第41話「らっしぇ!」
昨夜、東の森でオーガ相手に無双して『夜更かし』した俺。
自宅で「ぐうぐう」眠っていた所を、
いきなり早朝、午前4時前に、ミシェルさんに起こされた。
「研修をする!」と有無を言わさず連れて来られ、ミシェルさんの家であり、
ボヌール村唯一の店でもある大空屋へ来ている。
念の為、言うと、ミシェルさんは村一番とも言えるボン・キュッ・ボン、
即ちダイナマイトバディかつ金髪碧眼の超が付く美少女だ。
幾ら眠くても、超美少女の爆乳うりうり攻撃に、男子は絶対に敵わない。
敵う奴など、居るものか! ……多分。
赴いた大空屋で待っていたミシェルのお母さんのイザベルさんも、
大人の金髪碧眼美女!って感じのすっごい美人。
ミシェルさんとイザベルさんを俺の前世で例えれば、
『アメリカンビューティ』という感じのナイスバディの超美少女に超美女。
大空屋隣接の宿屋の食堂で、俺の前に座っているグラマラス超美女ふたりは、
『研修』で一体、何をさせようというのか?
ミシェルさんからは農作業、狩りに続いての『研修』だと囁かれているが……
のっけから、何と! 母娘で俺の嫁になるとか、
超が付く過激な発言も飛び出すなど、めちゃオープンな母娘である。
そして、ミシェルさんからは、何と何と! 俺にひとめぼれしたので、
私を知った上で、ぜひ! 嫁にして! とまで言われ、迫られ、
リゼットとレベッカには了承済みとも言われてしまった。
圧しが強い上に、段取りまで完璧。
さすが、としか言いようが無い。
ミシェルさんは更に言う。
「ケン! リゼットとレベッカは名前をそのまま呼んでいるんでしょ? 私もミシェルさんではなく、そのままストレートにミシェル、と呼んで♡」
「りょ、了解!」
「そして私もレベッカ同様、ケンよりも3歳年上の18歳だけど、接し方、話し方も全く同じでフレンドリーにしてね!」
「更に了解!」
……ここでイザベルさんが、会話ストップの合図。
「まあ、今、その件は、とりあえず、ここまで。ケンの研修に関して、朝御飯を食べながら話そうか」
イザベルさんがそう言って、テーブルに並べたのは、
ボヌール村のどこの家でも変わらない、焼き立てライ麦パン、
加えて、小さな肉片とたくさんの野菜をどろどろ煮込んだスープのセット。
変わらないと言っても、その家によって素材や味付けは変わるらしいが。
そして、この家は蜂蜜が好物らしく、
大きな瓶がどん!とテーブル上に置いてあって、
ふたりともパンにたっぷりと塗っている。
ああ、確か、蜂蜜って美容と健康に良いんだよな……
だから母娘とも、こんなすっごいナイスバディになっちゃった?
なんて、そんなくだらない事を俺は考えながら、
「頂きます」と言って食べ始める。
ちなみに、こっちの人は「頂きます」とか、
そんな挨拶の習慣はないので、いきなり食べ始める。
味はといえば……おお、やはり美味い!
リゼットの家でご馳走になった食事もそうだけれど、
食事自体はシンプルで質素ながら、
素材の良さで、パンもスープも結構美味しいんだ。
食べ初めてから、イザベルさんが愛娘に合図をすると、
ミシェルさん……否、ミシェルが笑顔で話を切り出した。
「ケンにはさ、今日、お店の手伝いをして欲しいんだ」
「ええ、そう言っていましたね。いえ、言ってたよね?」
フレンドリーに話してと言われた事を思い出し、
慌てて言い換えた俺は、ちょっち考える。
手伝いって、一体何だ?
