第16話「ハーレムの真髄」
「ぎゃははははっ」
「は、腹がいてぇ!」
「冗談は、よし子さん!」
俺の名(仮名)を聞いたライカン達は全員、腹を抱えて笑っている。
しかし、クッカは「ムカッ」と来たようである。
彼女にとっては『郷愁マン』という名前に、相当な思い入れがあるようだ。
「おい! こらぁ! ふるさとを守る郷愁マンを馬鹿にするなよぉ! 田舎はなぁ、のんびりしていて、最高なんだぞぉ!」
俺の声帯を使い、ムキになって反論するクッカ。
おお、何故か、凄く気持ちが入っている。
クッカは、あのエルフ女神みたいに冷たい感じはしないし、
少しおっちょこちょいだけど、基本的には、至極冷静沈着。
いつもは、こんなに熱くならないのに意外だなあ。
一方、ライカンは馬鹿にしたように「ふん!」と鼻を鳴らす。
「くくく! 確かにな、お前の言う通り田舎は最高かもしれねぇ! この先の村は特に最高らしいぞ」
え? この先の村って……ボヌール村の事?
あの村が、特に最高?
こいつ、何言ってんだろう?
と思っていたら、すぐにライカンが補足説明をしてくれた。
「俺がよお、ある筋から仕入れた情報によると、な。その村にはすっげぇ美少女がわんさか居るそうだ。俺は、な! ぜひハーレムって奴を作ってみたいんだ」
は!?
ボヌール村は、美少女ばっかり?
確かにゴブから救ったリゼットは超が付く美少女だが……
他にもいっぱい居るんだ? 美少女。
俺は夕方遅くに村へ入って、村長宅へ直行したから、
まだ村民を全員紹介されていない。
明日のお楽しみにしておこう!
って……ハーレム!?
それは……だいぶ興味がある。
「ハ、ハーレムって……どうやって作るのかなぁ?」
それまではクッカが勝手にしゃべっていたが、
俺は、思わず自分でライカンに聞いてしまった。
え? どうしてって?
そりゃ、可愛い女子の攻略作戦をどうするか?
興味があるからに決まっている。
所詮、男子視点かもしれないが……
俺の読んだ、いくつかのラノベでは、
ハーレムって、お約束の美しき理想世界だもの。
しかし俺の質問は、全く違う意味で、ライカンに受け取られたようだ。
「ぎゃははは! 何だ、そんな事も知らねえのかよ」
と、大笑いされ、心底馬鹿にしたように吐き捨て、更には、
「そりゃ、ハーレム作るには邪魔な男どもとジジイ、ババァ達を皆殺しに決まっているだろう? その後、残った美少女だけを俺が無理矢理Hしまくる! うひゃははは!」
はあ!? 皆殺し!?
無理矢理Hしまくるう!?
こ、こいつぅ!
いやいやいや! そんなのは、ハーレムじゃない!
俺が思うに、ハーレムとは『ピュアな愛』があるべきなんだ。
確かに、ハーレム大好き! なんて言ったら、大抵の女性はドン引きする。
だけど、男の身勝手な願望とはいえ……ハーレムには夢がある。
嫁にする女性達が、全員優しく愛され喜びを感じ、
更に美しくなるような形の愛の巣!
気高く、崇高で秩序ある、素晴らしき愛の理想ファミリー。
青臭い事、まるで夢物語を言うようだが、それこそが、ハーレムの真髄であろう。
そんなハーレムを曲解し、暴力、破壊、殺戮で、女子達を従わせようとするなど、
絶対に絶対に許せない!
「この野郎!」
頭に来た俺は、思わずライカンを睨みつけた。
しかし、ライカンは相変わらずせせら笑う。
「どうせお前だって、その口でこんな、ど田舎へ来たんだろう? 黒ずくめで凶悪そうな、魔王様の手下みたいな恰好しやがって!」
ん? 黒ずくめの? 魔王の手下みたいな恰好?
ああ、そうだった。
今の俺の出で立ちは確かに、怪しく不気味な黒ずくめだが。
うむむ……魔王の手下って、強いのか、弱いのか、例えが全く分からん!
