第23話「リゼットの打ち明け話②」
「え!? な、何!? 団結した村の女子の気持ちが、乱れたのって俺が原因……なの?」
思わず俺は、もう一度、聞いてしまう。
村の女子の団結を、悪戯に乱す男……
それって、まるで俺が女子の敵=外道の極悪人みたいじゃないか。
「はい! 正直に言います! ケン様は、村に残った女子全員にとって理想のお婿さんなんです」
は!? お、俺が、理想のお婿さん!?
な、何、それ?
「おいおい! 理想のお婿さんって? 俺、この村へ来たばかりだし、そんな大した男じゃないよ!」
「いえ! 村民への紹介の時、女子がふたりも声を掛けて来たのが、その証拠ですよ」
「そ、そう?」
「はい! ケン様のファーストインプレッションは、村民全員に対し、凄く良かったんです、特に女子達へは!」
「俺のファーストインプレッションって……」
「そして! 今朝のお父さんの話と、ガストン達の話から、私をゴブから助けた事は、もう村中に知れ渡っています。ケン様は強くて、優しくて、誠実な人だって! 女子達の間では、多分、その噂話で持ち切りでしょう!」
「そうか……」
「今日のクラリスもそうですよ。彼女の話を聞いて分かりました。ケン様に優しくして貰い、とても素敵な方だなあと、話は本当だったんだなあと、心の底から実感したんですって!」
ええっと……
クラリスさんって、俺も凄く可愛いなあと思ったけれど、
良く言えば、全然すれていない子?
悪く言えば、チョロイン?
「という事で、ケン様! 貴方が原因で、今やボヌール村の女子達は皆、心を乱し、鉄壁であった団結心を失ってしまいました」
「…………」
成る程、そういう事か……
でもさ、悪いけど、リゼット。
管理神様の力で、すこ~しだけイケメンにして貰ったけれど……
基本的には地味なフツメン以下の『俺程度』が来ただけで揺らぐなんて、
団結心が『鉄壁』とか言わないと思うけど。
それに、物珍しい外部からの男ってだけで、
ちょっと興味が出たくらいでしょ、多分。
俺はそんな、喉まで出かかった言葉を抑えていた。
雰囲気からして、これって今、絶対に言っちゃいけないって分かったから。
そうだ! リゼットは真剣に熱く語っている。
ここは、空気を読んで聞き役に徹しよう!
「ケン様、お願いがあります」
「おう! 何だい?」
「幸い、このプリムヴェール王国では、一夫多妻制が認められています」
「ぶっ! いいい、一夫多妻制!?」
「は、はいっ! そうです……男の子は甲斐性さえあれば、たくさんの女の子を、お嫁さんに出来るんです!」
ななな、何?
いきなりの、ご都合展開!?
甲斐性さえあれば、ハーレムOK! 来たぁ~っ。
顔と姿は、見た事がないけど、分かる!
管理神様の、満面笑顔の、どや顔、Vサインが目に浮かぶ。
どうだあ! お前をこんな素晴らしい世界へ送ってやったぜ!
