第31話「サヨナラは嫌! パート2」
俺を洗ってくれた後、当然、俺も同じく手でレベッカを丁寧に洗ってあげた。
たっぷりと愛を込めて……
レベッカは、とっても恥ずかしがったが……最後は俺に任せてくれる。
正直、女子に素っ裸を見られるのは、俺も恥ずかしかったが……腹をくくった。
更に覚悟を決めた俺達は遂に遂に!
『前』も洗いっこする。
これ、うおおおお!!! と叫びたくなるシーン。
素っ裸同士でのプロポーズ、
そしてプロポーズした美少女と前を洗いっこ、なんて、超衝撃体験だよ!!
俺は、この中世西洋風異世界へ、流れ着き……
いろいろ体験して来たけれど、凄い!という体験のひとつだ。
でも、こうなると……
お互いに、自分を全て、さらけ出した気がして、
俺とレベッカは、心と心の距離がぐっ!と近くなった。
さすがに、野外エッチこそしていないが、もう夫婦同然だ。
そういえばと、以前読んだ本を思い出す。
日本の戦国時代の某武将は、結婚した奥さんと一緒にお風呂に入り、
その日あった事を報告し合い、更に仲良くなって行ったと。
それも裸の付き合いの、ひとつなのだろうか?
今回の俺とレベッカのケースも近いものかもしれない。
さてさて!
『洗いっこ』終了後……
俺とレベッカは、着ていた革鎧と肌着も丹念に洗うと、すぐ乾かす事にした。
時間も無いので、当然、俺の風属性の魔法でね。
本当は、ゆっくりお日様に乾かしておきたかったけど。
風は風でも、俺が行使する風属性魔法の風は、シルフの吐息たる聖なる風。
普通に乾かすだけではなく、
染みついた、ひどい臭いさえも、きれいに消してくれた。
レベッカは、次から次へと異なる魔法を行使する俺を見て、呆れつつも、
絶賛し、大いに感動していた。
そして、そこで、ひとつサプライズが!
何と! レベッカのはいていたパンツが、小さな黒のスケスケパンツ。
で、すっごく「えっちい」ものだったのだ。
当然ながら、俺はとても興奮し、鼻息が荒くなる。
「おおお、おい! レ、レベッカ!? そ、それって!?」
「きょ、今日はさ……気合が入っていたから……勝負肌着なの、これ……万が一、な、何か、あった時のね」
「勝負……肌着!? ま、万が一、な、何か、あった時のぉ!?」
「う、うん、ええっと、あった時の肌着よ……あ、ああ……は、恥ずかしい!」
「えへへ、じゃあいずれさ……俺と一緒に寝る時、はいてくれる?」
「……うん」
スケベ心全開な俺に対して、恥らうレベッカはやはり乙女チックで可愛い。
こうなったら、バッチリだ。
俺に対しては、もはや完全に『デレ』なのだから。
鎧と服も魔法のお陰で即座に乾いたので、俺達はさっさと身支度をした。
既に太陽が西に向かい、早く帰らないと日が暮れてしまう。
犬のヴェガ達も良く洗っておいたから、綺麗な毛並み復活だ。
こちらも勿論、元気一杯である。
「さあ帰ろう」
「うん!」
俺が手を差し出すと、レベッカは素直に繋いでくれた。
少し歩くと……レベッカが、オーガに襲われた場所に着く。
俺達が、構わずに行こうとすると……
いきなり幻影のクッカが、俺達の目の前に現れて『とおせんぼ』をする。
当然の事ながら、クッカの姿は俺だけにしか見えない。
『ケン様……お楽しみの最中、申し訳ありませんが、こいつらを、ちゃんと始末した方が良いですよ』
『ええっと、始末ってもしかしてオーガどもの死骸? あ、ああ! そうか!』
『はい! リゼットちゃんを助けたゴブの時は、ケン様の聖なる炎で燃やしたから「あとくされ」はありませんでした』
『だな!』
『ですが、今回は素手や剣で殺しています。このまま放置すると99%、不死者になりますから、この前の人狼みたいにちゃんと始末しましょう』
そうだ! このままだと、こいつら不死者になるな。
念の為、補足すると、不死者とは、
かつて生命体であったものが、死後も活動する超自然的な存在。
巷で有名なアンデッドだと、ゾンビや吸血鬼などなど。
……俺は記憶をたぐった。
そうだ、変態人狼ライカンをやっつけた時に、クッカの指示で葬送魔法をかけた。
この世界では、魔物の死骸を一定時間放置すると、
ほぼ不死者になるらしい。
そもそも魔物は、「死者の国たる冥界の瘴気をまといやすい」
のだとクッカは言うのだ。
『それと……今夜、私も話があります。……大事な話です』
大事な話? 何だろう?
そう言えば、後で聞くと約束していた。
ちゃんと聞いてあげないとな!
