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第28話「豪拳炸裂」

飛翔(フライト)!』


急ぎ飛翔魔法を行使した俺は、とんでもなく凄まじい速度で飛ぶと、

レベッカさんとオーガの間に割って入った!


怯えたレベッカさんの前に立った俺は、大きく両手を広げる。

彼女を、しっかり守るように。


即座に、心の中の内なる声が大きく響く。


『 究極格闘スキル発動! 天界拳! 拳撃! 豪拳貫通!!!』


究極格闘スキル!?


はあ!? て、天界拳!!?? な、何!? 天界拳って!?


おいおいおい! これって何か、凄い技なのか!?


考える暇もなく、反射的に、

俺の腕が「ごおおおおっ!」と風を切り凄まじい速度で動く。


レベッカさんへ手を伸ばし、がら空きになったオーガの下腹に、

容赦なく叩き込まれる。


ど!!! ばっじゃ~んっ!!!


俺の拳が当たった瞬間!


自分でも信じられない、凄まじい音がした。


「ざばああっ」と、滝のような血しぶきが、辺り一面にまきあがり、

無数の肉片が「ばらばらばらっ!」と飛び散る。

 

まるで柔い豆腐を貫くように、俺の腕があっさり吸い込まれると、

オーガの体内に「ずっぽん!」と潜り込んだのだ。


独特な臭気の血の臭いと、生暖かい感触が俺の全身を満たす。


ぐっぎゃああああああああああああああ~~~~!!!!!


深い森に響き渡る、断末魔の叫び。


俺の腕は、オーガの硬い表皮を楽々と突き破り、あっという間に、

奴の背中へ突き出ていた。


そう! オーガの腹をあっさり貫通していたのだ。


拳を振るった俺は、その勢いから身体を預け、

ぴったりとオーガに密着した形となっている。


凄く気色悪いが、仕方が無い……


そして、この現場に来てから、この周囲は、もの凄い臭気だ。

オーガの血の臭いも凄まじい……


一瞬、時間が止まった。


座り込んだままのレベッカさんが、背後から超驚愕の波動を放出し、

俺をじ~っと、凝視しているのが分かる。


しかし、このまま勝利に酔ってはいられない。


オーガはまだ、左右に2体も残っているのだ。


俺は空いた左手でオーガをつかみ、突き放すように腕を抜く。


「ずぼちゃっ」という不快な音がして腕は抜け、

既に命を失い肉塊と化していたオーガは、どずん!と背中から仰向けに倒れた。


俺は次に、クッカから貰った銅剣をしゅらっ!と抜き放つ。

もう、一気に片をつける事にしたのだ。


『究極剣技スキル発動!』


また、俺の内なる心の声が響いた。


レベッカさんから、俺はどのように見えているだろう。


背後からなので分からないだろうが、

オーガを拳で貫き殺した俺は、どす黒い返り血を全身に浴びていて、

まるで『地獄の悪鬼』、否、『血まみれの鬼神』状態である。


しかし、余計な事を考えてはいられない。


それより! オーガを倒す事に集中しなければ!


その為には、レベッカさんに魔法を見られても構わない!!

彼女の命の方が最優先!! 絶対に大事だ!!


俺は、すかさず飛翔魔法で、宙を飛ぶ。


向かったのは、まず右側のオーガである。


オーガが威嚇の為か、咆哮しようとした瞬間だ。


俺は魔法で空中に静止したまま、奴の頭から思いっきり剣を振り下ろす。


『唐竹割りぃ!!!』


オーガは目の前に浮かんだ俺を、ひっ!つかんで潰そうとしたようだが、

そんなの無駄、無駄、無駄あ! 無駄だああ!!!


動きが遅い! 遅すぎるぜえ!!


どっ!!! ばぁぁっっ!!!!!


