

先程、自宅から転移魔法で「ぱぱっ!」と移動した。

 

今は、真夜中。

さすがに、こんな時間は出歩いている人間など居やしない。


そもそも人間は、基本的に動物などよりも夜目が効かないから、視界が悪くなる。


その上、ここら辺は、魔物やら、肉食獣やら、危険な捕食者がわんさか出る。

夜間ならば、尚更。

だから、普通の人間がこんな時間にひとりで居たら自死行為。


でも……俺は大丈夫。


授かったレベル99により、魔法、スキルが自由自在に使え、

身体能力も著しく強化されている。


昼間の光景を見ているように、夜目は効くし、

メンタル面も、勇気のスキルでこれでもか!というくらいに補正されてもいる。


同じくクッカも平気。

可憐な見た目と違い、また幻影である事もあってか、

魔物や肉食獣は全然平気みたい。

ゴブは怖いと言うより、嫌いの範疇(はんちゅう)

逆に、蛇やミミズが見るのも苦手というのが、良くある人間女子みたいで可愛い。


話を戻そう。


俺達は、真夜中ならば、逆に人目がないぶん、堂々とデートが出来る。

 

とは言っても、クッカは実体の無い幻影だから、俺にしか見えない。


知らない奴が傍から見れば、俺は絶対変人に見える。

傍から見れば、何もナッシングな草原で『浮き浮きにやにや』しながら、

たったひとりで歩いている、極めて危ない男だろう。


まあ、細かい事は良い。


間違いなく、俺はクッカと手をつないで歩いている。


何と! 

クッカの唇にキス! という奇跡に続いて、

彼女の手も実体化するという二度目の奇跡が起きたのだ。


抜けるような白い肌をしたクッカの手は、とても綺麗だ。

形もほっそりとして華奢。

肌が白いから、白魚という形容がぴったりである。

まるで芸術品。

 

キスをした時に分かったが、この世界の女神様は人間の女子、

他の嫁ズと変わらない。

クッカの唇も他の嫁と変わらず、とても甘くて美味しかった。


つなぐ事が、出来るようになった手も同じく他の嫁ズと変わらない。

ほど良い温かさ、柔らかさを、俺の手へ伝えて来る。


頭上には、満天の星。

今にも降って来るという、形容がぴったり。


月明かりの淡い光が、俺達をほんのりと照らしている。


ちなみに今夜の俺の恰好は、いつか変態人狼ライカンにイジられた、

『魔王の手下系黒ファッション』である。


何故、今更と思うかもしれないが、これは万全を期したから。


真夜中にクッカとデートする男の正体が絶対に俺だと特定されないように、

クッカの助言で、変化の魔法を発動して行使、変装したのだ。


本当は素顔の俺と、堂々とデートしたいだろうに……

 

やはりクッカは俺の事を気遣(きづか)い、

自分のわがままを通したりしない女の子というのが分かる。

 

そう! 普通の女子なら、


「デートの時くらい外見は俺の素顔で!」とか

「私と一緒に居たいのならば、ダサイ恰好は絶対にNG! カッコよく決めなきゃ、到底許せない!」とか言いそうだからだ。

 

でもクッカは、決してそんな事は言わない。

俺の『素』を理解し、惚れてくれているから。

 

