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第38話「ボン・キュッ・ボン」

……俺は今、真夜中の森で凶暴なオーガの群れと戦っている。

 

最初に襲って来たオーガをカウンターパンチで一発殴り、

あっさり退けたところへ、

すかさず、ひと回り大きな2体目が咆哮して襲いかかって来た。


『水平蹴りぃ!』


両手を振り挙げて掴もうと襲って来たオーガは……


がら空きになった腹のど真ん中に俺の渾身の蹴りを受け、派手に吹っ飛んで行く。


凄い音を立てて、立ち木に激突し、倒れたオーガはぴくりとも動かない。


どうやら……昇天、即座にお亡くなりになったようだ。


大事な仲間をあっさり倒されたオーガ達は、

怒りの感情に任せ、次々と襲いかかって来る。


しかし、全知全能たる創世神様が入れ込む、

『宇宙最強』と言い切れる『天界拳』の加護を受けた俺の敵ではない。


(かかと)落としぃ』

掌底(しょうてい)ぇ』

『上手投げぇ』

『首折りぃ』

『アッパーカットォ』


俺が多彩な技を次々と繰り出す(たび)、オーガどもは、

どんどん倒れて行く。


しかし、遭遇したオーガはまだまだ残っている。


『くうう! 1体ずつじゃあ、面倒くせぇっ!! まとめてやっつけてやるう!!』


俺は向かって来たオーガの両足首をむんずと掴み、

ぶんぶん振り回しながら回転させて、なおも襲って来るオーガ達をなぎ倒す。


『くぉらあ!!! (ウルトラ)ジャイアントスイングだぁ!!!』


ばったばったと、なぎ倒され、血の海に沈んでいくオーガども。


『はぁっはははは、舐めるなよぉ、糞オーガめぇ! 俺達は絶対に餌じゃね~ぜっ!』


空手、相撲、ボクシング、そしてプロレス等々。

俺が見た事のある、ありとあらゆる世界の格闘技のミックス。


これは、果たして拳法か?

 

いや! 神様が拳法と言えば、これは拳法。


何でもありの、ご都合主義な拳法――

それがこの中世西洋風異世界の最強かつ無敵の天界拳なのだ。


そして、正義は勝つ!


とうとう最後のオーガも、俺の(ウルトラ)ジャイアントスイングの前に、

倒れ伏したのである。


『ははははは! 何せ、この拳法の総帥は、天下無敵の創世神様だぁ、見たかぁっ! どうだあ! 思い知ったかぁっ!』


クッカは「とろん」とした目をして、俺の晴れ姿を見詰め、うっとりしていた。


『凄いわ、凄いわっ、強いケン様、大好きぃ! 超強い貴方に惚れ直しちゃうっ』


クッカに続き、妖馬ベイヤールは嬉しそうに(いなな)き、魔獣ケルベロスはうぉんと吠える。


『ぶひひひん!!』

『ウオオオン!! さすが、我が主だ!! 素晴らしい!!』


そして今迄の傲岸不遜な態度が嘘のように消えて、

へこへこ土下座しているのが妖精猫(ケット・シー)のジャンである。


『ははあっ、ケン様!! 今までの生意気な態度、全て改めさせて頂きまぁす!! 一生貴方様に付き従いますう!!』


勝ち誇る俺に、下々から賛辞の嵐が押し寄せたのだ。


『よっし! おまえらぁ、俺は強い! レベル99の俺は無敵なのだぁ! 分かったかぁ! 改めろよぉ、態度を! 今後は俺を(あるじ)としてしっかり称え、敬うんだぁ』


俺が胸を張って「えっへん」と威張った瞬間……


……自宅で眠っている俺の耳へ、扉を叩く音が飛び込んで来る。


どんどんどん! どんどんどん!


「朝よぉ、ケ~ン」


ふぁ!?

何か、遠くで音が聞こえる?

微かに……俺の名を呼ぶ声も聞こえる気がする。

 

若い女子の声? だが眠い、俺は目が開かない。


……何だ?

じゃあさっきの俺を好きだと言ったクッカや、俺を尊敬していた従士達は?


あ~、思い出した! あれ違う。あんな事は全然無かった……


オーガどもを倒すまでの展開は同じだったけれど……

倒し終わってからは、俺の願望だけが出た、はかない夢だったんだ。

 

がっくり……いいや、まだ眠いっす。もう少し寝よ……


しかし、扉を叩く音は、どんどん激しさを増して来る。


俺が起きないせいか、音にいらいらが乗り移っているような……気がする。


どんどんどん! どんどんど~~ん!!!


