第7話「人喰いゴブリンの大群を倒せ!」
新連載です!
何卒宜しくお願い致します。
しばらく1日複数回の更新を行います。
どうぞ、お楽しみください。
「はあっ! はあっ! はあっ!」
凶悪なゴブリンの大群……
追われて来た美しい少女は完全に息を切らしていた。
俺の目の前で膝を突いてしまう。
もう……体力の限界らしい。
10代半ばと思しき少女は、これ以上、走れそうもない。
しかし、端麗な顔立ちたる少女の表情には、ほんの少しだけ安堵の表情が見えた。
見ず知らずの俺でも、『人間』が来た事で彼女はホッとしたに違いなかった。
膝を突いたまま、はあ、はあ、はあと、まだ息が荒い少女。
この子! 絶対に守ってあげないと!
気合いが入り、ふん!と息を吐いた俺は、両手を広げ、庇い、
彼女の前面に立つ。
少女を追って来たゴブリンどもの動きは、意外なほど素早い。
獲物の退路を断つというのか、あっという間に囲まれた。
改めて見ても……目の前に居るゴブリンどもは大群だ。
100体は、軽~く超えていよう。
多分、奴等は、『狩りのやり方』を知っているのだ。
俺は改めて、四方を見た。
前にもゴブリン。
後ろにもゴブリン。
右にも左にもゴブリン。
やはり完全に……囲まれた。
これでは、簡単には逃げられない。
数は2対100以上……
普通に考えれば、完全に詰んでいる。
すなわち絶体絶命なのだ。
何とか間に合ったという感じで、新手の俺が加わったが、
ゴブリンどもは『餌』がひとつ増えたぐらいにしか思っていない。
たかが、人間の餓鬼2匹。
さくっと殺して、ぺろっと喰ってやる。
俺のすっごく良くなった視力で見える、
奴等の血走って真っ赤な眼が、俺達を見据え……そう言っていた。
逃げて来た少女が、ふらつきながらも、ようやく立ち上がる。
俺の背中に必死にしがみついて、恐怖でガタガタ震えている。
ゲームではコマンド入力が自動のオートでも、倒せるゴブリンなど、
単なる『ザコキャラ』だと思い舐めていたのが大間違い。
……はっきり言って、怖い。
気力だけで持ってはいるが、助けに来た俺だって、意識を失ってしまいそうだ。
本音は、この子と同じ様に凄く怖い。
実際に見たリアルなゴブリンは、予想以上に凶暴だから。
乱ぐい歯をむき出し、凄い声で次々に吠え、俺達を喰おうとしている。
だらだらヨダレも垂らしている。
某映画に出て来る作り物の縫ぐるみを、
一万倍くらい、凶悪にした面構えなのである。
俺は果たして、こいつらに勝てるのだろうか?
とても後悔したが、今更もう後戻りは出来ない。
だが、唯一の希望、地獄に仏。
俺は、ここでクッカ様を呼ぶ。
念話でも大声を張り上げて。
相手のスペックを、一応は知りたいと思ったからだ。
『クッカ様あ!! ちょっと宜しいですかあ!!』
『はいっ! こちら、クッカ! 何でしょう? ケン様!』
『クッカ様ぁ!! 緊急事態ですっ!! 大至急でお願いしますう!! こいつらの事を教えてくださいっ!! 特に弱点をっ!!』
『はいっ! 了解です! ゴブリン。小型の人型魔物。体長50cmから最大1m前後。現在、半径100m以内に103体存在』
おお、凄い! それから?
『性格は残忍で陰険。食性は雑食。群れて人間や家畜も襲う。普段は地下に棲み、身体耐久力は弱し。物理攻撃に弱く、魔法耐性も一切無し。火属性の魔法が特に有効』
おおっ、すげぇ! ずらずらずらっと、詳しい情報、ありがとうございまっす。
相変わらず、早口且つ試験勉強の参考書みたいな模範解答だ。
俺は、思わず肉声が出た。
「おっし!! クッカ様!! ナイスフォローですよお!!」
『当然です! 私! ゴブリンなんて……大大大嫌い!!!』
はぁ? 何、それ?
え? 私はゴブリンが大大大嫌い?
これって、クッカ様の個人的な嗜好、個人情報って事?
まあ、良い! とりあえず、もう一度お礼を言おう。
好き嫌いの感想を含めたベストナビ、ありがとうございます、ってね。
『クッカ様ああ!! 重ね重ねありがとうございますうう!!』
『いいえ、どういたしましてっ!』
『とりあえずう!! 目の前のゴブリンどもを倒しますう!! どうしたら良いでしょうかああ!!』
『はい! 先ほどもお伝えしましたが、奴らは火が弱点です。火属性の魔法が有効ですから、ケン様の放つ炎で一気に燃やしちゃいましょう!』
『わ、分かりましたあ!! だけど!! 俺はどうやって!! 火の魔法を使うのでしょうおお!!』
勢い込んで尋ねる俺だが、クッカ様。
何を言っているの?って感じで言葉を戻して来る。
『……あの、緊急事態とおっしゃっていますが、全然そうではないですよ』
『え!? 緊急事態じゃない? ……のですか?』
『はい、その通り、ケン様は人間族ならば、究極のレベル99なのですよ』
『きゅ、究極のですかあ!!』
『はい! 普通の魔法使い、術者とは、全く! 全く違います』
『違いますか!!』
『ですから! 言霊が必要な一部例外を除き、大抵の魔法は当たり前のように、無詠唱、予備動作無しで使う事が出来ます』
『ですか!!』
『はい! ゴブリンの群れなどは、いくら居ても、問題はナッシング。指先を使わないでも抹殺可能です。今回は燃え盛る炎をイメージし、心で念じるだけ! 心で念じるだけでOK、それで終わり、です!』
最後は、きっぱり言い放つクッカ様。
『そ、そうですか!!』
う~ん。
俺がめちゃ強いし、ゴブリンの群れなど問題では無い事も分かりました。
でもなぁ……イメージして、念じるだけでOKと言っても、
具体的には、どうすれば発動出来るのでしょうか?