『周囲はとても静かだし、降るような星空は綺麗だし……ケン様と、いえ! 今後は、旦那様と呼びますね』


『おお! 俺を旦那様と呼んでくれるのか!』


『はい、将来、結婚した時の予行練習という事で! 特に今夜は旦那様と、ふたりきりだし、うふふふ♡ 凄くロマンチックな夜ですねぇ』


クッカが俺を名前ではなく、旦那様と呼んだ。


嬉しくもあり、こそばゆくもある。


『ああ、本当だな』


『私、旦那様と手をつなぐ事が出来て、とても嬉しいです! 本当に本当に、幸せです!』


『ああ! 俺もさ!』


『うふふ♡ 私達、全く同じ気持ちなんですねっ!』


クッカは、俺とイチャするのがとても嬉しいようだ。

当然、俺も同じ気持ち。


『旦那様、奇跡って……何度も起こるものなんですねぇ』


奇跡かぁ……

でも奇跡を起こすのは神様だって、昔から相場が決まっている。


と、なると……


『だが、これって絶対に、管理神様の仕業(しわざ)というか、もとい、御業(みわざ)、つまり、お力だな』


俺は自分で言って、確信した。


顔は見えず声しか知らないけれど、

悪戯っぽく笑い、Vサインを出す、イケメンのアラサーおじさん。


畏れ多いが、神様と言うよりも面倒見の良い兄貴分。


そんな管理神様は、神様にしては、ひどくフレンドリーで適当に思えるけど、

実は、将棋の名人の如く、先読み抜群で、とんでもなく深謀遠慮。

で、細やかな気遣いをしてくれる、凄い力を持つ上級神。


俺の中で、管理神様はそんなイメージ。


そんな俺の言葉を聞き、クッカは、相変わらずにこにこ笑っている。


『はい! きっと、管理神様の御業ですね! 本当にありがたい事です!』


『だよな! でも、ここまでして頂けるって、何か、特別な理由があるはずなんだけど……』


『確かに! 何も理由が無いのに、管理神様が、このような素晴らしい奇跡を起こして頂けるわけが、ありませんから』


『ああ、厳しい条件付きとはいえ、あっさりと俺とクッカの恋愛を許してくれたのも含めてさ』


『はい、何か……管理神様には、深きお考えがあるのですよ。ここは素直に喜び、心の底より、感謝しないといけません』


クッカは管理神様の意図も、敢えて前向きに、ポジティブに捉えていた。

 

まあ確かに……クッカの言う通りだ。


神様が判断し、行う事を、人間如きが邪推しても仕方が無いだろう。


『まあ、確かにね』


『でもこれって、もしかしたら……もしかしますよ』


これって、もしかする?


クッカが、もしかしたらって事?


『もしかしたら、もしかするって……ホントかな?』


俺の脳裏に浮かんだ事。

クッカが、幻影から完全な実体になる事。


その為には……何をしたら良いのだろうか。


『私は信じます。だから管理神様から出された課題をクリア出来るよう、合格を頂けるように、一生懸命、頑張ります、絶対に旦那様のお役に立って、私クッカは必要とされる存在になる! 必ず……夢を叶えます』


『夢を叶える、か……』


クッカの夢、それは俺との恋愛を全うし、ゆくゆくは花嫁になる事。

凄くいじらしいクッカ。


つい涙が出そうになる。


健気なクッカの頑張りを、俺もぜひ全力でアシストしたい。

彼女が嫁になってくれるのは、『俺の夢』でもあるのだから。


『……そう言えば、何となく思ったんだけど』


『何でしょう?』


『唇が実体化しているんだから……もしかして肉声で喋れないのかな?』


『あ!?』


もしもクッカが、リアルに喋れたとしたら?


直接、彼女と話せる。

そうなったら……凄いぞ。


『ですね! じゃあ……試してみます』


『うん! やってみよう』


『せ~の』


『どん!』


「…………」


肉声チャレンジしたクッカが一生懸命に口をパクパクさせている。


しかし、残念ながら声は全く出ていない。


う~ん、残念だ。


「…………」


『旦那様、やっぱり、現実はそう甘くはないみたいです』


クッカは、ちょっと残念そうだ。

俺も、少しがっかりした。


『そうか……クッカが喋れるようになるには、もっと頑張らないと駄目なのか』


『そう……みたいです。私、頑張ってポイント稼ぎますから』


え? ポイント?


何か、カード会社のサービスみたいで俗っぽいぞ。


ま、いっか。


気合いを入れるクッカの手を、俺は「きゅっ」と握ってやったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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