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第10話「惚れる美少女」

新連載です!

何卒宜しくお願い致します。


しばらく1日複数回の更新を行います。

どうぞ、お楽しみください。

ボヌール村へ入り、俺は結構感動した。


散々読み込んだラノベの中に出て来る、田舎の村の様子を、

中世西洋風の世界を改めてリアルに認識したから。


という事で、俺は、きょろきょろ周囲を見渡しながら、

ガストンにリゼットの自宅まで案内された。


到着したリゼットの自宅は、ボヌール村、村長宅だけあって、

村内をちらっと見た限り、住宅群の中では、大規模な家だ。


ガストンが一礼して去り、俺はその家で、

リゼットの両親であるブランシュ村長夫妻に会い、歓待を受けた。

 

クラシックな顔の彫りが深いイケメンタイプのお父さんはジョエル、

笑顔が素敵な美人のお母さんはフロランスと名乗る。


ふたりとも年齢は40歳過ぎくらい、

「にこにこ」していて、とても感じの良い人達だ。


俺がケン・ユウキだと名乗れば、

リゼットの両親からは「貴方は東方から来たのか?」と聞かれた。

 

ここで改めて、適当な理由をつけ、手鏡を借り、見て知った。


俺の顔は、管理神様の大?サービスなのか、

ほ~んの少しだけイケメンになっていて、正直、嬉しかったが、

前世同様に黒髪、黒い瞳の15歳くらいな少年だったのである。

 

ジョエルさん曰はく、この世界には東方にヤマトという国があるそうで、

そこの人間は殆どが黒髪、黒い瞳だそうだ。


とりあえず、俺はそこの出身ではないですと、やんわり否定したが、

あの管理神様が受け持ったこの西洋風異世界は、

何か、俺の前世と関わりがあるのかもしれない。


幸いというか、それ以上、ジョエルさんは俺の出自を追及しなかった。

愛娘の命の恩人に、気を(つか)ってくれたのかもしれない。


そして、ひと通り挨拶が終わり、

俺が改めて今回の経緯を話すと……


おふたりからは、「本当にありがとうございます。深く深く感謝致します!」と、

改めて厚く厚くお礼を述べられた。


リゼットも、俺の事を熱く熱く、たくさんいっぱい語り……

素晴らしいとか、凄く良い人とか、真面目で誠実とか、

ガンガン褒めちぎっていた。


その後は、何が起こったか?


食事が始まる前に、何と!

リゼットが、こっぴどく叱られたのである。

 

厳しく、リゼットが怒られる事で……


俺は今回、彼女が両親に無断で森へ薬草を取りに行った事、

そしてゴブどもに襲われてしまった事など、詳しい原因と経緯を知った。


実は、今回リゼットが薬草を取りに行ったのは、

病気でずっと寝込んでいる祖母の為であった。


正直に言えば、絶対に反対されるので、近場へ行くと偽り、

こっそり抜け出し行ったとの事。


病人の為、奥の部屋でお休み中、なので俺はお会い出来なかったが……


大好きなお婆ちゃんの為にこんな無理をするなんて……

やっぱり優しい女の子なんだ、リゼットって。


……と、第三者の俺は思ったが、

ジョエルさん、フロランスさんの怒りは凄まじかった。


元々この村の周囲は人間を捕食するゴブリンなどの魔物や、

通常の獣でも熊、狼なども多数生息するという。


その為、リゼットのような非力な女の子は、周囲の草原など近場はともかく、

単独で村外から遠方に出る事を固く禁じられていたらしい。


それを破って、無断であのような遠方の森へ行った事は、

絶対に許されないと厳しく叱られたのである。


確かにあの場、俺が居なければ……

ご両親が怒ったように、リゼットは今頃ゴブリンどもの『腹の中』である。

 

さすがに気丈なリゼットでも、叱られて「わんわん」泣いていた。


でも両親に叱られたから、だけではない。


孫のリゼットに万が一の事があったら臥せっている祖母は喜ぶのか? 

