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第20話「癒し系農ガール」

雑学、中二病、ラノベ、ゲーム等々、様々で数多な知識はあるし、

更には管理神様から、レベル99の能力とオールスキルまでを与えられた。


身体は超頑健、体内魔力は底無し。


我ながら、はっきり言って、俺は万能な超人。


しかし、正体がバレて勇者に祭り上げられるのは、まっぴらごめん。


それゆえ、万事において、目立たず控えめに、そして謙虚に生きる。


この西洋風異世界に転生した俺の信条である。


そして知識を活かす、実践が更に大事。


千里の道も一歩よりで、という事で、

俺は、『(うね)』をどうやって作るのか、

いちからレクチャーを受ける。


傍らでは、幻影(ミラージュ)状態のクッカも興味深そうに聞いていた。


そもそも子供の頃、俺は故郷において、畑は散々見ている。


草むしりに毛が生えたレベルだが、

知り合いの農家をちょっとだけ手伝った事もあった。


何となく雰囲気は分かっていたが、所詮子供の頃の事、

はっきりと覚えちゃいない。


初期レベルの『農業従事者』を含むオールスキルがあっても、

俺はまだまだ、素人同然である。

 

その上、ここは中世西洋風の異世界。


郷に入っては郷に従え。

改めて、最初から説明をして貰った方が良い。


村の人と、コミュニケーションが取れる良い機会にもなる。 


という事で、教えてくれたのは、

作業をしていたこれまた70代半ばを楽に超えたお爺ちゃん。


俺が名乗って挨拶したら、にっこり笑って歓迎してくれた。


名前は、ニコラさんって言うのだそうだ。


やっぱりこの村では、男って超が付くベテラン揃いみたい。


好々爺という感じのニコラさんは律儀な性格らしく、

ちゃんと最初から教えてくれた。


念の為、補足しておくと……

畝とは農地で作物を作るために、一定の間隔を取って土を盛り、

周囲よりも高く作った箇所の事である。


今、俺がやっている作業は、畝を作る『畝立て』という作業だそうだ。


ある作物を栽培し終わると、新たに畝を作り直すのが通例。


なのでこれを『畝換え』とも言うらしい。


また畝の高さは、土地の『水はけ』の具合によって決まるらしい。


だが、ボヌール村の土地はそんなに酷くなくそこそこ。


俺が見たところ畝の高さは約5cmくらいで、

上限プラス数cmの間といったところだ。


もっと水はけの悪い土地では、畝を10cm以上で作るのがザラなようだ。

砂混じりの土地は15㎝くらい、粘土質は20㎝くらい。


しかし、あまり高く作ると、崩れ易くなってしまうので微妙だとも。


一方、畝の幅は約1mというところだろうか。

また、方角的には南北方向に伸ばすのが基本だという。


これは、作物が日光をまんべんなく受けるようにする為なのだ。

後は、季節によって、東西に伸ばす場合もあるらしい。


こうして作る畝は、見た目には、

農地の栽培部分と通路を明確に区分する事にもなる。

加えて植えられた作物の苗の根を付き易くし、伸びも良くなるそうだ。


成る程! 成る程!

うんうん! 凄く勉強になった。


習得している初期レベル農業従事者のスキルのせいか、

しっかりした教えを受けると知識が確信に変わって行くのが分かる。


リゼット父である村長のジョエルさんによれば、いろいろ仕事をやらせた結果、

俺の適性を判断するようである。


『研修』の結果次第では、農作業メインでは働かないかもしれないという。


但し、誰かが怪我や病気で休んだりすれば交替して働く事になるので、

村の仕事はひと通り覚えておいた方が損は無いのだ。


そんなこんなで、ひととおり説明が済んで、ニコラさんから指令が下る。


「じゃあ、早速やって貰おうか」


俺は、密かに身体強化のスキルを発動させた。


「ざくっ、ざくっ」と土を掘り返してから、畝を丁寧に作って行く。


土の色は、赤に近い黒と言ったところ。


ジャンボサイズのミミズもたくさん出て来るので、

結構豊かな土地だと思って良いのだろう。


しかしミミズの大群を見た瞬間、クッカは息を呑み、

顔を真っ青にして姿を消した。


ミミズが、ゴブ以上に大のつく苦手らしかった。


まあ、仕方がない。


俺は、苦笑して作業を続けた。


そして、割り当てられた区画の作業は……あっと言う間に終わった。


以前の俺ならともかく、

転生後のこのスーパービルドアップした身体ならば、体力も完璧。

畝づくりのコツさえ習得すれば、当然、大楽勝なのである。


ニコラさんへ「終わりました」と言うと、

えらく褒められた上、もう作業完了でOKだという。


え? これで終わり?と、拍子抜けしてしまう。


俺はもう少し、働いても良いと思ったから。

 