予想は何となくつくけど、具体的に何をやるのか教えて下さいませ。
ちなみに幻影のクッカは、先ほど俺がデートの約束をしたので、
このような展開になってもご機嫌麗しい。
にこにこしながら、話を聞いている。
無論、空中へ浮かんでだ。
もしも実際に女神様のクッカが見えたら偉い騒ぎになるだろうが、
幸い俺にしか見えない。
だから、ミシェル、イザベルさんの母娘も、普通に話を続けてくれている。
美味そうにパンを頬張る俺の顔を見て、
笑顔のミシェルが、更に詳しい説明をしてくれる。
「店は、さっきも言ったように、食料品、日用品を始めとして、何でも取り扱ってる。仕事はね、まず販売、そして買い取りを含む仕入れが基本なの。ただ品物の相場や買取金額の変動見込みもあるから、いきなりケンに買い取りや仕入れは無理だと思う。だからまず、販売と接客をやってくれるかな?」
「販売と接客か、全然OK!」
「おっ! 全然OK!って、頼もしいし、偉く張り切っているね。ケンって、こういう仕事の経験があるの?」
ああ、実はそう。
言っていなかったけれど……
実は俺、コンビニでバイトしていたんだよね。
だから、最初は似たようなものだろうと思って気軽に考えた。
だが張り切る根拠を、具体的に聞かれると、はっきりとは言えなくなって来る。
あまり喋りすぎると、俺が違う世界からやって来た、
『異世界転生人』という正体が、ばれてしまうだろうから。
変に突っ込まれて、何とか上手く隠しおおせても、
「変な人」だというレッテルを、べったり貼られる事は確実だ。
そうなると、マイナスなイメージを払拭するのもひと苦労。
「あ、ああ……ま、まあ何となくかな」
「あれれ? 今度は急にトーンダウンしちゃって、やっぱケンって、母さんの言う通り変な子」
「いやあ、変な子かぁ、参ったな」
「うふふふふ」
「ははははは」
「おっとぉ! 君達、仲が良いねぇ、良き、良き」
笑い合う俺とミシェルを見て、イザベルさんも満足げである。
何せ、ミシェルを俺の嫁にする気、満々だからだ。
さあて、そうこうするうちに、朝飯もそろそろ終了。
傍らに置いてあるのは、魔導時計と呼ばれる、魔法仕掛けの時計。
イザベルさんは、「ちらっ」と見て、現在の時間を確かめる。
そして頷くと、仕事開始を促す。
「えっと今は午前5時過ぎか。これから用意して、午前6時から、まずはミシェルと一緒に、お弁当を売ってくれる?」
「お弁当?」
俺が?マークを出すと、ミシェルが教えてくれる。
「うん、お弁当よ。基本は、農作業に行く人のお昼ご飯用なんだけど、朝食を自分で作らない人達へも売るの。結構、売れるんだよ」
そして、イザベルさんが、すかさず指示。
「さあ、ケン。まずはこの大テーブルを、お店の前に出すわよ、お願いね」
「了解!」
俺は早速、大きなテーブルを抱えると外へ持って行く。
ちなみにこのテーブル、頑丈な木製で結構重い。
でも今の俺はチート魔人で楽勝。
楽々と、テーブルを持って行く俺を、母娘は頼もしそうに嬉しそうに眺めていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺が外へ運び、目の前に置かれた大テーブルには、セッティングが完了していた。
今朝、午前3時にミシェルとイザベルさんが作り置きした大量のパン、
そして蜂蜜の大瓶がひとつ並べられている。
そして、紅茶の入った革製のミニ水筒も、たくさん並んでいる。
ミニ水筒は、使用後、洗ってから大空屋へ要返却らしい。
それも販売する際、伝えて欲しいとの事。
また、この弁当を購入する人は持ち帰り用の袋を持参で来るとの事だ。
そして今日の俺は、まず弁当売りの少年?を仰せつかった。
「らっしぇ! らっしぇ!」
俺は、大空屋の店先で元気良く声を張り上げる。
以前の職歴を活かしているから、想定通り、慣れたもの。
まあ普通、コンビニの店員が、こんなに声を張り上げて売る事などそうそうない。