褒められてはいないだろうが、微妙な表現だ。
それに魔王軍? やっぱり魔王軍って言ったな?
さっきも疑問に感じたが、何故、魔王軍がこんな辺境に現れるんだよ。
つらつらと、考え込む俺に向かって、ライカンは邪悪な笑みを浮かべる。
「ちなみによお、俺は魔王軍のエリート大幹部なんだけど、おめぇは全然見ない顔だな」
「…………」
「まあ、どっちにしてもハーレムの王は昔からひとりだって決まってる。俺が村を乗っ取ってハーレムの王になる! お前など不要! ……邪魔なんだよぉ!」
ライカンはそう言うと、予備動作無し、いきなり大きな拳で殴って来た。
「ごおおっ」って音が聞こえそうなパンチだ。
「わひゃははは! 熊も即死する俺のパンチを受けて死ねぇ!!!」
「しまったぁ!」
いきなりの奇襲だから、俺はライカンの拳を避けられない。
本能的に片手を出して相手の拳を止めようとした、その瞬間であった。
ぺちん!
えらく可愛い音がして、奴のでっかい拳を、ぴたっと、
俺の平凡な、手のひらがあっさりと受け止めてしまったのである。
「はあっ!?」
一瞬、場の空気が凍りつく。
パンチを放ったポーズのまま、固まったライカン本人は勿論、
配下の男達は目を丸くした。
一体、何が起こっているのか、理解出来ないぜ! といった表情だ。
『べ~っだ! 所詮、お前達、雑魚なんて、レベル99のケン様に敵うわけがないわよ!』
クッカの、勝ち誇る声が聞こえる。
さっき散々笑われたから、すっごく怒っている。
そしてクッカにそう言われたら、俺は勇気百倍!
じゃあ、遠慮なくお返しだ。
呆然として固まっている、ライカンの顔面へ、俺はパ~ンチ!
力を込め、殴ってやった。
ばぐっっ!
「ぎゃうっ!」
「ああ、ライカン様ぁ」
「馬鹿なっ!」
おお! 俺が殴ったライカンが、軽く吹っ飛んで、
くるくる回転しながら、高く宙を舞い、
どすん!と落下、ばたっと倒れ込む。
おお! まるで、昔読んだボクシング漫画のバトルシーンのようだ。
思わず、〇〇ストレート! △△フック、□□アッパーなどと言いそう。
だけど、ライカンのやられ方は派手でも、
俺のパンチは致命傷ではなかったらしい。
……しばらくすると、ライカンは頭を振りながら立ち上がったから。
見ると……ライカンの顔の真ん中が、見事にへこんでいる?
ありゃ、これって、やり過ぎ?
もしかして過剰防衛って奴?
しかし、俺の心配は杞憂に終わる。
ライカンが「ぶるぶる」と首を横に振ると、
奴の顔は元通りになってしまったからだ。
「てて、てめぇ! もう許さん! 本気出すぞ~!!」
本気を出す!と聞き、子供かよ!と俺は笑いそうになったが、
ライカンはそう言うと、全身に力を入れた。
「むきっ、むきっ!」と音が聞こえそうな、筋肉の盛り上がり方である。
え? 何か、奴からおぞましい気配が伝わってくるんですけど!
あらぁ! 目の前に居るライカンの全身から、
ふっとい毛がどんどん生えてくるよ~。
こいつ、いよいよ正体を現すのか!