そして愚図愚図していると日が暮れる。
とりあえずは、葬送魔法発動だ。
一方、レベッカは俺が立ち止まったので、不安そうにじっと見つめている。
無理もない。自分が、魔物に襲われて命を落としかけた現場なのだ。
一刻も早く、この場を立ち去りたいに違いない。
加えて、俺が瞬殺したオーガの死体が散乱している。
血と腐臭の、吐きそうな臭いも立ち昇っていた。
遂には、「ぽつり」と呟いた。
「ねぇ……ケン。こんな所、早く行こう。オーガの死骸目当てに狼や熊どころか、ゴブまで来るよ」
レベッカの心配は、尤もだ。
俺は、ちょっと気になっている事を聞く。
あのゴブの死骸が売って金になるのなら、オーガはどうなんだろう。
「レベッカ、ひとつ聞いて良いか? こいつらオーガの死骸って金になるの?」
「うん……たま~に村へ来る商隊の商人さんは、あったらぜひ買うと言ってくれるし、エモシオンとか遠くの町まで持って行けば、結構なお金になるって聞いているよ。私は当然、オーガと戦った事は無いし、死骸なんて簡単には手に入らないからね」
「そうか」
「うん、だけど今は、全然そんな気にならない」
ああ、そうだな。
当然だろう、喰われかけたんだから。
「そうか……いや、こいつらをこのままにしたら、不死者になるかもしれないと思ってさ」
万国共通である、不吉な呼び名を俺が言うと、
レベッカは「ぶるり」と身体を震わせる。
「ア、アンデッド!? いい、嫌だっ! ここ、怖いっ! 気持ち悪いっっ!!」
「だろう? だから、こいつらをさっさと塵にしちまおう」
「え、えええ!? ち、塵!? 塵にって? 何?」
「ああ、俺が葬送魔法を使う、傍に居ろよ」
「え、えええ!? 葬送魔法!? ケン、あ、貴方って!!」
レベッカは、葬送魔法発動開始スタンバイな俺の姿を見て驚く。
全身が、まぶしく発光していたからである。
魔力が高まるにつれて、俺の発する光はますます強くなった。
その姿が、神々しく見えたに違いない。
レベッカはひどく驚いて、俺から「ぱっ」と離れて、跪く。
そして何と何と! 俺に向かい、目をつぶり、熱心に祈りを捧げ始めたのだ。
おいおい、まるで俺は……神様扱いだな。
傍らに居た、ヴェガ達までもが吠えもせず、怯えたように無言で座り込んでいる。
まあ良いや。時間も無いし、さっさと、やってしまおう。
『鎮魂歌!』
無詠唱だが、俺の心の中では、『決めの言霊』を詠唱。
俺の手から、まばゆい白光が放たれると、
斃れたオーガどもの死骸が、その同じ光に包まれる。
おおっ! 何度見ても凄いっ!
俺は、感嘆する。
奴等、本当に、速攻で塵になって行きやがるぜっ!
数分後……俺が倒したオーガどもの死骸は、全て塵となっていた。
改めて見やれば、葬送魔法の威力は凄まじく、死骸どころか、
そこらに大量に流れていた血まで消し去っていたのである。
もうこの場に、先ほど行われた激闘の痕跡は一切無い……
「よし! こんなもんかな?」
満足げに頷いた俺へ立ち上がったレベッカが驚嘆。
「す、す、凄いよおっ!! ケンったら、悪魔退治の司祭様みたい!!」
「悪魔退治の司祭様ねぇ……まあ良いや。それより、もう行こう」
「う、うん!」
俺達はしっかり手をつなぐと、また歩き出したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから、歩きに歩いて、東の森を出た俺達は、
やっと兎狩りをしていた草原に着いた。
ここから村までは、少し歩けばすぐである。
油断は禁物だが、いわゆる安全圏内だ。
ここまで歩きながら、俺達は色々な話をした。
中でも、レベッカが反応したのは俺の能力だ。
「ケンったら、とんでもなく強いよね! ……いろいろな魔法だけじゃなく、格闘も剣も、もの凄いよね! 弓もすぐ上手くなったし!」
「ああ、まあ、そこそこだな」
「いやいや! ケンは全然、そこそこなんかじゃないよ! いや! もうケン様って呼ぶよ!」
「おいおい、レベッカ」
「だって! ケン様! まるで貴方は、古より語り継がれる、伝説の勇者様みたいだから!」
「おいおい、勇者様だって? 頼むから、それだけはやめてくれ……そして絶対に内緒だぞ。リゼットとも約束したんだから」
「え? リゼットとも約束? リゼットも知っているの、ケン様の力を?」
「ああ、知っているよ。でもさ、俺の力が広く誰にでも知られてしまえば、いずれ領主様から、お使いが来る」
「そうなるよね」
「ああ、そうなれば俺は結局、このプリムヴェール王国の王様から呼ばれ、王都へ行くだろう。そうしたらお前達とも永久にお別れとなるぞ」
「え!? えええ!? ケン様と永久にお、お別れ!? いいい、嫌っ!」
レベッカは、子供みたいに嫌々をした。
このリアクションは、先日のリゼットと全く同じ。
「サヨナラは嫌! パート2」ってところだ。
但し、ツンデレ美少女レベッカの場合は、ツンとデレの落差がたまらない。
ここで俺は、一応、念を押す事にする。
「だったら絶対に絶対に内緒だぞ! 俺の力はさ、お前達とボヌール村を守る為に、こっそり使うよ」
「え? 私達とボヌール村の為に……」
「ああ、もし俺が勇者ならな……」
そう言って、俺は実感した。
この中世西洋風異世界へ転生した俺は、
愛する想い人達と仲間達が居る、ボヌール村の為の勇者なのだと。
なので、自分の決意を確かめる為にも、口に出して言おう。
「かっこつけるみたいで嫌だが、改めて言おう。俺はお前達と、第二の故郷と決めたボヌール村を守る為、遣わされた勇者、いわば『ふるさと勇者』かもしれないな」
俺の言葉を聞いたレベッカが、美しい灰色の瞳を潤ませる。
彼女は何か穏やかで、「ホッ」としたような表情だ。
「そっかあ、ふるさと勇者かあ……何か、ほのぼのして好き。強くてカッコいい、そして優しいケン様だから、私は大好き♡」
沈む夕陽が、俺達を照らしている。
もう村は、すぐ目の前だ。
俺達はつないだ手を「きゅっ」と強く握ると、
寄り添うように、ひとつの影となって歩いて行ったのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
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皆様のおかげです。ありがとうございます。
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WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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