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第30話「ど真っすぐ」

きゅっ! きゅっ! きゅっ!


倒したオーガの血を(かぶ)り、真っ赤に染まった俺の背中が、

柔らかく温かい手によって、丁寧に洗われている。


もう一度、言おう。


クッカが教えてくれた川の中へ入って、

俺はレベッカに、何と!驚いた事に 

彼女の柔らかい手で、優しく優しく、身体を洗って貰っているのだ。


凄い事に……ふたりとも「すっぽんぽん」の全裸。


無防備この上ない状態である。


(はた)から見たら、

「今迄こいつらは何をしていたんだ?」と不審の目で見られるだろう。


「レベッカ、お前の手って温かいな、洗って貰うと凄く気持ち良いよ」


「…………」


話しかけたが、レベッカからの返事はなかった。


その代わり、俺の背中を丁寧に(さす)る手へ、より力が入った。


背中を洗っているレベッカの、最高な笑顔が見えるようだ。

だが、俺はこれから大事な話をしなくてはならない。


「レベッカ、そのまま聞いてくれないか? 俺、お前に話したい事があるんだ」


「話したい事…………リゼットの事ですよね」


レベッカは、凄く勘が鋭い子なのだろう。

俺が真面目な口調で話を切り出すと、すぐにジャストな答えを返して来た。


「ああ、そうさ」


俺は、レベッカに背を向けたまま話をする事にした。


今日、一連の流れを見て分かった。

この子の欠点は、思い込みの激しい事だ。


それも、超が付くくらい激しい。

今回の『暴走』で良~く分かった。


「ケンは凄く強くてカッコいい。思いやりがあって、とっても優しい。凄い魔法も使えるし……私なんか全然、釣り合わない。……やはりこんな私じゃ駄目(・・)……なんですね……」


と言っているから、やっぱ、思い込み激しい。

こら! こんな私じゃね~し、駄目じゃねえって!


重度のネガティブ思考に陥ったレベッカ。


俺は、即座に否定してやる。


「違う!」


「違うって? でも駄目なんでしょ! どうせケンは、こんな私なんかとは違う、素直で優しく可愛いリゼットをお嫁さんにするんでしょ」


ほらほら、すぐ思い込むなって!

お前は、『ど』が付くほど真っすぐ過ぎるんだよ。


「レベッカ、いいから最後まで俺の話を聞け。それで今回は危なかったんだから」


どこかの歌のタイトルのように俺が言えば、レベッカは素直に謝って来る。


「ご、ごめんなさい……」


おおっとぉ! やけに素直だぞ。


よし、ここでレベッカの、自信喪失気味な気持ちをしっかりケアだ。

 

「まず言っておく。レベッカ、お前は『こんな私』じゃない。可愛くて優しくて強くて最高クラスの女子だよ。俺が保証する。自信を持って構わない」


「は、はい……」


「じゃあ本題に入る………」


ようし、ここからが勝負だ。


時間を、ある程度かけて話さないと。

俺自身いやらしい駆け引きとか、回りくどいのは嫌いだが、単調な攻めは禁物だ。


何せ相手打者(レベッカ)は……

真っすぐだけを狙って、待っているような女子なのだから。


「えっと、あのさ、男にとって、すっごく都合の良い話かもしれないけど……このプリムヴェール王国では『一夫多妻制』ってあり(・・)なんだってな」


「え? 一夫多妻制?」


ようし! 話を聞いてくれているぞ。


まずは、カーブでカウントを取り、ワンストライクってところだ。


「ああ、俺はリゼットに頼まれたんだ」


「リゼットに?」


ようし、内角を狙ったシュートでファールを打たせた。


ツーストライク!


これで追い込んだ!


「レベッカ。お前が思っている通り、俺はリゼットと結婚する約束をした。だけど、リゼットは、もしも村の女の子が俺に好意を持ったら、受け入れて欲しいと言ったんだ」


「え!? そ、それって……」


「その際、この国の一夫多妻制許容に(のっと)っり、他の子とも結婚して構わない、という話になった」


「…………」


ここで、大きく外角高めに外した。

事実を話して、レベッカの強いマイナス向けの『思い込み』を和らげる為だ。

 

そして、いよいよ決め球!


「ずばっ」と、内角一杯にレベッカの性格ばりの、ど真っすぐ!


そう、直球だ!

一気に、言い放ち、決めてやる!


男と女、素っ裸同士でのプロポーズ、なんて、

俺は小説、ドラマ、映画、ラノベ、マンガ、ゲーム等々、

読んで、見て、どこでも見た事が無い。


誰か、知っていたら教えてください。


「という事で! レベッカ! 結婚してくれ! リゼットとふたりで俺の嫁になってくれ!」


「…………」


ああ、レベッカは黙っている。

際どくコースを狙った投球が、ちょい外れてしまったか?


「…………」


対して、レベッカは、ずっと無言。


何かを考え込んでいるようだ。


ボールじゃなくて、もしかしたらストライク?

きわど過ぎるコースで、審判の判定待ちなのか?


「私……嫌です!」


ああ! きっぱりと嫌って!? 結局、ボールだよ!

 

駄目だったか……


「そうだろうなぁ、レベッカの気持ちは分かるよ……他に嫁が居る男との結婚なんてすっごく嫌だよなぁ」


俺が、諦めかけたその瞬間。


何と! ワンテンポ遅れ、審判が高々とジャッジで、ストライク!!

おお!『ボール』だと思った判定が変わったああ!!


「ええっ!? ちちち、違いますっ! 嫌!っていうのは、私は他の男との結婚が絶対に嫌だ! っていう意味なの!」


「レベッカ!」


俺は、思わず声が出た。


そして!


レベッカが声を張り上げる。


「私はやっぱりケンが良い! いいえ! 私を救ってくれたケンじゃないと駄目! ケンとしか結婚出来ないわっ!」


おお! そこまできっぱり言い切ったか。


レベッカの気持ちは、良~く分かった。


ならば念の為に確認だ。


「でも良いのか……俺にはリゼットも……」


「良いの! リゼットなら! 妹みたいなものだから! それにこの村の他の子が一緒なら、心強い! むしろ大歓迎よ!」


「そう……なんだ」


「うんっ!」


「じゃあ! レベッカ、お前……俺の嫁に……なってくれるの?」


「はいっ!」


やったぁ! 確定出ましたぁ!

 

いや野球だから、どんでん返しのストライク決まった!!!


俺が決めたったあ!!


喜んだ俺は思わず振り返った。


「きゃあっ!」


振り返った、そこには!


頬を真っ赤にした、全裸のレベッカがびっくりして立ち尽くしていた。


相変わらず、すらりとしたスレンダーボディに、可愛いおっぱい!


黙っていたら、ミステリアス&ワイルドな姉御肌のビューティーガール。


しかし素のレベッカは、超美少女なのは勿論だが、

ツンデレで、真っすぐ過ぎて、少しおっちょこちょい、

俺には甘えん坊の超デレ決定!


ああ、素敵だ! この子が『俺の嫁』になるんだ!


やっぱり、レベッカって、凄く綺麗だぁ。

 

俺はレベッカが愛おしくなって、思わず「きゅっ」と抱き締めてしまう。


「わわわ! はは、恥ずかしい! ケン!」


恥らうレベッカに対し、

俺は『あっついキス』を一発、彼女の唇へ、お見舞いしてやったのである。

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