第6話「ぼっち」
新連載です!
何卒宜しくお願い致します。
しばらく1日複数回の更新を行います。
どうぞ、お楽しみください。
こうして……転生した俺は……
気が付けば、見知らぬ道を歩いていた。
その上、周りには誰も居ない。
いくら探しても管理神様から付けて貰った、
サポート女神クッカ様の姿は見えなかった。
そういえば、彼女の呼び出し方を聞いていなかった……
ああ、俺の超ドジ、間抜け。
俺が現在、歩いているのは、
コンクリートやアスファルトで、ちゃんと整地、舗装された道ではない。
土がむきだしで、固く踏み固められただけの道。
あちこちに大きな石ころがごろごろしている、超が付く田舎道だ。
だいぶ昔、故郷で歩いた道に、ほんのちょっとだけ似ている。
誰かと道を歩く、楽しい思い出があったような気もするが……
ああ! ……いくら考えても駄目だ! 思い出せない。
そして周囲はといえば、日本ではあまり見られないような、
見渡す限り、緑一面の大草原なのである。
これまでのパターンのお約束と言うのか、
周りには人間どころか、本当に猫の子一匹居ない。
たったひとりぼっちだ。
先ほど、心だけを飛ばされた『現在の故郷』でもそうであったが。
まあ、正直ぼっちはそんなに嫌いじゃない。
けれど、いきなりは嫌だ。
さすがに、心の準備が欲しいよ。
俺は今、どこに居るのだろうか?
何という名前の国で、どんな国なのか、どこら辺にあるとか、
そして俺は今、どこに居るとか、大きな町は近くにあるのか、とか。
そして肝心のこれから俺が行く予定の、
スローライフを送る事となる、多分、ひなびた田舎の小さな村なのだろうが、
どこにあるのかとか、もろもろが、全く分からない。
これから、この異世界で生きて行く上で、情報量が少な過ぎる!
もしもサポート女神のクッカ様が居れば、根掘り葉掘り聞いて、
いろいろ優しく教えて貰えるのになあと、俺は嘆きに嘆く。
その上、何と! 自分の容姿も変わっていた。
とはいっても、今は鏡が無い。
持っている手荷物を調べたが、入ってはいなかった。
なので、自分の顔は良く分からない。
だが、頑丈そうな厚手の革鎧を着込んでいる事にまずびっくり!
そして細身の剣も鞘に入って、腰から提げられていた。
この剣は確か……あの無機質な何も無い異界で、
女神クッカ様が掲げていた地味な銅の剣だ。
でも……これじゃあ、どこぞのフアンタスティックなコスプレーヤー。
イメージが湧かない方へ敢えて言うのならば、
超有名ロールプレイングゲームやハリウッドファンタジー映画で見られる、
中世西洋風の冒険者に近い恰好……それも極めてシンプルな初期装備。
武器は銅製の剣で幸い。
ヒノキの棒やこん棒ではなかったから。
といえば、分かり易いだろう。
口の悪い奴が見たら、
「センス最悪なコスプレイヤーだ」とか、からかうに違いない。
それに身体つきにも、結構な変化が生じていた。
ひとまわり、いやふたまわりほど体格が違っている。
但し、でかくじゃない、立った視線からすると、
逆に少しだけど背が低くなっているのだ。
更に気になって、鎧をめくって「ちらっ」と腹を見ると……
最近運動不足のせいか、22歳の若さなのに、
若干出ていた醜い『アレ』が消えていた。
醜悪な「ぽにょん」とした肉塊の代わりに、
引き締まって見事に割れた腹筋が目に飛び込んで来る。
腕の肌の張りを見ても、「ぴかぴかつやつや」
まるで、10代の少年だった頃の俺だ。
う~む。
顔は見えないけれど、背格好からすると、大体15歳くらいかな。
よし! 誰かに聞かれたら、15歳って事にしておくか!
たぶん管理神様は、俺を15歳くらいの少年に転生させ、
この異世界へ送ってくれたに違いない。
管理神様は、小さな農村へ送るって言っていたけど、どんな村なのだろうか?
中世西洋風の村なのだろうか?
で、あれば俺の中二病&ラノベ&ゲーム知識等々が役に立つ?
そして分不相応過ぎる能力、レベル99!!
「きゃ~っ」
おおっ!
いきなり、若い女の子の悲鳴が聞こえた。
でも周囲を見渡したら、どこにも姿が見えない。
……もしかして、俺の五感……聴覚が異常に上がっていて、
遠くの声でも聞こえたからだろうか?
