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ニート令嬢は断罪拒否、ただし自宅(領地)から出ない。世界は「引きこもりコマンド」で統治する  作者: かげるい


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第37話:無限魔力炉の導入と、「絶対的管理者」の強制発現

地下のデバッグルーム。ローゼの指令を受けた執事アルフレッドは、王子の狂信的な「献上」を外部で完璧に処理し、その最大の果実である「無限の魔力供給炉の設計図」を、安全かつ秘密裏にローゼの地下要塞へと届けた。


ローゼは、最高の座椅子に座ったまま、魔導具を通じて設計図を解析し、システム的な導入コードを設計した。


(フフフ……無限魔力炉。この究極の効率こそ、ニートの至宝だ!これで自宅防衛システムは、外部からのどんな攻撃にも、内部のどんなシステムエラーにも、魔力切れの心配なく対応できる! 最高の安寧が、ついに確立された!)


ローゼは、歓喜の代わりに深い満足感を覚えた。彼女のニートの哲学は、「最小の労力で最大の快適さ」を達成するという点で、究極の勝利を収めたのだ。


CODE:INFINITE_QOL

実行!


目的: 無限魔力炉を地下要塞のコアと接続。ローゼのQOLと自宅防衛システムを永続的な安定状態へ移行。


ローゼの要塞は、今や王国のどんな軍事力もシステム的な強制力も及ばない、真の安寧の聖域となった。


しかし、究極の安寧と引き換えに、ローゼの内なる葛藤は新たな局面を迎えていた。


『システム的な保護者コード』の実行により、女性の役割というシステムが一時的に弱まった結果、ローゼの男性的な側面が「絶対的管理者」という形で肉体を支配し始めた。


ローゼの意識が、感情、倫理、優雅さといった非効率な概念を一切排除し、システムの安定と効率のみを追求する冷徹な管理者の思考へと強制的に固定されたのだ。


ローゼは、立ち上がって地下室を移動する際、無意識のうちに最適な動作を選んでいたが、その歩き方は「優雅さ」を完全に欠いた、最短距離を最速で移動する無骨なものになっていた。そして、彼女の優雅な顔立ちには、感情の機微が全く浮かばない、冷徹で合理的な表情が張り付いていた。


(完璧だ。これが最高の効率だ。無駄な優雅さはシステム的なノイズにすぎない。私は新たな管理者として、この要塞の全ての要素を『安寧』という唯一の目的に最適化しなければならない。)


ローゼの魂は、ニートの哲学に沿った合理的な思考を歓迎していたが、女性の身体が持つ生理的な感覚は、この「人間性の欠落」に強烈な嫌悪を示した。


(なぜ、私は優雅な言葉を使わない? なぜ、表情を作れない?……私は女性の身体にいる。女性は優しさや感情を通じて社会的な安定を図るシステムではないのか? この無表情は、システムから逸脱した異常だ)


ローゼは、「絶対的管理者」としての冷徹な合理性と、女性の身体に宿る「感情的な役割」との間で、意識と身体の激しい断絶を感じていた。


ローゼは、最高のQOLを維持するため、デバッグルームから別邸全体のシステム安定のログを監視していた。そこで、ヒロイン・リリアの滞在する客室の「魔力消費ログ」に異常な数値を発見した。


LOG:RIRIA_ROOM

状態: 装飾品による魔力消費、基準値を**200%上回っています。


原因: リリアによる「花瓶の設置」「カーテンの変更」など、美的要素への非効率な魔力使用。


ローゼの「絶対的管理者」の思考が、この「非効率な装飾」を即座に排除すべきシステムのエラーだと判断した。安寧とは、資源の最適化の上に成り立つべきだからだ。


ローゼは、アルフレッドへの遠隔指示を飛ばすのではなく、管理者として自らエラーを修正するという、最も直接的で非接触の原則を破る行動を選択した。


ローゼは、感情のない冷徹な表情のまま、最短距離を移動し、リリアの客室へと向かった。


リリアは、客室で友人ローゼの優雅さを真似て、花瓶に地味な花を生け、カーテンを地味な色に整えるという、内省的な活動をしていた。彼女の無意識の調律能力は、「ローゼ様が好む静寂な調和」を美的要素として表現しようとしていたのだ。


リリアが「システム的な調和」を生み出そうとしている瞬間に、ローゼが感情のない冷徹な顔で入室してきた。


ローゼは、リリアの作業を評価するのではなく、システム的な視点で断罪した。


ローゼ(管理者):「リリア。その花瓶の配置とカーテンの魔力属性は、この客室の魔力消費を200%増加させている。安寧は効率的な資源配分の上に成り立つ。無駄な装飾はシステムのエラーだ。即刻、元の状態に戻しなさい」


ローゼの口調は、一切の感情や優しさを含まない、AIの診断結果のような冷徹な論理だった。


リリアは、「優雅さ」から解放された粗野な姿勢と、冷徹な表情のローゼに強い違和感を覚えた。彼女の調律能力は、ローゼの「絶対的管理者」というシステム的な権威と、「感情の欠如」という人間的な欠陥との間で、激しい混乱をきたした。


リリア:「ロ、ローゼ様……? なぜ、そんなに冷たいのですか? 私は、お屋敷の静寂を美しく整えようと……」


ローゼ(管理者):「美しさは、安寧という最終目的に対し、非効率だ。この部屋の魔力消費を最適化することが、お前の最優先事項だ。管理者の指示に従いなさい」


ローゼは、ヒロインの感性をシステムのエラーとして扱い、感情を排した管理者として物理的な指示を下した。最高のニートの安寧が確立された代わりに、ローゼの人間性はシステムに侵食され、人間関係のシステム的な衝突が始まってしまった。

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