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第27話「暴走美少女を救え!」

クッカと念話での会話につい集中した俺、

そんな俺にふられたと思い込み、誤解で『暴走』してしまったレベッカさん。


暴走した彼女の後を追う俺。


張り巡らした俺の索敵に、ひどく大きな反応が浮かび上がる。


反応がある場所はレベッカさんを追うべく向かう森の中、

それが何と、何と!3つもあるのだ。


距離は約400m!

まさか、こんなヤバそうな敵が居たというのか!


反応したのはアンノウン……

という事は、やっぱり俺が戦った事のない未知の『敵』だ。


もう一回、さらにもう一回……

何度、聞いてみてもアンノウン。


俺の心の中で、クッカとは異なる、感情の無い内なる声が同じ答えを返して来る。


どちらにしても正体不明な強敵という事で、

反応の強さからしても、ゴブリンなどは比べ物にならない奴等に違いない。

 

しかし、それ以上の情報は、どうやっても入って来なかった。


畜生!

これじゃあ、あまりにも情報不足だ。


そういえば、誰かが言っていた。


情報戦を制する者は、全てを制し、確実に勝利をつかむと。


納得する。

いくら俺がレベル99の魔人でも、未知の敵と相まみえる際は不安となるから。

戦うタイミング、戦い方等々、全てが手探りとなってしまう。

 

そして、改めて実感する。

やはりクッカの索敵の方が、1日、

否、それ以上の長があると実感した次第。

 

昨日の狼の群れの時に、はっきり相手が認識出来なかったのと同じだ。


クッカ曰はく、俺のオールスキル:仮はすぐに神レベルの熟練度に成長する、

との事だが、全てがそう、うまくはいかないようだ。


もしかして、俺をあまりにも全知全能チックにすると、

世界のバランスとやらが崩れるから、

管理神様が特別な補正でもかけたのだろうか。


どちらにしろ今、ここにフォロー役のクッカが居ないのは痛い。

本当に痛い!!


もしも彼女が居れば、必要な情報が収集出来て、

レベッカさんの追跡とその後の対処が、

何倍も楽になっていたのは、紛れもない事実だ。


「くそ! こんな時に! クッカが居れば!」


思わず、不満の声が出てしまう。


しかし、居ない者の事をいつまで言っていても仕方がない。


身体強化のスキルを発動させたので、驚異的な速度で走行移動する俺は、

もう少しで、レベッカさんが出している反応と接触する。


転移魔法を使えば良いのに! と言われそうだが、精度がまだ不安定。

ピンポイントで、目標地点へ正確に跳び、移動出来る自信が無い。


万が一、転移地点を誤れば、時間をロスし、もう取り返しがつかなくなるから。


彼女の周囲に「ぽつぽつ」とあるふたつの小さな反応は、あの犬2匹なのだろう。


ガクブル状態たる怯えの気配を大量に放出しているが、

感心にも、何とか踏み止まり、必死に『主人』を守っているらしい。


「お~い! レベッカさぁん! どうか無事でいてくれよぉ!」


俺は大きく叫びながら、一層速度を速める。


だがヤバい! 間に合わない! そんな思いも強くなる。


と、その時!


がはあおおおおおおっ!!


突然、凄まじい咆哮が響き渡る。


そして、呼応するように続けて数多の咆哮が起こった。


あぐがあおおおおおおっ!!

があああああああっ!!

ぐおおおおおおっ!!


対して、わんわんわんと、か細くも必死な犬の吠える声も聞えて来た。

怖いのを我慢して、何とか声を振り絞って吠えている……そんな感じだ。


俺の習得したスキルが、意思に関係なく自動的に発動する。


クッカが言っていた魔物の意思を読み取り、

逆にこちらからも伝えられるスぺッシャルなものだ。


そのアンノウン達の咆哮は……


げひひひ、美味そうな人間の女をばりぼり喰えるぞ! という歓喜の感情。


くっそおお! バカヤローおお!! 冗談じゃねぇ~っ!! ふざけるなああ!!


『転移!!』


もう、転移魔法があ! とか言っていられない!