俺の意を受けたクッカが機械音声的な声で解説する。
『人狼。変身系で半魔の人型魔物。体長1m70cm~2m前後。性格は残忍で陰険。鋭い爪と牙、そして並外れたパワーが武器』
ここで、クッカは「ふう」と息を吐く。
『肉食。目の前の個体は特に人間の美少女を好む。つまりスケベで悪魔、鬼畜、女子の敵』
おいおい、すげえ貶めよう。
『こいつみたいな心も身体も腐りきった不細工筋肉男はハーレムなど無理! 到底無理、100%超、無理無理無理!!! はぁはぁはぁ……ええっと、身体耐久力強し。当然物理攻撃にも強い。 魔法耐性は普通。狼形態に変身後は能力が一気に10倍となる」
何か……情報が順不同になっているし、
すっげぇ個人的好みというか、私的な見解が入っているし……
そうこうしているうちに、ライカンは直立した巨大な狼の姿となった。
むきむきさが一段と増し、何と身長も3m近くと、なった。
かあっと開いた口からのぞく、鋭い牙。
噛まれたら、ただでは済まないという趣き。
おお、人狼の親玉、って感じだぞ。
『クッカ! 何か、こいつ強そうだけど、俺って勝てる?』
『ノープロブレム! 俺より強い奴はこの世界には居な~い!』
ええっと………クッカ、お前ノリノリだね。
どこかで聞いた事のある、それって、誰のセリフだよ!
『ケン様、こんな最低最悪男、さくっと倒しちゃいましょう!』
また、クッカの口調が変わった。
いきなりの女神モード?
じゃあクッカの言う事を信じようか、レベル99最強の俺としては!
「ぐあおおおっ!!!」
一方、ライカン=人狼は更に「かああっ」と口を開いた。
俺を噛み砕こうという、デモンストレーションだろう。
真っ赤な口が、耳まで裂けている。
そして、どすの利いた低い声で笑い、言い放つ。
「がははははは! 散々エッチしてハーレム飽きたら、村の美少女丸ごと喰う! 全員を喰ってやる! これ、俺達、人狼のお約束ぅ!」
え!? 美少女を……全員喰う!?
俺達人狼のお約束、だとお!!
な、何だとぉ! ふざけるな! 赤頭巾ちゃんの狼か、お前は!
こんな奴にリゼット達を『色々な意味で喰われて』たまるか!
何か急に使命感が湧き上がって来た。
そうだ!
俺はクッカの言う通り……『ふるさと勇者』として村を守る為、
このような『悪』を倒すのだ!
「さあて、そろそろ死ねや、くそ餓鬼。ひよわな人間のお前など、俺の牙と爪であっという間に殺してやるぅ!」
ライカンは更に、牙をむき出しに。
鋭そうな爪が生えた手も「ひらひら」させた。
ふ~ん、それで俺を威嚇してるの?
しかし……こいつの実力は、もう完全に見切った気がする。
その証拠に、俺は全然、怖くない。
俺は相手を見ただけで、その実力を測れるみたい。
これもスキル、なのだろう。
「何言ってる、腐れ狼め。お前みたいな、ハーレムの真髄を理解しない奴こそ……死ね!」
「うがあああああっ! 餓鬼、てめえこそ、死ねや~っ!!!」
俺は牙をむいて飛び掛って来た人狼ライカンを避け、
黒い魔剣を振るって軽く一刀両断にしてやる。
「ははははは! そんなクソぬるい攻撃、ほいっと見切って、躱して、悪・即・斬!!!」
狙って、しゅ! と剣を振ったら、スパ~ンと音がし、
「ぎゃ~ん!!!」とライカンの断末魔の悲鳴が。
文字通り、瞬殺!
「どばばっ」と派手に血が飛び散ったので、俺は「さっ」と避けた。
まあ、哀れ……じゃ全然ないけど。
ライカンと呼ばれた人狼は、まっぷたつな『何とかの開き』状態になった。
「あああ、ラ、ライカン様があっさりやられたぞお!!」
「こ、この人間めぇ!! こ、殺せええ!! か、仇を討て! 畜生おお!!」
リーダーが簡単にやられ、慌てたライカンの配下共も変身して向かって来た。
なので、さっきと違い、手加減なし。
怒りを込めた拳を容赦なくぶちかましてやる。
どぐしゃ! ぐちゃ! がん! どっごお!
どぐしゃ! ぐちゃ! がん! どっごお!
リーダーがそんな程度の強さだから、その配下の力などたかが知れていた。
俺の拳の渾身の一撃に、ザコ人狼どもの顔は次々と、粉々に砕け散ったのだ。
こうして…… 俺は『ふるさと勇者』の初仕事として人狼どもを撃破!
ボヌール村を魔王軍襲来の危機? から救ったのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
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皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
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コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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