大いに感謝しろよ!って、か。
「あははは、す、凄いね~。で、でもさ、女の子は、自分だけを愛して欲しいと思うよね?」
一方、リゼットの話がどんどん! シリアス展開になっている。
なので、俺は何とか和らげようと必死だ。
俺はこの村で、普通に、「の~んびり」暮らしたいと思っているんだから。
愛する彼女はまあ、ひとり居れば良い。
男子だから、ハーレムに興味こそあるが、
誰かと寄り添い、地道に幸せに生きて行ければOK。
しかし、リゼットの話は終わらない。
「このボヌール村には結婚適齢期、そして適齢期に向かう女子は大勢居ます。だけど、同じ適齢期の男子はほぼ皆無です」
「そ、そうみたいだね」
「はい! しかし! 男子なら誰でも良いというわけにはいかない。いかないんですっ!」
「だ、だよね」
「ですが! このままでは村の人口は減る一方……ジレンマへ陥っていた所へ、理想の夫君となりうるケン様! 貴方様が現れたのです!」
「そ、そうなんだ……」
「はい! このまま、何も手を打たなければ、行動しなければ! この村はじり貧で、徐々に勢いを無くして行くでしょう。私は村長の娘として、何とか、それを阻止したい! この村を大いに発展させ、とても豊かにしたい! 数多の村民でこの村をいっぱいにしたい!」
「リゼット……」
「私は、私を救い、強く優しく、誠実なケン様が、このボヌール村を救う為に、創世神様が遣わされた御使い様だと思っています!」
ええっと……確かに、俺は管理神様から、
この中世西洋風異世界へ送られたけれど……
どう見ても、御使い様、じゃないよなあ。
「ケン様! どうかどうか、お願い致しますっ! 私と共に、この村を救うべく、ご尽力して頂けませんか?」
「この村を救うべく、俺が……」
「はい! 村の将来の為には、少子高齢化を防ぎ、子供を増やすというのが、ひとつの方法です。ケン様が私と結婚して頂ければ、その一助になります」
リゼット……凄いな。
村長の娘っていう責任感の強さと、ここまで弁が立つなんて。
「まあ、確かに、そうだよね」
「でも、それでは焼け石に水! 生まれる子供は、せいぜい数人程度でしょう。私が、めっちゃ頑張っても10人が限度ですっ!」
「だ、だね!」
「ならば! 更に子供を増やす為、一夫多妻制のルールに則り、ケン様が村の他の女子とも結婚するのはありかと!」
「そうなるかあ」
「はい、そうなります! 村の将来を思えば! ですが、ケン様が村の他の女子を妻にめとれば、当然ながら、私は嫉妬するでしょう」
「それ、自然な感情だよね」
「はい! 自然な感情です! でもでも! 私は我慢します。村長の娘だからと、わがままを通した、と思われるのは凄く嫌ですし、この村の状況下で、自分ひとりだけが幸せになるのは、絶対に許されないとも思いましたので!」
「そ、それって!」
「はい! だからお願いします! もし、村の女の子が、ケン様を本当に好きになって……お嫁さんになりたいと求めたら、全ての子を受け入れて頂きたいのです!」
「え、えええ!?」
「ケン様と結婚した皆で、ひとつのファミリーとなり!! 全員で協力し合い!! この村を大いに発展させましょう!! そして、その最初の子が、私……ですっ!!」
「は、はい~っ!?」
最初? 最初の子って、ナンダ?
「す、凄く凄く! 恥ずかしいけれど、告白しますっ! わわわ、私はケン様が好きですっ!」
言い切り、ふうと、息を吐き、リゼットは更に話を続ける。
「本当に本当に! ケン様が大好きなんです!! 昨日、お会いしたばかりだというのに、ちょっと会えないだけで、こんなに心が苦しいのですっ!!」
やっぱり…… リゼットは、真面目な女の子だ。
そして一途だ。
「リゼット……」
「もうひとつ聞いて下さい。私、ケン様に命を助けて頂いて、改めて自分がこの村で何をすべきか、何をやりたいかを考えました」
一旦、失いそうになった自分の命。
リゼットは助かってから、それを改めて考えてみたのだろう。
再び軽く息を吐いてから、リゼットは微笑んだ。
自分の将来をイメージして、夢見る乙女といった面持ちである。
「私……花を育てるのが大好きなんです。以前、お父さんにエモシオンの町へ連れて行って貰った時に、花一杯の綺麗なお花屋さんを見て、自分でもやってみたい! そう思いました」
成る程! お花屋さんか。
良いじゃないか、素敵な夢だと思うよ。
しかし、リゼットはしっかり、現実も見ていたのである。
「でもこの小さな村で、普通のお花屋さんをやっても商売にはならない。そんな事を考えながら、ボヌール村へ帰る前に町の、とあるお店でハーブティーを飲んだんです」
おお、ハーブティ。だんだん話が見えて来たぞ。
「凄く美味しかった! そして……これだ! と思いました」
リゼットにとっては、閉ざされていた道が、
目の前に、ぱっと開けたと感じたに違いない。
「その後、たまたま西の森へ内緒で遊びに行ったら、秘密の場所を見つけました。その場所はハーブの宝庫なんです」
ああ、例の場所だ。あの、自然のハーブ園の事なんだね。
俺は、思わず頷いた。
リゼットは、自分の話を真剣に聞いてくれる俺が嬉しいのだろう。
にっこりと柔らかく微笑んでいる。
「ケン様! 私……あの場所から様々な株を持ち帰って、この村にハーブ園とお店を持ちたい。この前、とても怖い目にあってしまったけれど……やっぱり諦めきれない」
「そうか」
「はい! そして自分の将来の夢と共に、何が村の為になるのかを、改めて考えました! そして答えは出ました! 私が素敵で素晴らしいハーブ園を造れば、ボヌール村の発展に必ず寄与します!」
「確かに!」
「だから! いずれ私を、あの場所へ連れて行って頂けますか?」
ここまで聞いたからには、俺も心が決まった。
それに元々、俺は……この子が好きで、
愛おしい! 守りたい! そう思っている!