俺は、「キッ」と前方を睨むと目標地点を目指し、転移魔法を行使!

一気に亜空間を跳んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……転移した俺が跳んだ場所は、東の森の中で、

拓けた草原のようになっている場所であった。


おお、転移魔法は上手く行ったようだ!


そう! そこに、レベッカさんが居たのだ!


俺に背中を向けて座り込み、ガタガタと熱病にかかったように震えている。


ああ!! 無事だったぁ!! 間に合ったぞお!!

 

生きているレベッカさんを見て、俺は「ふう~」と、軽く安堵の息を吐く。


レベッカさんのやや前方に2匹の犬が、彼女を守るよう、

わんわん! と必死に吠えていた。


無理矢理、虚勢を張っているのは丸分かりであったが、頑張って逃げない。


普段、余程レベッカさんに愛情を注いで貰い、可愛がられているのだろう。


そして、ひとりと2匹の前に立ち塞がっているのは……


身長は、楽に5mを超えている。

やはりゴブリンなんか比較にならない、

巨大な人型魔物(ヒューマノイド)である。

 

体色はどす黒く、目は充血したように真っ赤。

大きな口からは、鋭い牙が見え隠れしていた。

俺の心の中で、アンノウンの名称が切り替わって行く……


俺の内なる心の声が、このアンノウンの正体を告げて来る。


『オーガ。大型の人型魔物(ヒューマノイド)。体長3mから最大級は5m前後に達する。現在、半径100m以内に3体存在。肉食で性格は残忍、凶暴』

 

え!? おいおいおい! すぐ目の前にオーガが居るのに情報って、これだけ?


こんなシンプル過ぎるスペック、ファンタジーオタクなら誰でも知っている、

最低限の一般常識じゃないか!


具体的な身体能力とか耐久力とか……


そして肝心の弱点は……

こいつらを『確実に倒せる』という弱点は!? 


必殺の方法は出ないのかよぉぉ!!


く! 使えねぇ! 本当に使えねぇぞ、俺!!!


俺の中二病知識だと、

確かオーガって、特に言われている弱点は無かったような……


脳キンとか、策略で騙して倒せとか、

耐久性が高いので、攻撃は物理よりも魔法が有効とか、くらいか。


おいおい! 全然、曖昧じゃねえか! それ以上、思い出せないぞ!


しかし、もう猶予はない。


オーガが踏み込んで、いきなりレベッカさんを掴もうとしたのである。

彼女を、『餌』として喰らおうとしているのは明らかだ。

 

その瞬間。


レベッカさんの愛犬ヴェガが、ダッシュしてオーガの腕に噛み付いた。


持てる勇気を振り絞り、強敵へ戦いを挑んだのだ。


「ヴェ!! ヴェガああ!!!」


響き渡るレベッカさんの絶叫。


しかし噛みついても、オーガの分厚い皮膚には、犬の牙など全く効いていない。


オーガが噛み付かれた腕を、さも煩そうに振り払うと、

ヴェガは呆気なく、ぽ~んと宙高く飛ばされた。


そして無残にも、木に叩きつけられて下に落ち、

ぴくりとも動かなくなってしまう。


反応を確認すると、何とか生きているようだが、

致命傷を負ったのか、どちらにしてもヤバい。


もう1匹の犬、リゲルはだいぶ臆しようだが、何とかその場に踏み止まっていた。


ぴくりとも、動かなくなってしまったヴェガを見て、レベッカさんは泣き叫ぶ。


「ヴェガ~!!! わあああああん!!!」


愛犬を倒され、響き渡るレベッカさんの慟哭!


しかしオーガはそんなことはおかまいなしに牙をむき出し、

再びレベッカさんを掴もうとした。


させるかぁぁ~!!!


その時! また俺の内なる心の声が響く。


格闘スキル発動!


俺の強化された身体に、いきなり未知の力が加わる。


溢れんばかりの膂力が、あっという間に全身へ、(みなぎ)って行く!


そして、オーガに恐怖など全く感じなくなった。


「くああ~~っ!!!」


俺は裂帛(れっぱく)の気合を発し、今度は飛翔魔法を発動。


思い切り飛んだのである。

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