第8話「サヨナラは嫌!」
新連載です!
何卒宜しくお願い致します。
しばらく1日複数回の更新を行います。
どうぞ、お楽しみください。
こうして……襲って来た大群、100体超のゴブリンは、
俺の炎の剣による攻撃で、半分以上が炭化し、残りは慌てて逃げて行った。
念の為、女神のクッカ様に聞いたら、
この異世界でゴブリンの死骸は、メチャクチャ安いが売れるらしい。
何かの原料とか、2次使用されるのかまでは、聞かなかったけれど。
だが、この異世界へ来たばかりの俺。
売り先が分からないし、これから行くであろう村で売れるか、
どうかも分からない。
そもそも、これだけ真っ黒に炭化しては、商品価値がゼロ。
なので、結局放置した。
一応、戦った『証拠』だけ、いくつか持って行く事にする。
本当にギリギリの所で、何とか自分の命が助かったと知って……
逃げて来た少女は、俺にがっつり抱きついて「わんわん」泣いた。
俺は彼女を抱きしめ、背を軽くさすってあげた。
そりゃ、100体を超えるゴブリンの大群に追われれば、こうなるのは分かる。
もう少しで、頭からボリボリ喰われるところだったのだから。
散々泣いて、ようやく落ち着いた少女は言う。
「助けて頂いて、本当に本当にありがとうございます! 私はリゼット、ボヌール村、村長の娘です。年齢は15歳です」
リゼットちゃんは、見た目は白人系の外人で抜けるような白い肌。
服装も、ラノベで見た事のある中世西洋の農作業着を着用。
という事は、やはり俺の転生先は中世西洋風異世界か。
そして、中世西洋風異世界人の、この子がしゃべっているのは、
完璧な日本語!? さっきも驚いたが間違いない!!
天界にしても、この異世界にしても、日本語を喋るって。
う~む、一体、ど~なっているんだろ?
まあ、言葉が通じるのは、とても助かる。
だから、あまり深く考えないようにしよう。
ここで俺も「自分はケン・ユウキだ」と名乗り、旅人だと伝える。
「そうですか! ケン・ユウキ様と仰るのですね」
俺の名前を知ったリゼットちゃんは、更に嬉しそうにしている。
危機一髪! で命が助かった安堵感もあるのだろうし、
俺が命の恩人という事で完全に心を許してくれたらしい。
まあ、安堵したのは俺も同じ。
落ち着いた俺が、リゼットちゃんを良く見ると……
やっぱり、とびきりの美少女!!
肩までの、さらさらな髪は綺麗な栗色。
鼻筋が通っていて、端麗な顔立ち。
切れ長の目に輝く瞳は綺麗な鳶色。
身長は俺よりも低く、多分160㎝弱くらい。
比較出来るリゼットちゃんが基準で、俺はといえば身長170㎝超か。
話を戻すと、リゼットちゃんのスタイルはスレンダーかつ、
バランス良くて、ほぼモデル体型。
そして年齢は、俺とは同じ15歳だと。
やっぱり村の娘さん、それも村長の娘さんなんだ!
そして『ボヌール村』って言うんだ、これから俺が行く村って。
でも、感動したからもう一度。
正直言って、リゼットちゃん、可愛い! すっごく可愛い!!
俺はリゼットちゃんから、
ここは『プリムヴェールという王国』である事を、さりげなく教えて貰い……
そして、これから行くボヌール村の事を始め、もろもろの事が知りたくなって、
根掘り葉掘り、いろいろと聞いた。
あまり変に聞きすぎると、不審がられるので、
あくまでもさりげなく自然体を装って。
すると!
『コホン! 盛り上がっているところをお邪魔して悪いのですが、そういうのってもっと私に聞いて下さいよぉ』
あ! 忘れてた!
クッカ様の事。
何か、これって、ちょっと拗ねてる? もしかしてジェラシー?
って、何度も言ったが、今更ながら、天界の管理神様、女神様達とも、
俺、日本語で話しているよね?