剣は凄まじい速度で振り下ろされた為に、刃が地面にまで噛み付いてしまう。


素早く剣を引き戻した俺は、斬り捨てた目の前のオーガを凝視する。


俺を掴もうとした姿勢のままで、オーガの左右がズレ始める。


どこかの某世紀末救世主のセリフではないが、既に、奴は死んでいる。


本来なら倒した余韻に浸りたいが、今はそんな暇はない。


今度は、左側のオーガに向かう。


既に仲間を2体倒された奴は、怒りでもう錯乱状態だ。

正常な判断など出来やしない。


こんな馬鹿は、もう俺の敵じゃない。


殴り殺そうとした、相手の大きな拳を軽々と(かわ)すと、

俺は腹へ、銅の剣を思いっ切り叩き込んでやった。


ずっっ!! ばああっっ!!!


「か! ……はああっ!」


腹を叩き斬られたオーガが、切なげに息を吐いた瞬間、

奴の上半身と下半身は真っぷたつに分かれ、新たな肉塊と化したのである。


こうして……ようやく、戦いは終わった。


レベッカさんを襲ったオーガどもは、あっさり死んだ。


俺が管理神様から授かったレベル99の力、

格闘、剣技の両スキルを発動させ、あっさりと瞬殺したのである。


「ふう……」


剣を下げたままの俺は大きく息を吐く。


そして、レベッカさんに向き直った。


自分でも分かる。


先ほども言ったが、オーガどもの返り血を浴び、

全身が真っ赤で「どろどろ」になっている事を。


大きく目を見開いたまま、呆然と俺を見るレベッカさんは、

相変わらず座り込んだまま無言だ。


オーガに襲われたショックの余り、腰が抜け、動けなくなっているのに違いない。


ここでやっと、俺に考える余裕が出て来た。


この血塗れ状態の俺はレベッカさんから見て、

やはり怖ろしく見えるだろうなぁ……


もし怖ろしいと思うなら、勝手にそう思え。

俺は、お前を助けるのに夢中だったんだから。


おお! そうだ! 『小さな勇者』を忘れていた。


オーガからレベッカさんを必死に助けようとした『勇者ヴェガ』を。


俺は周囲を見渡した上、念には念を入れ、再度索敵をした。

 

どうやら、敵は居ないようである。


安全を確かめた俺は、大急ぎで、

倒れているレベッカさんの愛犬ヴェガの(もと)へ走った。

 

……ヴェガは、オーガが木に叩きつけたままになっていた。


近付くと、3色トライカラーの毛並みは血だらけで、

やはりというか、最早虫の息である。


少し離れた場所に、ガストンさんの愛犬リゲルが座って、

『僚友』を心配そうに見つめていた。


思わず俺は歯噛みする。


「くそ!! 俺はレベル99でオールスキルだろ!! 回復の魔法だって使える筈だ!! 一体、何をどうすれば良いんだよ!! 回復!って念じれば良いのか!!」


その時である。


『あわわわ……い、今! も、も、戻りましたっ!』


俺が声のした方を見ると、幻影のクッカが蒼ざめて空中に浮かんでいた。


どうやら俺がこのような状態になっているのを(しら)され、

慌てて戻って来たという雰囲気である。


サポート役として不在だったクッカへ、俺の怒りが向けられる。


『クッカあ! お前、今頃っ!』


『ひ!』


怒った俺が、思わず身を乗り出すと、クッカは恐怖を感じたのであろう。


空中で少し後ずさりをした。


一番肝心な時に俺をフォロー出来なかった、後ろめたさもあったに違いない。


しかし、俺は心を静め、思い直した。


ここでクッカを責めても、状況は良くならないから。

 

そう! 俺がやる事は……ひとつだけだ。


『クッカ! 申し訳ないが、お前の話は後で聞こう。それより超特急で、俺に対し、回復魔法行使の手ほどきをして貰えないか』


『は、はい! す、すぐにやりましょう!』


『ごめんな、クッカ。怒鳴って申し訳なかった』


『い、いえ、そんな! 私が悪いんです……』


『話は後にして急ごう、あまり時間が無い。俺が行使可能な回復魔法で、最高のモノが発動出来るかな? もしこの犬を助けられなくても、出来るだけの事はしてやりたい』


『わ、分かりました……』


俺は、横たわったヴェガを見つめる。


そして回復魔法発動の為に魔力を高めるべく、呼吸を整え始めたのである。

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