第26話「ツンデレ逆ナン! そして……」
俺は、サポート女神クッカのアドバイスに従う事にした。
そしてレベッカさんが、本当に『かまってちゃん』なのか、
確認する事にしたのだ。
「じゃあ、レベッカさんをよ~く見ようかなぁ!」
「何度も言わせないで! 別に見ても良いって言ってるでしょ!」
おお、やはり、レベッカさんは『ツンデレ』なんだ。
仕方ないから、みたいな感じで、「別に良いけど!」と突っ張りつつ、
実は心の中で「貴方さえ良ければ、何でもOK」と許しているなんて、
誰にでも通じるツンデレ確定の言葉&態度じゃないか。
ちなみに俺は、ツンデレが大好きだ!
なんて、話がそれたか。
レベッカさん、一応、村の為にみたいな、義務感だけでは、ないみたい。
俺に対し、そこそこの興味があるのかも。
多分……レベッカさんは、俺の事が「大好き!」とまで行っていないと思う。
ただ若い男であり、リゼットを助けた俺に対して、興味津々なのは間違い無い。
強くて優しい、加えて誠実だと、俺の長所の噂も聞いているから尚更。
リゼットから聞いた通り、
村には結婚に向いている適齢期の男が居ない。
なので、レベッカさん始め、美少女達には選択肢が無く、
まずは『許容範囲内の俺』に目を向けた。
そしてレベッカさん個人としては、
実際に俺と話してみて、更に狩人の適性を見てみたら、
おお、結構良いんじゃない? この人、合格かも! というのが真相だろう。
レベッカさんが、何故、ツンデレなのかというのも推測出来る。
ツンの部分は俺に対して主導権を握りたいから、出る。
上から目線で、常に命令口調なのは、
俺より年上だから、「お姉さんぶりたい」せいもあると思う。
さてさて!
約1時間後……結局、俺が3羽にレベッカさんが4羽……兎を狩った。
狩った後の血抜き等の処理も教えて貰ったら、
俺はすぐに上手くこなせ、レベッカさんは満足そうに笑った。
そもそも俺は弓矢が初体験。
それで兎を3羽は、狩人デビューにしては充分、合格点だと思う。
しかし……
「ケン! もう少し、歯ごたえのある獲物を狩ろうよ」
狩りの成果と俺の訓練が順調だからか、
ノリノリとなったレベッカさんがいきなり、獲物の『ランクアップ』を申し出る。
これは、俺と一緒に居る時間を、出来る限り延長させる作戦と見た。
更に大きな獲物を狩って手本を見せ、
『先輩』として優位性を見せる意図もあるみたい。
「レベッカさん、歯ごたえのある獲物って?」
「うん、鹿とか、あわよくば猪かな」
鹿と猪か……
確かにこれらを狩れば、今日の俺の研修も文句無しの『高評価』となろう。
レベッカさんによれば、通常の狩猟というものは、
色々と制限がある場合が多いそうだ。
狩ってOKの動物の種類、狩猟数、そして使用可能な武器の制限等。
王国各地のご領主様のお考えで、様々な『ローカルルール』があるという。
このボヌール村を治めるのは、リゼットから度々名前の出るオベール騎士爵様。
ボヌール村から少し南に下ったエモシオンの街が本拠地。
彼の方針により、エモシオン近辺の御狩り場とした森以外、
狩りの制限は無いそうだ。
しかし、これには落とし穴がある。
どういうことかと言えば、狩りが自由に行える代わりに、
村で収穫した小麦の80%は、『年貢』として納める決まりらしいのだ。
そのお陰で村民が食べるパンは、
主に小麦粉が余り含まれていないライ麦パンとなる。
結果……主食は、ライ麦パンと畑で取れる数種類の野菜。
肉は数少ないブタを滅多に食べず、ニワトリがたま~にくらい。
そして狩猟で、食料用に兎や鹿をそこそこ狩る……
それが、ボヌール村のつつましい『食糧事情』だというのである。
「ふ~ん……自由に狩りが許されているのなら、どうしてもっとやらないのですか?」
獲物が増えれば、余剰分を売って現金に変える事も出来るだろうに。
しかし、レベッカさんは俺の言う事など論外だという。
「馬鹿ね、村に居るメンツを見たでしょ、ケン」
「あ、ああ、はい」
「ならば分かるはずよ。実際狩りが出来るのがパパ、いえガストン副隊長を含めて村にはほんの少ししか居ない。もし留守中に魔物が襲って来たら、戦う人が居なくてあっと言う間に村は蹂躙されちゃう」
狩りが出来るのは基本的に男。
レベッカさんみたいな女狩人は例外中の例外。
かと言って、他村の狩人や冒険者など、
余所者を雇って狩りをさせるのは厳禁だという。
俺はもう、ジョエルさんに認められた正式な従士だから、何とかセーフらしい。
ふうむ……領主のオベール様って、中々の策士。
大規模な狩りが出来ない村の事情を見越して、
代わりに大量の小麦での納税を求めるなんて。
村民が、狩りをやり過ぎなければ、領内の森はそんなに荒れないものね。
話を元に戻し、敢えて再び言おう。
村には若い男子が全く居ない。
逆に『彼氏無しの美少女』がたくさん居ると。
俺にとっては、完全な売り手市場……
これ……凄くラッキーなのだろう。
「だからさ……農作業者の代わりは居ても、戦士や狩人の代わりはそうは居ない。ケン、あんたさ……」
ああ、何か……「どんどんどんどん」本題へ向かっている気がする。
と思ったら、予備動作無しでいきなり来た~!