ばっきん!! どたん!!


「何だ? ……むにゃ……何か壊れたような、凄い音がした……ぞ」


どんっ!


「わおっ!」


思わず肉声が出た。

ベッドで寝ている俺の上に、いきなり誰かが乗っかったのだ。


え!? ……くんくんくん。

何か、良い香りがする?


と思っていたら、可愛い声が降って来る。


「おうい、ケ~ン。起きろ~朝だぞ~」


あれ、誰だ? 知らない声……じゃない。


記憶にあるぞ!


確か……村の広場で紹介して貰った時に……


俺は寝惚けながら、記憶を呼び覚まそうとした。


「おっさえこみ~」


わああっ! 女の子が、いきなり倒れ込んで来たっ!


むにゅにゅって、何?

このボリューム感!

 

おお、すっげぇ、この子ったら、むちむちしているっ!


そして! 俺の胸へ押し付けられている、

このドカンと突き出た、柔らかい突起物は何じゃあ!?


「うふふふ、うりうりうり」


「あ、あふふふふ」


「うふふ、気持ち良いかい、うりうりうり」


「わふう気持ち良い……まだ俺は夢の中……ですかぁ?」


と、その時。

クッカの、悲鳴にも近い大声が響き渡った。


『現実ですよ、ケン様っ!!!!!! 不潔っ』


「わわっ」


俺は、慌てて飛び起きた。


そして頬を思いっきり膨らませ、唇を尖らせる幻影のクッカが居て、

その傍らに居たのは……


「うふふ、私はミシェル。宜しくね~」


ミシェルと名乗ったのは、鼻筋が通った端麗な顔立ちの、

金髪碧眼のこれまた超美少女。


彼女はボヌール村の村民に、俺が紹介された時、

レベッカの次に話し掛けて来た、

ボン・キュッ・ボンの超美しい金髪碧眼女子であった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


起きて外へ出ると、まだ太陽は昇っておらず、辺りは薄暗かった。


ゆさゆさゆさ……


でも手をつながれた俺の目は、ある一点に釘付けだ。


視線の先は、ミシェルさんの巨大な胸である。

もう眠気など、とっくに吹っ飛んでいて、どこにも無い。


今の俺の状況はというと……

起こしに来たミシェルさんに手をつながれ、引かれ、

どこかに連れて行かれる途中なのだ。


『う~っ、私だって! 実体化出来ればぁ、うりうりぱふぱふ!出来るのにぃ! 実体化出来ればぁ! く、く、悔しいっ!!』


無念そうに唸る、幻影のクッカ。

顔をしかめながら、飛んで着いて来る。


当然、クッカの視線の先も、ミシェルさんの揺れる胸だ。


しかし、それは良いとして………一体、これからどうなるのだろう?


これは、聞いてみるしかない。


「あのう、ミシェルさん、今、何時ですか?」


「多分、午前4時少し前!」


「はあ!? ご、午前4時少し前って……こんなに朝早く、これからどうするのですか?」


「うっふふふ、研修!」


え? 研修?


農業研修と狩り研修、&実は戦闘も……以外に、何があるのだろう?

全然、聞いてないぞ、俺。


「もう! 良いから来て! 旦那様」


はあ!? だ、旦那様ぁ?

俺がか!? 何、それ!?


「あのう、旦那様って、ちょっと、まずいですよ」


「大丈夫! レベッカとリゼットに、話はバッチリ通してあるから」


え、えええ!? レベッカとリゼットに、話はバッチリ通してある?


と言う事は?


「あはは、ケン! 私も貴方のお嫁さんになってあげるよ!」


「えええ!? あ、貴女が!? お、俺の嫁にぃ!?」


「いえ~す! 嬉しいでしょ、この果報者ぉ」


ばしっ! 笑いながら、背中を思い切り叩くミシェルさん。


「わう!」


「うふふ、早く行こう」


背中を叩かれても、物理攻撃無効習得済みなので、痛くはなかったが……

ミシェルさんの力は、結構強いらしい。


俺の家の扉が、無残に破壊されていたから……

彼女は何か、武術の心得があるのかもしれない。

 

後でリゼットから、この俺が怒られる事は『確定』だろう。


一方、ミシェルさんは、にっこり笑い、

しっかり握った俺の手をぐいっ!と引っ張ったのである。

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