「ああ、構わないぞ! それに俺も……リゼットが大好きだ」
「え!?」
リゼットは、俺の告白に驚いて、その小さな手で口をふさいだ。
ようし! 今度は、俺が言ってやる!
「病気のお婆ちゃんを助けようと、あんな無茶までする優しいリゼットが好きだ。
自分の夢を考えつつ、そしてボヌール村の将来もしっかり考え、頑張ろうとする、リゼットが大好きだ」
「ケン様!!!」
俺の言葉が『響いて』いるのだろう。
リゼットは、目に涙がたまっている。
悲し涙じゃない、嬉し涙。
ここで、俺はひとつ提案をする。
「リゼット、また俺と、ふたりだけの秘密を持って貰えるかい?」
「また? ふたりだけの、ひ・み・つ……ですか?」
「ああ、秘密を絶対に守ると約束してくれ、決して大きな声をあげるなよ」
「は、はい!」
「行くぞ! ほ~ら出ろぉ!」
「ああああっ!?」
俺が魔法の箱……空間魔法から出して、テーブルの上にぶちまけたのは……
昨夜、西の森まで取りに行ったハーブの数々。
良い香りがする、切り取ったララルーレの花。
根っこがついて、そのまま植えられる数種の草も。
魔法の箱――空間魔法は全く時間が進まないから、
劣化しないで、そのまま保存出来ると、クッカに教えて貰っていたからね。
「ああっ! 風邪に効くララルーレ、それにトットコでしょ、ラーダにフィルまであるっ! どどど、どうして?」
「病気のお婆ちゃんが辛い思いをしているのに、出すのが遅くなって御免な。リゼットを助けた日の晩……だから昨夜だな。俺が西の森へ行き、ハーブが生えている場所を探し、取って来たんだ」
「もしかして! わわわ、私の為にっ!」
リゼットは、さすがに驚いたようだ。
真夜中、ひとりきりで森へ行くなんて、彼女の常識では考えられないからだろう。
「ああ、お父さん達から、リゼットがあんなに怒られていたからな」
「ケン様……」
「だけど大事なお婆ちゃんだから、危険を冒してでも、ハーブを取りに行きたいと思ったんだろう? だから昨夜、俺が代わりに行った。実際、ゴブより怖い魔物が出たぞ」(変態ちっくな人狼だったけど……)
「ええっ!? ケン様! 危ないですよっ」
「ははは、この通り、怪我ひとつ無いし、大丈夫。何とか倒したぞ」
(本当は一撃だったけど……)
「………やっぱり……そうだ!」
ここでリゼットは、納得したように大きく頷いた。
そして、真剣な顔付きで、真っすぐに俺を見る。
何かを、確信したって感じだ。
「ケン様は私の王子様だ!! 強くて優しい王子様だ!! 運命の人なんだ!! ケン様ぁ!! 大大大好きぃぃ!!!」
リゼットは、叫ぶように言うと、勢いよく俺の胸へ飛び込んで来た。
そして俺を慈愛を込め「じっ」と見つめた後、
情感たっぷりに、何度も何度も、熱いキスをしてくれたのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
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東導号の各作品を宜しくお願い致します。
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皆様のおかげです。ありがとうございます。
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WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
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お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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