第45話「俺が綺麗にしてやるぜ」
「きゃああっ! ケーン!!!」
高さ10m以上もある物見櫓から、飛び降りた俺。
そんな俺を見て、ミシェルは驚き、危惧の悲鳴を上げた。
しかし!
空中で身体を「くるり!」と回転させた俺は、
地上に「すたっ!」と華麗に降り立つ。
よし! こういう人間離れした動きも可能だって、
俺の心の内なる声が教えてくれたのだ。
行け! カッコよく、1回転しながら、櫓から飛び降りてみろってね。
そして俺は従い、行動、楽勝でクリアした。
まるで、前世の体操選手が会心の演技をしたかのように。
でも、誰も言ってくれないから、自分で言う。
はい! 10点満点!
優勝! ……ってね。
そして俺の心の内なる声はこうも言った。
たった10mなど、お前ならば、飛び降りたって全くのノーダメージだと。
いやいや、それどころか、高さが数千m級の山から落下しても、
物理オール無効を習得済みの俺は無事に着地し、無傷だと、保証もしてくれた。
まあ、着地の際、少しショックがあるくらいだと、言ってはいたが。
うむ! オーガに思い切り殴られ、全身骨折してまで習得した甲斐があったぜ。
という事で、かすり傷もなく、無事に降りた俺を見て、
驚いて大きく目を見開き、口をポカンと開けるミシェル。
「へ!?」
そんなミシェルへ、俺は後ろ向きのまま勝利のVサインを出す。
「大丈夫! 俺はノーダメージ、全く問題無いぞ!」というアピールだ。
そんな目立つ事をした俺へ、その場に居る全員の視線が注がれている。
だが、これは本来なら、俺の趣旨に反する行動だ。
管理神様から与えられた、レベル99の超常能力を悟られないようにし、
静かに目立たず生きていこうと決めていたから。
『ああっ! ケ、ケン様!待って下さいっ!』
いつのまにかクッカが、俺の傍らで、
あの色っぽい服をなびかせながら飛翔している。
綺麗で、さらさらな金髪の髪もなびいていて、相変わらずの超美少女振りだ。
思わぬ目の保養に感謝した俺は、満面の笑みで返す。
『おう! クッカ!』
『おう! クッカ! じゃないですよお! どうしてあんな事をしたんですかっ? すっごく目立ってしまったじゃあないですか?』
『ああ、ついカッとなってな。だけど俺のスキルって、いろいろあるんだな』
『ま、まあ、確かに……』
心と心の会話、念話で、手短かに話す俺達。
マジギレしたんじゃないかという予想に反し、
冷静で落ち着いた俺の声を聞いて、クッカは安心したようである。
でも、管理神様が与えたオールスキルって、どんだけなんだ。
このようなシーンでの『お約束』は、
愛しい恋人にちょっかいを出された主人公が我を忘れ、
無茶をするというパターンが王道。
そしてピンチに陥ったり、知られたくない秘密を知られ、
窮地に追い込まれてしまうとか、ね。
確かに俺も物見櫓を飛び降りた時は、
そのような状態ではあった。
いわゆる『熱血』のスキルが発動したのだ。
だが、ここで俺に補正能力がかかった。
それが『沈着冷静』のスキルである。
『クッカ! 大丈夫、一瞬、怒りで熱くはなったが、今の俺はきわめて冷静だから』
『な、成る程! その感じだと大丈夫みたいですね、でもほどほどに……』
『了解!』
クッカの制止は、ありがたい。
こんな時の、止め役は貴重なのだ。
管理神様、見てました?
クッカはね、最高の相棒ですよ。
ばっちり、助けて貰っていますよ。
俺には、無くてはならない女子です!
だから俺の嫁にするOKを下さい!
どうか、どうか、お願いしまっす!
俺は、天界に居る筈の管理神様へ、アピールしながらも前方を見る。
レベッカの尻を触った、クランのリーダーの不埒な髭男。
奴は、俺が飛び降りた時は、さすがにびっくりしたものの……
今は落ち着きを取り戻し、腕組みをして、にやにやし、俺を見ている。
奴の剣を抱えたレベッカが、
半泣き状態で、俺の方へ逃げるように駆け寄って来た。
「わぁ~ん! ダ~リ~ン、あんな最低男にお尻をばっちり触られちゃったぁ! 私、穢されちゃったよう」
いつも強気で、一流の狩人として腕も立つレベッカだが……
たまに油断をして、こうなってしまう。
オーガに、襲われた時も一緒だ。
確かにとんだ『困ったちゃん』ではあるけれど、実はそんなところも俺は好きだ。
面倒見てあげなきゃ、って気になってしまう。
「お~、よしよし。じゃあキレイ、キレイしてやるさ」
「へ? キレイ、キレイって?」
いやいや、レベッカ。
俺がお前のお尻を『浄化』してやるんだよ。
さわさわさわ~
俺は、髭男が触った尻を、やさ~しく念入りに触り直してやった。
傍から見れば、美少女を弄ぶ危ない変態少年。
だが、このような状況下の夫婦間?では、
ケアの為の大事な大事なスキンシップなのだ。
「あふふ~ん、ダーリン、気持ち良い~」
案の定、気持ち良さそうに、目を細めるレベッカ。
終いには、俺に抱きついて、「ふうっ」と熱い息を吐いている。
こうして、俺達は……完全にふたりの世界へと突入した。
微妙な沈黙が、辺りを支配した……
「…………」
「…………」
「…………」
周囲の温度が、極度に冷え冷えして、ビシビシ鳴った気がしたのは錯覚か?
