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ニート令嬢は断罪拒否、ただし自宅(領地)から出ない。世界は「引きこもりコマンド」で統治する  作者: かげるい


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第28話:自己嫌悪によるシステムの鎮静と、ヒロインの接近

ローゼは、スパークが飛び散る通信魔導具に最後のコードを入力した。それは、彼女自身の羞恥心、怒り、そしてTSとしての自己否定という負の感情を、システム全体の鎮静化エネルギーとして利用する究極の自己防衛コードだった。


CODE:NIHILIST_STASIS

実行!


目的: 自身の感情エネルギーを『無関心』『無感動』へと強制変換し、システム暴走を鎮静化させる。


コードが起動した瞬間、ローゼの身体を駆け巡っていた感情の奔流が一気に凍り付いた。ローゼは極度の虚無感に包まれたが、その代償として、別邸全体のシステムが急速に安定を取り戻した。


地下デバッグルーム: スパークが収まり、機能停止の危機を脱する。


別邸全体: 「愛の波動」の影響下で暴走していたアルフレッドは、システム鎮静化と共に過剰な忠誠心が極度の静寂へと変わり、硬直状態に陥った。


(ふぅ。何とか鎮静化に成功した。感情という最も面倒で非合理的なものを、最も合理的なニートの自己否定で制した……。この屈辱を忘れるな、私!)


ローゼは、座椅子に深々と沈み込み、再びニートの安寧を手に入れた。しかし、彼女の身体は極度の疲労と虚無感で満たされていた。


システム暴走の鎮静化により、AI_MANAGERの強制介入は阻止された。しかし、暴走の直前、能力を進化させたヒロイン・リリアは、決定的な情報を掴んでいた。


リリアの無意識の調律能力は、暴走するエネルギーの中心が、別邸の地下深くにあることをシステム的に解析していた。鎮静化後も、リリアのログは、地下への強い関心を示していた。


LOG:RIRIA_001

認識: 暴走の原因は地下の魔力発生源にある。


状態: 地下の「ノイズ(魔力)」を意図的に探知しようと試みています。


リリアは、もはや無意識ではなく、「この屋敷の平和を取り戻す」というヒロインとしての使命感から、地下のノイズローゼに意図的に接近し始めたのだ。


ローゼの通信魔導具に、地下へと続く階段を降りてくるリリアの足音のログが、徐々に大きく表示された。

最高の座椅子に座ったまま、地下室の扉へ視線を向けた。


(嘘だろ。なぜ、意図的に! 奴は単なるシステムの駒ではなかったのか? ヒロインの行動が、システムのエラーを無視して「自発的」に動いている!?)


ローゼの最大の戦略は、「ヒロインとの物理的非接触」による断罪イベントの回避だった。その絶対防衛ラインが、リリアの自発的な行動によって破られようとしていた。


リリアの足音は、ローゼのデバッグルームの扉の前で止まった。


LOG:RIRIA_001

状態: ノイズの中心に到達。


ローゼの地下室は、通常の鍵と魔力認証の二重ロックが施されている。しかし、リリアの持つ無意識の調律能力は、システムの歪みを無効化する。ローゼの鍵や認証システムは、リリアにとって「システム上のノイズ」に過ぎない。


ローゼは、通信魔導具に必死でリリアの能力を無効化するコードを打ち込もうとしたが、疲労困憊の体では指先が震える。


その時、扉のロックが微かな音を立てて解除された。


扉がゆっくりと開き、光がローゼの最高の引きこもり要塞に差し込んだ。


そこに立っていたのは、素朴なドレスを着た、優しげな表情のヒロイン、リリア・エバーグリーンだった。彼女は、システムのエラー源であるローゼを見て、警戒ではなく、安堵の表情を浮かべた。


「あ、あなたが…! お屋敷の変な音の原因は、あなただったんですね。大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」


ローゼは、リリアの無垢な目を見て、心臓が凍り付くのを感じた。


ローゼ・クリスタル・アストライアと、ヒロイン・リリア・エバーグリーン。悪役令嬢とヒロインの初対面という断罪イベントの最重要フラグが、ローゼの引きこもり要塞という、最も予測不能な場所で立ってしまった。回避してきた断罪へのストーリーは少しずつだが進んでいた。

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