と両親に問われたからでもある。


散々、叱られた後……


泣きべそをかきながら、俺に「ぴったり」くっつくリゼットを見て、

両親は苦笑した。


父ジョエルさんが、俺に向かってにっこり笑う。


「ははは、ケン様は良い人なんですね」


「ええっと、俺が……良い人なのですか?」


「はい! 元々、ウチの娘は同世代の男の子が大の苦手で……子供の頃は、村内の男の子とはあまり遊びませんでしたし、今もあまり話しません」


へぇ、そうなんだ! 明るくて可愛いモテそうなこの子が?


俺とは普通に話していたし、全然そうは、見えないけどなぁ……


「だけど貴方の事を凄く褒めていて……その上、こんなに懐いてしまって、この始末。よほど好きなんですね」


にこにこするジョエルさん、そして母フロランスさん。


そんな両親の『突っ込み』を聞いて、

とても恥ずかしいらしく、リゼットは顔が真っ赤である。


「お父さん! お母さん! もうっ!」


顔をしかめ、抗議するリゼットに対して、

笑顔から一転、いきなり真面目な顔になったジョエルさん。


「ぴしり」と言う。


「だがな、リゼット。もしもケン様が非道な悪人だったら、お前は村へ帰って来れなかっただろう」


「う、うん!」


「騙されて、どこかへ連れて行かれて奴隷か、娼婦にされていたかもしれない。助けてくれたのが彼で本当に良かったな」


無言で「ぶるり」と震える愛娘を見て、頷いたジョエルさん。


次に、俺を真っすぐ見つめた。


「それで、ケン様はこれからどうなさるおつもりですか?」


さあ、いよいよここで本題だ。


俺は軽く息を吐くと、ゆっくりと話し出す。


「はい! リゼットさんには伝えましたが、俺はのんびりどこかで暮らしたいと思って遠くから旅をして来ました。宜しければ村の仕事をしてお役に立ちますから、この村のどこかに住まわせて頂きたいのですが」


俺の言葉を受けて、リゼットも追随する。


「お父さん! お母さん! 私からもお願いっ!」


どうだろうかと、思っていたが……

俺の希望に対し、ジョエルさんはあっさりと頷いた。


「ええ、ケン様。貴方は悪い人ではないし、礼儀正しい。私は全然構いませんよ。それにもし、こちらの条件を受けて頂けるのであれば……宜しければ、この家の隣に、ウチの別宅がありますので自由に使って下さい」


おお、これはラッキー。

村で住む家が確保出来そうだ。


「助かります、ありがたいお話です。それで条件って何ですか?」


「はい! 条件と言うのは形式だけですし、少し失礼なご提案なのですが、ケン様が我がブランシュ家の従士になる事です。そうすれば私の部下として、村民に対しての説明が付き、わずらわしさが無くなるのです」


成る程、ブランシュ家の従士になるのか……


従士とは簡単に言えば、使用人の事である。

いわゆる高位の相手に仕える者を指す。

 

ようは「村長である、ジョエルさんの部下になれ」という事だ。


「その代わり、村民に話を通して食住の手当てもしてやるぞ!」

というジョエルさんの意思表示であろう。

 

俺は少し考える。


……この村で静かに暮らして行けるのなら、従士だって全く問題は無い。

ただ、あまりにも奴隷チックな扱いならば真っ平御免である。


こんな時は、確認! それに尽きる。


一種の契約なんだからね。


「成る程! 従士ですか。それくらいであれば俺の方は問題ありません。命令には絶対服従の奴隷とかじゃなければ」


「え? 奴隷!? ははは、まさか! それに従士と言っても、貴方はいわば客分扱いですので、基本的には日々振る舞い自由となりますね」


おお、客分扱いで日々の振る舞い自由って?


つまり、気を遣って貰いつつ、

公序良俗に反しなければ自由に行動していいって事か。


それは、凄くありがたい。

でも、従士の仲間って居るのだろうか?

俺の先輩って事だよね?


ちょっと知りたいかも。


よし! 分からなかったら、やはりすぐ確認。


この村で根を張り、暮らすのならば、遠慮なんかしていられない。


「すみません。ちなみに、ジョエルさんの従士って、他に誰が居るのですか?」


「ほら! 例えばさっき貴方と一緒に来たガストン、そしてジャコブ。村の門番のふたりがそうですよ」


ああ、成る程!