燃え盛る炎のイメージかあ、どうしようかあ。
炎って、マッチ? ライター? ガスコンロ? いや、ガスバーナー?
いやいや近いと言えば火炎放射器か? 思い切って、溶岩が噴き出る火山?
むむむ、俺の心の内なる声が、違うよ! ジャストじゃない!
それでは魔法は発動しないよ!と言っている気がする。
ああ、そうだよ、どれも何か、ぴったりと、はまらねえ!
……少し戸惑い、俺が口ごもってしまったその時。
がああああああっ! 一斉にゴブリンが吠え立てた。
来る! もう、猶予はない。
そうだ! 既に土壇場だ! 背水の陣だ!
……俺には分かる。
奴らが発する、おぞましい気配で分かるのだ。
そして俺の心には、何故か、気合いがどんどん、
そう! 反骨心がみなぎって来る。
くっそおお!!! このヤロおおーー!!!
負けてたまるかあああ!!!
転生したばかりなのに、喰われてたまるかよおお!!!
この子とふたり!!! 絶対に助かる!!!
必ず!!! 生き抜いてやるううう!!!
「おおおおおおおおおおおおおおお~~~~~!!!!!」
俺は、ゴブリンどもに気合負けしないよう、大声で咆哮した。
大声で吠えたら、更に更に落ち着いた。
勇気と力も、どんどん湧いて来る。
男として、いや一匹の雄として雌を絶対に守る!
そんな、強い気持ちになって来た。
よっし! イメージならば!
ああ、灯台下暗し!
ラノベで読んだ、カッコ良い炎の魔法剣士をイメージしてやれ!
持つ剣の刀身に、燃え盛る炎をまとわせ、戦うんだ!
レベル99の俺はそれだけじゃなく! 巨大な紅蓮の猛炎を放射出来る!!
魔法発動可能を確信した俺は、
震え怯える少女を片手に抱き、クッカ様の銅剣を抜き放つ。
その瞬間、ゴブリンが四方から突っ込んで来た。
ああ、またも分かる。
あっという間に、自分の体内魔力が高まって行く事が。
「燃え盛る炎よお! 剣に纏えっ! 放射~っ!!!」
ごおおおおおおおおおおおっつ!!!!!
す、すげぇぇ!!!
叫びながらイメージした通りに、激しい炎が噴き出しやがったぁ!!!
銅の剣から放射される熱が、俺の頬を打つ。
まさに火炎放射器、いやそれ以上だ。
こんな魔法を使うと、授かった銅の剣は溶けるんじゃないかと思ったが、
どうやら大丈夫みたい。
少し冷静になった俺。
余裕が出て来たぞ。
「くおらぁっ! 大量の汚物なんか塵も残さず焼却だ~っ!」
俺の剣から放たれた紅蓮の炎が30m近くも伸び、
巨大な竜の息のようにゴブリン達へ襲いかかる。
炎に包まれたゴブリンが、あっと言う間に炭化し、ちりぢりになって消失した。
よっしゃ! どんどん、ガンガン、やっつけろ~! 焼き払えええ!
ぎゃっぴ~~!!!
ぎゃあああああ!!!
俺はまず前面のゴブリン達を一気に焼き払うと、
少女をしっかり抱いたまま身体を回転させた。
思い掛けない反撃に躊躇したせいで、
俺と少女と、ゴブリンどもとの距離はまだ充分あった。
落ち着きを取り戻した俺は、正面に続いて側面、
背面の攻撃も存分に行う事が出来たのだ。
一方、俺にしがみついた少女は驚いて目を大きく見開き、呆然としている。
周囲を見た俺は、囲んだゴブリンがまだ唸り声をあげているのを見て、
彼女を抱いた腕に力を込めた。
「おいっ! まだ戦いは終わっていない、しっかり掴まっていろっ」
「は、はいっ!」
あれ? 言葉が通じるぞ?
俺は日本語を喋っているはずなのに……まあ、良いか。
戦闘中の今は、そんな細かい事を考えている暇は無い。
「ちらっ」と改めて少女の顔を見れば、肩までのさらさらな髪は綺麗な栗色。
鼻筋が通っていて、瞳が綺麗な鳶色。
抜けるような白い肌、おお! とびきり美しい少女である。
こういう凄く可愛い外人の女子って、
ネットサーフィンの際、動画で何度も何度も見ていたっけ。
彼女の年齢は……俺と同じくらいだろうか?
でも、やった! テンプレ通り、
可憐で美しいヒロインとの素敵な出会いが決定!?
これが、ヒーローの『お約束』って事だ。
俺は心の中でガッツポーズをし、持つ銅の剣から、
猛炎をどんどん放射させたのである。
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