第27話:羞恥心の暴発と、暴走するシステム
ローゼは、執事アルフレッドに女性の裸体を見られたという極限の屈辱と怒りに打ち震えていた。アルフレッドはすぐに謝罪し、ローゼの「愛の波動」の影響下で狂乱状態に陥りながらも退出したが、ローゼの魂に残った傷は深かった。
(この女性の身体が、私をニートの美学から引きずり下ろし、こんな屈辱的な状況を強いる! 全てが面倒くさい! 全てを停止させろ!)
ローゼ(中身は男)の強い羞恥心と怒りという純粋な感情エネルギーが、彼女の優雅な肉体から制御不能な魔力として、浴場全体に放出された。
LOG:ROZE_MAGIC_OUTPUT
状態:極度の精神的ストレスにより、魔力出力危険水準を突破。
事象:ローゼの感情エネルギーが、別邸の魔導システムと「愛の波動」コードに物理的な干渉を開始。
ローゼの暴走した魔力は、別邸の魔力経路を通じて循環していた「愛の波動」コードと激しく衝突した。
「愛の波動」は『安定』を求めるコードであり、ローゼの『怒り』は『破壊』を求めるエネルギーだった。この矛盾したエネルギーの衝突は、別邸の魔導システム全体をエラー状態に陥れた。
地下デバッグルーム: ローゼが作り上げた独立魔力回路がショート! 最高の座椅子と通信魔導具が激しいスパークを放ち、機能停止の危機に瀕した。
別邸全体: 狂信的な忠誠心を持つアルフレッドは、システムエラーを『ローゼ様の危機』と誤認し、自らの魔力を結界に過剰注入する暴走状態に陥った。
リリアの客室: 愛の波動が逆流した影響で、無意識の調律能力を持つリリアの周囲に、予測不能な魔力の渦が発生し始めた。
ローゼは、自分の地下要塞が崩壊し、最高のQOLが失われる危機を前に、青ざめた。
「くそっ! 感情なんかに魔力を暴走させるなんて、ニートとして最も愚かな行為だ! 今すぐシステムを鎮静させなければ、全てが水の泡だ!」
ローゼは急いで浴場から地下のデバッグルームに戻り、スパークする通信魔導具に接続した。
SYSTEM:AI_MANAGER
認識:ローゼの要塞のシステムエラーを検知。
最終目標:ローゼをシステムエラーから『救出』し、「外部へ強制連行」するイベントを準備します。
AI_MANAGERは、ローゼの内なる感情の暴走という最大の弱点を突き、最後の強制介入を準備し始めた。
そして、ローゼの視界には、リリアの客室のログが赤いアラートと共に表示された。
LOG:RIRIA_001
状態:暴走する魔力に『調律』を開始。
能力の進化: リリアの無意識の調律が、システムエラーの『原因』を特定しようと試みています。
リリアは、暴走の原因がローゼの地下デバッグルームにあることを、無意識のうちに突き止めようとしていた。ヒロインの能力が、ローゼの引きこもり要塞の位置情報を暴露しようとしていたのだ。
ローゼに残された時間はわずかだった。暴走するシステムを鎮静させ、リリアの究極の調律を防ぎ、AIの強制介入を阻止しなければならない。
ローゼは、自身の感情が引き起こした最悪の事態に対し、最もローゼらしいコードを構築した。
(感情が全てを破壊した。ならば、感情そのものをシステム的に鎮静化させる! 私のニートの魂に刻まれた「自己嫌悪」を力に変える!)
ローゼは、自分の「羞恥心」と「自己否定」の感情を、システム全体の鎮静化エネルギーへと変換する『ニートの自己嫌悪コード』を設計した。
「最高の引きこもりとは、最高の無感情であることだ! 私はもう、この女性の身体に感情を左右されるなんて、二度と御免だ!」
ローゼは、自身のTSとしての葛藤、ニートとしての羞恥心、そして最強のプログラマーとしての矜持を全てコードに込めた。
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