リゼットにこのご両親と、あの男気溢れる真面目な門番のふたりとなら、

まずは上手くやれそうだ。


後は、他の村民達とも、じっくりコミュニケーションを取りつつ、

親交を深めて行けば良い。


そこまで考え、決めた!


俺はリゼットの父ジョエル村長へ、

了解の握手をするべく、右手を差し出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


このボヌール村は、大体、木造り、石造りを組み合わせた平屋オンリー。

2階がある家は、この村長宅以外、数軒しか無いらしい。


そういえば、来る途中、1軒だけ、とんでもなく大きな家があった。

ブランシュ家とは関係ない、数代前の村長の自宅との事だが、

大き過ぎて使い勝手が悪く、空き家となっているらしい。


他の家は、せいぜい屋根裏部屋があるくらいだそうだ。


その代わりというか、一間という家は余り無く、

殆どが、ふたりないし3人以上の家族が暮らしている、部屋数が多い家だという。


驚いたのは、床が土間ではなく板張りだという事。

俺が暮らしていた都会でも流行っていた、素朴なフローリングという趣きなのだ。


そしてジョエルさんの言う別宅というのは、

ブランシェ家の隣にある中規模な家屋であった。


リゼットが案内してくれて、内部を見せて貰う。


ええっと……

建ててから若干年月は経っているが、そんなに古いという雰囲気はない。


3つの部屋(居間、ベッド付き寝室、物置)と狭い厨房、

汲み取り式トイレが付いている。


家屋の仕様、汲み取りトイレは置いといても、

役場が用意し、俺が前世で住む筈だった故郷の家に近いかもしれない。 

 

但し、御多分に漏れず風呂は無い。


天然の温泉が無さそうなこの村は、村長を含め他の家も、

裏の井戸で水を汲んで身体を洗う習慣なのだそうだ。


この世界において個人用の風呂というのは、貴族や金持ちなど、

上流階級のみの特権というのが常識らしい。


王都などの都会、大きな町村には公衆浴場があるというが。

多分、中世西洋に存在したものに近い気がした。

パン屋が兼業で経営しているとか。


まあ俺が魔法でお湯を作れるかどうかだけど、

風呂に関しては少しずつ改善して行けば良いだろう。


ちなみに、リゼットは俺の案内にすっごく気合が入っていた。

 

暮らす上でいろいろ細かい事まで教えてくれ、

まるで嫁のようにかいがいしく、俺の世話をしてくれる。


加えて、別宅の設備の説明は勿論、

生活用品も率先して運び込んでくれているのだ。


俺は嬉しいし、とてもありがたいのだが……

もう夜も遅くなって来たし、果たして良いのだろうか?


それに……少し変だぞ?


何故か、リゼットが……

自分用らしい女物の服とか、生活用品とかも運んでいる。


これって、俺が「一緒に住む」とかリゼットへ言ったからだろうか?


「リゼット!」


ぴしりと、鋭い声が掛かる。


一緒に別宅の片付けをして貰っている、リゼットの母フロランスさんだ。

愛娘の行動を、母はしっかりチェックしていたらしい。


厳しい母の声に、リゼットは思わず直立不動のポーズを取る。


「は、はいっ!」


そんなリゼットを見て、

「きりっ」としていたフロランスさんは一転して、笑顔に。


愛娘へ、優しく話し掛ける。


「好きな人とは、ずっと一緒に居たい……お前の気持ちは、同じ女として、よ~く分かりますよ。でも今夜ケン様と一緒に過ごすのは、まだまだ早すぎます」


「お、お母さん……」


「それに、長旅で疲れていらっしゃるケン様には、今夜は、ゆっくりお休みして頂きましょう」


「は、はい……」


ああ、リゼットって、やっぱりいじらしいし、

そんなに俺の事を気に入ってくれたんだ。


思わず俺も、胸が熱くなる。


「今日はありがとう! リゼット! ……また、明日」


礼を言った俺の顔を見て、リゼットは「ふるふる」と首を横に振った。 


「とんでもないっ、私こそっ! 本当にありがとうございました! ではケン様、また明日の朝7時に伺います!」


「失礼致します、ケン様」


こうして……リゼット母娘はお辞儀をすると、

ブランシェ家別宅=俺の自宅から引き上げて行った。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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