それだけではない。
ず~っと遠くから、『やばそうな気配』が伝わって来る。
「ええっと」……街道を外れて、ここからずっと西の方角だぞ。
俺が読んだ事のある大好きなラノベ展開だと、
凶悪なゴブリンに襲われた女の子を助けて、
村へ一緒に行くパターンがあるけれど……
よしっ! 行ってみようか。
ええっと? 距離は?
俺がふとそう考えた時。
『目標まで西へ真っすぐ! 距離約1Km』
若い女性の無機質な声が、いきなり心の中で響いた。
これはもしや! ……聞き覚えのある声じゃないか?
も、もしかして! ああ、思い出した、間違いない!!
「おお!! クッカ様!!」
喜びのあまり、思わず肉声が出た。
戻って来るのは、心と心の会話、念話による返事である。
『はいっ! 私、クッカで~す!』
よかった!
俺の専任女神様が居てくれた!
寂しく乾いていた俺の心は潤った。
美少女女神の、鈴を鳴らすような美声でね。
でもこれって……
ナビゲーターシステム?
そう! まるで……音声案内カーナビだ。
それも目標まで1kmって!?
俺は、そんなに遠くの声が聞こえたのか?
管理神様が使っていた心の声は、確か念話だと言っていた、
じゃあ俺も、心で念じる念話を使い、クッカ様と話してみよう。
『クッカ様、とりあえず急ぎましょう、少し離れているようですが、誰かが助けを求めています!』
『了解です!』
おお、話せた!
念話が使えた!
そして、事情を察したクッカ様の返事がまた心の中で響き、俺は走り出した。
「おおおっ、身体が軽い!」
凄い! 凄いぞ!!
自分の身体ながら、まさに飛ぶような感じだ。
これもレベル99の力なのだろうか?
「ぶわっ」と砂煙が巻きあがり、
俺はとんでもない速度で西へ向かい、走って行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺が急ぎ、ダッシュで現場へ向かうと、
多くの邪悪な気配が、小さな怯えた気配を追いかけているのを感じた。
ええと……もしかして索敵って出来るのかな?
すると……またクッカ様の声が聞こえる。
『ケン様、目標まであと約500m。目標の周囲には多数の敵反応あり。敵はアンノウンです!』
『え!? 敵はアンノウン? アンノウンって何でしたっけ?』
『はい、アンノウンとは、ケン様がまだ遭遇していない未確認の敵の事ですよ』
俺は、記憶を呼び覚ます。
確かにアンノウンというのは、未知とか不明って意味である。
ああ、そうか!
俺は転生先のルールを瞬時に認識し、理解した。
実際に敵に遭遇して確認しないと、自分の中に知識として蓄えられないんだ。
まだ俺は、クッカ様の声を聴いただけで、1回も敵にも誰にも出会っていないから。
「きゃあああ~~!!!」
また、女の子の叫ぶ声が耳へ入った。
さっきより、ずっと近い。
「これは、やばいぞ! もっと急がないと!」
自分に言い聞かせた俺は、一気に速度を上げる。
すると、草原を必死にこちらへ走ってくる女の子がひとり。
髪を振り乱して、逃げて来る。
そして、凄い数で追いかけて来ているのは……
1mくらいの小柄な身体に、サルを思い切り醜く兇悪にしたような顔付き。
雰囲気からして、やはりお約束の……ザコ敵ゴブリンだ。
少し先に、青々とした森が見える。
あそこで、ゴブリンどもに見付かって逃げて来たのだろうか?
森からこの草原まで、ず~っと走って来たのであろう。
必死に走る少女は、もう息が切れそうだ。
俺は手を大きく振り、大声を張り上げる。
「お~いいい!!! こっちだああ~っ!!!」
そういえば、この異世界は俺の話す言葉――日本語って通じるのだろうか?
後から考えれば、違和感ありありだが……
天界の管理神様や女神様達とは日本語で話せたし、
俺は日本語しか喋れないが……まあ、良い!
今は超が付く緊急事態だし、そんな事は言っていられない。
いざとなれば、身振り手振りで何とかなるであろう。
俺の声が聞こえたのか、「ハッ!」とした少女は、こちらに気付いたようだ。
異世界であれば、例えが微妙ではあるが、
『地獄に仏』という、安堵の表情を浮かべて、転がるように走って来る。
俺は立ち止まると、逃げて来た少女をしっかり受け止めるように、
両手を大きく広げたのである。
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