前世地球から、爆発しろ!という怒りの声も聞こえた気が……
まあ、『治療』はそろそろ良いだろう。
「という事だ、レベッカ。仇は討ってやるよ、下がっていろ」
「うっふふふ。ダーリン、了解っ!」
復活したレベッカは、満足した笑顔で正門の方へ去って行く。
彼女は、凶暴なオーガを何体も素手で圧倒した、俺の真の力を知っている。
だから、あんな冒険者の相手をするくらい、楽勝だと思っているようだ。
そんなレベッカの期待に応え、「この世に俺より強い奴は居ない!」とか、
一度くらいは、堂々と言いたい。
某有名世紀末救世主様のセリフではないが、
レベル99はこの世界での究極レベルだから多分言い切っても大丈夫だろう。
ただ慎重に対処するに、越したことはない。
俺は、傍らのクッカに呼び掛ける。
『クッカ! あの髭男のスペックって分かるかな?』
『はい! 大丈夫です、確認します。……はい、出ましたっ』
『うわ! 早っ! とりあえず、こんなん出ましたけどって、感じだな』
クッカは念話で、髭男のスペックを俺の心へ送ってくれた。
おお、まるで前世で使っていたメールみたい。
念話の応用って、こんな事も出来るのか、便利だ!
しかし……個人情報が満載だな。
ガエル・カンポ(人間族:男:38歳:独身、結婚歴無し)
レベル20
クラン大狼リーダー
冒険者レベルC
スキル:剣技、防御術、恫喝
犯罪歴10回
苦手なもの:ゴキブリ
当然、妻無しは勿論、彼女無し、居ない歴イコール年齢
そっか! リーダーの髭男ガエル・カンポのレベルは20……
案の定、俺より遥かに下だった。
けれど、本当に、このおっさんはレベル20なんだろうか?
どうせあの、アバウト管理神様の事だ。
適当に、設定した可能性もある。
しかしスキルに恫喝があるのと、犯罪歴10回って何だ?
どんだけ余罪があるんだよ。
何をやったのか知らないが、しょ~もない。
本当に懲りない奴だ。
だが、威張ってカッコつけてるわりに、苦手なものがゴキブリとは笑えるね。
俺が近付くと、商人3人も、リーダー、ガエル・カンポの傍らに寄って来た。
「おいおい! 勘弁してくれよぉ~」
「トラブルは御免だぁ」
「私達の商売に差し障るから、やめてくれぇ」
一触即発の状態を見て、ジェトレ村の商人達が叫んでいた。
いやいや! あんたらもふざけるな! と俺は言いたい。
そもそも! ルールを守らない性悪の冒険者など雇うからこうなる。
こっちは、既に『被害』を受けたのだ。
ガストンさんの、怒りの声も投げ掛けられる。
愛娘に不埒な事をされた、父親の思いがこもっていた。
「ケン、構わないぞ。こんな、げすな奴等は思う存分、ぶちのめしてやれ!」
一方、冒険者達=クラン大狼は完全に俺を舐め切っている。
「おほほう、これはまた、ちっこい戦士の登場だ」
「こまっしゃくれたクソガキは、引っ込んでろ」
「早く、ママのおっぱいでも、しゃぶりに帰れよぉ」
クラン大狼のメンバーである、3人の男はせせら笑う。
そして、リーダーのガエルは、もっと嫌らしく、舌なめずりしながら笑ったのだ。
「おい、クソガキ! 俺は、ああいう気の強い美少女がすっごく好きでな」
はぁ? それがどうした?
俺は無言で、ガエルをにらみつける。
「…………」
俺の無言が、言い返せない証だと思ったのか、
ガエルはますます調子に乗る。
「あの女はな、クソガキのお前になど勿体無い。大人の俺の方が似合いだし、ぜひ俺の嫁にしてやろう」
……そうか、この糞親爺のやらかした犯罪がどんなものか、何となく分かったぞ。
これは、許せんな!
俺は腰から剣を提げていて、奴等は丸腰であったが、
15歳の子供など、簡単にぶちのめせると思ったようである。
「おい、やれ!」
低い声で、ガエルが呟くと……
クラン大狼の男達は、
拳を振り上げながら、一斉に襲い掛かって来たのである。
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WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
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お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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