ま、良いか、細かい事は。
という事で、俺は、すかさずクッカ様へ呼びかける。
ここは、ちゃんと謝っておこう。
『本当に御免なさい、申し訳ありません』
俺が素直に詫びたので、クッカ様は機嫌を直してくれた。
ノリノリで返して来る。
『な~んてね! 嘘でっす。とりあえず、ケン様とその子が無事で良かったです。まあゴブリンはレベル換算で1か2。突然変異の上位種でもせいぜいレベル5ですから、先ほど私が言ったように、レベル99のケン様が負けるわけがありません』
『そうなんですか。じゃあ、もし負けたら?』
『う~ん……基本的には絶対にありえませんが……そうなったらケン様は恥です。世界の汚点です、抹殺対象です』
『あ、ああ……そうですか……俺がゴブリンに負けたら恥で、世界の汚点で抹殺対象ですか』
クッカ様の容赦ない『口撃』に思わずドン引きした俺だったが、
とりあえず気を取り直す。
リゼットちゃんが俺へ、おずおずと手を差し出して来たからである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は今、そのリゼットちゃんと手を繋いで街道を歩いている。
彼女は、綺麗な鳶色の瞳で熱く俺を見つめているし、白い歯を見せて良く喋る。
しかし、ここで俺は、しっかり『例の件』をお願いしておかなくてはならない。
「あのさ……リゼットちゃんに、お願いがあるんだけれど」
「はいっ! 私にお願いって、何でしょうか? 何でも仰って下さい」
はきはきと、元気が良い。
さらさら栗毛の可憐なリゼットちゃんは、爽やか系健康美少女である。
「さっき俺が倒したゴブリンなんだけど……ほんの2、3体って事にしてくれない。総勢5体くらいで襲って来たのを撃退して、襲われたリゼットちゃんを何とか助けたって事にしてさ」
案の定、リゼットちゃんは、驚いて目を丸くした。
「え!? えええ!? ど、どうしてですか? たったおひとりで、あんなに大群のゴブを魔法で圧倒して、残りを蹴散らす! 本当に凄い事だと思いますが……」
この反応は想定内、俺は、自分の意図を伝える。
「いや……あまり目立ちたくないんだ、俺。出来れば……ボヌール村でこれから静かに、のんびり暮らしたいんだよ」
「え? ボヌール村は、静かでのんびりしていますよ」
ああ、駄目だ。
そういう意味じゃないっす。
さすがに話が込み入っているから、
俺の意図はリゼットちゃんに、すぐ理解して貰えない。
合わせて補足説明をしなければ。
「だ~か~ら~、村は静かでも……もしも、そんな事を言ったら、大騒ぎになるだろう?」
「ええ、私の命の恩人として、村長の父は村をあげてもてなしますし、村民全員参加で、宴が開かれる事でしょう。ご領主のオベール様からも、絶対にお呼びがかかると思います」
「だよね。そうなると、どうなる?」
「ええと……オベール様から、王都の国王様へ報告が行くでしょうね。ゆくゆくは、武運の誉れ高い勇士だと称えられ、王都へ招かれるかと……あ!?」
ここまで話し、ようやくリゼットちゃんも、俺の考えに気付いたようだ。
勇者の『青田買いシステム』は分からなくても、
俺が王都へ呼ばれるのが確実だという事が。
「だろう? 俺は多分、王都で召し抱えられるだろう。でも、そんなのは真っ平ごめんだ。俺は王都へなんか絶対に行きたくない、のんびりと暮らしたいんだ。……リゼットちゃんみたいな可愛い子とね」
ここで俺は、変化球を投げた。
実は半分以上、本音だ。
リゼットちゃん……すっごく可愛いもの。
本当にまじ天使!
転生前の22歳だと、もろ犯罪?
まあ、相手にもされないだろうが。
しかし、転生して15歳と、若くなった今の俺には、ぴったりの相手。
超が付く素敵な『彼女』候補だ。
俺の言葉を聞き、リゼットちゃんは驚いて、顔を赤くしてしまう。
「えええええっ!? わわわ、私みたいな可愛い子?」
「ああ、リゼットちゃんはとっても可愛いぞ。君みたいな可愛い子と一緒に、ボヌール村で暮らしたいんだ。農作業したり狩りをして、いろいろと村の人を手伝ってね」
思わず流れで口説いてしまったけれど……
そう、それこそが、俺が思い描いていた未来への理想図。
一緒に暮らせる、可愛い彼女の『あて』だけはなかったが……
もう風景が変わってしまった本当の故郷で暮らすのは、果たせぬ夢だもの……
せめて、これから行くであろう、ボヌール村でそういう暮らしをしたい。
そんな思いでリゼットちゃんを見れば、彼女は目を真ん丸にしている。
「わわわ、私と一緒に暮らすう!? もしかしてふたりで、ですかあ!?」
よし! ここは押しの一手。
はっきり言ってやろう。
「そう出来れば、ふたりきりで!」
「ええっ!? ケン様と私のふたりきりでって、よよ、夜はどうなるのかしら? って……ああなって、こうなって、ケン様が私を? いやっ、そんなところ触っちゃダメ! でもケン様なら構わないかな? えええっ、で、でも! は、恥ずかしいっ!」
顔をトマトのように真っ赤にしたリゼットちゃんは、
完全にひとつのシーンに囚われているようだ。
彼女は、想像力がと~っても豊かな少女なのだろう。
ここで俺は、問題のクロージングに入る。
「ああ、でもさ。もし正直に報告するのならば、俺はリゼットちゃんを送った後、一晩だけ泊まって翌朝、そのまま村を出る。さよならだ」
「さ、さ、さよなら!? ケン様と?」
いきなりの別離を告げられて驚き、
縋るような眼差しのリゼットちゃん。
鳶色の瞳が、涙で、じんわり潤んでいる。
「ああ、そうなる、俺はまた、どこかへ旅立つから」
「…………い、嫌あ!!! ケン様、行っちゃ駄目ええ!」
リゼットちゃんはそう叫ぶと、俺に取り縋って、
またも泣き出してしまったのである。
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