マニュアルで接客方法が、がっつり決まっているからだ。
だが、俺の働いていた某コンビニは、何とオーナーが元八百屋さん。
明るく元気に! が店のモットーで、逆に元気のない暗い接客はNGであった。
俺は普段大人しいが、働くときは明るくなれる性格。
なので、そんな接客が性に合っていたのである。
「らっしぇ! らっしぇ! 美味い弁当買っておくれ! 今朝焼きたてのパンと塗り放題の蜂蜜、そして美味いお茶の最強セットだ。美人母娘の愛情がたっぷり入った特製弁当! 気持ちの良い労働には美味い飯が不可欠ってか! さあ、買った、買ったぁ!」
この異世界の通貨単位は、アウルムという。
色々聞くと、1アウルムが1円くらいにあたる。
そして貨幣は小銅貨1枚が1アウルム、そこから10進法で銅貨、大銅貨、銀貨、
大銀貨、金貨、白金貨、王金貨、竜金貨と続いて行き、
最後は神金貨の10億アウルム=10億円だそうだ。
ええっと……10億円金貨って、一体どんなだろ?
この西洋風異世界で生きている内に、1回くらいは見てみたいものだ。
まあ村に流通しているのはせいぜい金貨までで10万アウルム……の10万円。
白金貨=100万円以上は村民は皆、見た事もないらしい。
で、この弁当セットはというと、大銅貨1枚=100アウルム、
すなわち100円也で超安い。
村では、珍しい口上をする俺の声を聞きつけて、村民が続々と集まって来る。
そして、その中には……
「お! 美味そうだねぇ、ケン様。ひとつ貰うよぉ」
元気な声で一番に弁当を買ってくれたのは、愛犬ヴェガを連れたレベッカだ。
「どこへ行くの?」と、聞くと、
これから東の森前の草原へ、兎を狩りに行くらしい。
昨日の、リベンジって所か。
でも良かった! 俺の見た感じ、オーガに襲われた後遺症は無いみたいだ。
なので俺は、にっこり笑って注意する。
「レベッカ、危ないからさ、森の中には絶対に入るなよぉ」
「りょうか~い、ダーリン! むちゅ!」
え!? ダーリン!?
俺が!? ダーリン!? に、似合わねえ! その呼ばれ方!
おいおいおい! レベッカの奴、嬉しそうに投げキッスしやがった。
お陰で、周囲に居た村民全員の、大注目を浴びてしまう。
冷やかしの口笛も、ぴーぴーと吹き荒れる。
おいおい! あのツンツンレベッカが!?
いったい、どうして?
不思議そうな村民達の視線が、そう言っている。
いやいや! だからぁ、レベッカは、俺にだけは、超が付くデレなんだってば!
「うふふ、負けないぞぉ」
ライバル意識が出たのか、ミシェルがいきなりそう言うと、
背後から俺の背中にぴったり密着。
くいくい胸を押し付ける。
お、おお! こ、これは!?
「そ~れ、ぱふぱふぱふぅ」
「あ、あううう……」
ああ、これはあの、某超有名ゲームの必殺攻撃だ!
そんな悶える俺の前に、またまた美少女がふたり……
「ケ、ケン様、ひとつ下さいっ!」
「…………お弁当、……ひとつ買いますっ!」
大きな声で、噛みながらも、小さな手をしっかり差し出したリゼット、
そして小さな声で、ぽつりとした物言いながら、
はっきりと言い切り、意思表示するクラリスが立っていた。
「ままま、毎度ありぃ!」
俺はミシェルが「ぱふぱふ」する、背後からの心地良い攻撃に耐えながら、
大きく声を張り上げていたのである。
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東導号の各作品を宜しくお願い致します。
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お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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