まあ最初の予定通りだと、ラザールさんに報告したら、

次は休耕地に放牧した家畜の見張りをする事になる。


なので、ちょっとひと休み。


俺は、畑の脇の土の上に座り込んで暫く休憩する事にした。

周囲を見ると、まだ数人の村民が一生懸命働いている。


その中に、若い女子もひとり居た。


パッと見だが、年齢は俺と同じ15歳くらいだろうか。


髪は明るい栗毛で、肩の辺りまで伸びている。


背格好はリゼットと同じくらいだろうか。


栗毛少女は黙々と鍬を振るい、土を積み上げて行く。


全体的に見て華奢な少女。


あまり体力があるようには思えない。


一応、作業に慣れてはいるが、すぐにスタミナが怪しくなり、

肩で息をしているのが見てとれるのだ。


俺は即座に、彼女を手伝う事を決めた!


背後から栗毛少女に近づくと「ちょっと」と声を掛けた。


驚かさないよう、や~んわりソフトにである。


それでも栗毛少女はひどく驚いたようで、身体を「びくっ」と震わせた。


「ごめん、驚かせて。俺の作業は終わったから、君、良かったら手伝うよ」


そう俺が言うと、栗毛少女はこちらを向いて嬉しいような、

困ったような顔をする。


そして、黙ったまま、首を左右に振った。

 

ええ!? もしかして拒否?

余計なお世話って事かな?


改めて見やれば、とても大人しそうな雰囲気の子だ。


多分、新参者の俺に遠慮しているのだろう。


やはりこの子も鼻筋が通り、整った可愛い顔立ちをしている。

口数が少なく大人しそうだが、芯は強そうな雰囲気。

 

俺は、ふと考えた。

 

もし仕事の分担が村の規則できっちりと決まっていて、

余計な事をしたら、逆にこの子に迷惑が掛かる。


だから、一応ニコラさんへ向かって、

「あの子の手伝いをしたい」とひと言断わる事にした。


すると、ニコラさん、意味ありげに、にこっと笑った。


おお、手伝いはOK! 問題ナッシングという事か。


「ニコラさんから許可を貰った。手伝うよ!」


と言うと栗毛少女は嬉しそうに頷く。


やっぱり気を遣っていたんだ。


俺は早速、彼女が受け持つ担当区画の、『畝作り』に取り掛かった。


そして――15分後


チートな為、力があり余り、コツを覚えた俺が「ちょこっ」と頑張ったら……

栗毛少女の作業分は、「あっ」と言う間に終わった。


「終わったよ、お疲れ様!」


声を掛けると、栗毛少女は驚いた顔をした後、俺に深く頭を下げた。


まだ自分と同じくらいの少年が、大人以上の働きをしたのにびっくりしたようだ。


びっくりした後、嬉しそうに微笑む栗毛少女。

笑うと目が凄く細くなり、優しい垂れ目になる。


この子は俺好みの、『癒し系』という雰囲気。


しかし、さっきから全く喋らない。

本当に、無口である。


黙っていると、このまま会話が終了し、「じゃあ、さよなら」となりかねない。


だから、俺から声を掛ける事に。


「さっき広場で紹介されたから知っていると思うけど、俺はケン。今後とも宜しくな」


栗毛少女はどうやら、超が付くくらいの、人見知り&恥ずかしがりやのようだ。


頬を赤く染め、消え入るような声で返事をしてくれる。


「……ありがと。……私、クラリス」


「おう、改めて宜しくな、クラリスさん。俺、またどんどん手伝うぞ。だから、気軽に頼んでくれよ」


「…………うん」


クラリスさんは、また「ぺこり」と頭を下げた。


そしてすぐ顔を上げると、癒し系な最高の笑顔を披露してくれたのであった。

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