「はっきり言うわ。私と付き合わない? 当然……結婚前提にさ」
「ええっと……いきなりですね」
「うん! 私、言いたい事は、いつも、はっきり言うのよ。遠回しに言うのは好きじゃないわ」
「ですか」
「で、話の続きだけど、私は18歳であんたよりも年上だけど……あんたの狩りの腕なら私の良い相棒になれるし、男前で恰好いいし……」
うわぁ! ズバッと真っすぐの豪速球来た!!!
俺、コクられてる! コクられてるよ!
22歳の青年たる俺ならともかく今の俺は15歳の少年。
18歳の、綺麗な体育会系お姉さんから、
ストレートに告白されている夢のような展開だ。
「ちなみに私、身体はとても頑丈さ。ミシェルみたいに胸は大きくないけど……絶対に良い子、産めるよ」
なんちゅう告白だ!
逆ナン?
いや逆プロポーズ!
直球ど~ん!!!
伝説みたいな凄い剛速球だ。
ここで、例の御方からも突込みが入る。
『あのぉ、綺麗な年上のお姉さんならここにも居ますけどぉ!』
幻影のクッカが、空中に浮かんで俺を『ジト目』で睨んでいた。
例によって、胸や身体のラインが透けて見える服は男心をそそる。
無視するわけにも行かず、俺は言葉を戻す。
『確かに! それは否定しない。けど……真剣に付き合うとかは別の話。結婚なら尚更。クッカは仕事以外、俺をいじって面白がっているだけでしょ』
『いじって面白がる? 違います! そんな言い方って………酷いわ!』
おいおい、酷くないって!
確かに俺は化け物みたいなレベル99だけど、所詮は人間。
片や貴女は、天界の女神様。
明らかに『身分』が違うだろう。
『酷い! って言われてもさ。人間の俺と天界の女神様のクッカじゃ、超えられない壁があるだろう?』
『超えられない壁……』
ああ、何かクッカの奴、考え込んでいるよ。
『ちょっと、行って来ます』
おいおい、クッカさん、行くって何?
一体、どこへ行くんだよ?
何か、いや~な予感。
『ケン様、それではまた』
クッカは手を挙げてそう言うと、「すうっ」と消えてしまった。
ああ、本当に嫌な予感がする。
「どうしたの?」
俺が考え込んでしまったと勘違いしたレベッカさんは、
心配そうに顔を覗き込んで来た。
「あ、ああ……大丈夫ですよ……」
レベッカさんは、歯切れの悪い俺の返事を聞き、
顔を歪ませ、とても悲しそうな顔をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺は失敗した!
すご~く失敗した。
勇気を振り絞って告白したレベッカさんに対し、
俺が見せた暗い表情は愛を拒否したと思われたらしい。
まさか、クッカの不可思議な行動を気にしたなんて言えないし……
「はい! 今日の訓練は終わり! もうさっさと帰って良いよ」
何と! レベッカさんのデレな口調が一転。
ブリザードが吹き荒ぶが如くの、
冷たいツンな言い方に変わってしまったのである。
「あのう、レベッカさん」
俺がレベッカさんを呼ぶと、彼女は美しい眉を吊り上げる。
「気安く呼ばないで! どうせ、ケンは私みたいな年上の貧乳は嫌なんだろう? リゼットみたいに若くて可愛いか、クラリスみたいに優しい癒し系か、ミシェルみたいな巨乳ぼ~んが好きなんだろう?」
ああ、そんな事ない!
スタイル抜群なスレンダー美少女のレベッカさんを、俺は決して嫌いではない。
普段の言い方こそ、少しきついが、それはツンデレだと判明したし、
さっぱりした姐御肌で優しい性格なのが、俺には分かる。
親身になって丁寧に教えてくれた弓の教授からも、
彼女が真面目で、とても良い子だと分かっているから。
リゼットとは、タイプが全く違うが、本当に魅力的で素敵な女子だと思う。
普通に付き合うのあり? と聞かれたら、全然あり、だ。
でも……何て、思い込みの激しい子なんだろう。
「レベッカさん! 違いますよ! 俺……」
「気安く呼ぶなって言っただろう!!!」
大声で叫び、レベッカさんは走り出す。
当然、レベッカさんに忠実な2匹の猟犬も走り出した。
俺も当然、彼女の後を追うとするが……
「同情の慰めなんて要らないっ! ついて来ないでっ!!!」
更に、大声で拒否されてしまう。
そしてレベッカさんが2匹の犬と向かう先は……東の森だ。
自然と、俺の索敵スイッチが入る。
まだ俺の中で危険は察知されないが、何と言うか嫌な予感がする。
さっきのクッカの時以上に、凄く嫌な予感だ。
そうしている間にも、レベッカさんは俺との距離を遥かに離してしまう。
狩人として、日々鍛えた彼女の健脚は、あっと言う間に森の入り口へ達している。
そして、彼女の姿が森の中に消えた。
まずい! まずいぞ!
俺は身体強化のスキルを発動。
レベッカさんの向かった方向へ走り出したのである。
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最後に、
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