表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニート令嬢は断罪拒否、ただし自宅(領地)から出ない。世界は「引きこもりコマンド」で統治する  作者: かげるい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/41

第10話:王子の進軍と、ローゼの「時間稼ぎ」トラップ

ローゼからの遠隔拒否にプライドを傷つけられた第一王子アランは、管理者AIの『強制補正』により、ローゼへの関心を「支配すべき異端」という名の執着へと歪ませていた。


「ローゼは、王子の正義の役割を否定した。彼女を連れ戻すことこそが、王としての使命だ!」


王子は騎士団を率いて、ローゼの領地へ再び向かうことを決意する。王都ムーンブルックの城門。馬車に乗り込む王子アランの傍らには、彼の直属の部下であるカイル・ブライトが控えていた。カイルはローゼの領地の異常を調査するために派遣された真面目な騎士だが、ローゼの事情を全く知らない。


「殿下、アストライア領は辺境でございます。高速走行用の魔導陣をお使いになるのが賢明かと……」


カイルは真面目に進言するが、王子は苛立ちを隠せない。


「黙れ、カイル。あの令嬢は、普通の手段では屈しない。速さではない、王家の執念を見せるのだ!」


皮肉にも、彼が選んだ「王家の威厳を示すルート」こそが、ローゼが地下のデバッグルームから仕掛けた「時間稼ぎトラップ」の標的だった。


ローゼは地下のデバッグルームで王子の出発を【LOG・READER】で確認すると、魔力通信機に手をかざした。


CODE:TRAVEL_DELAYER

最終実行。対象エリア:王都~アストライア領間の特定街道。


ローゼの領地外に、目に見えない微細な魔力バリアが展開された。それは、ローゼの領地の結界から漏れ出す「捨てられた魔力」を再利用した、極端に効率の悪い魔力吸収フィールドである。


アラン王子の馬車は、高価な魔導具加速陣を搭載していたが、フィールドに入った途端、馬車を引く魔力馬が急に疲労を見せ始めた。


「魔導具の出力が安定しない! 殿下、速度が平時の半分以下になっています!」御者が焦って報告する。


王子は苛立ちを募らせる。ローゼのトラップは、物理的な損傷を与えるのではなく、ただひたすらに「移動という行為の面倒くささ」を増幅させるものだった。ローゼにとって、王子の労力を無駄にすることこそが、最高の防御だった。


ローゼは、地下室で王子の移動ログを監視しつつ、【LOG・READER】の通知に目を留めた。王子の同行者であるカイル・ブライトに関するログだ。


LOG:KYLE_001

端末カイル・ブライト。状態:システムの矛盾に困惑。


CODE:INNATE_MEMORY_SEED

実行待機中。


AI_MANAGER

意図:ローゼ・クリスタル・アストライアに対する共通の私的記憶を強制的に植え付け、ローゼの心を開かせるよう試行する。


「なんだこれ? 見知らぬ騎士に、『共通の私的記憶』を植え付けるだと?」


ローゼは驚愕した。彼女はカイルが何者か知らないが、「私的記憶」という言葉が意味するものは理解できる。それは、小森拓海としての個人的な過去が、女性の身体となったローゼと結びつけられ、部外者に暴露される可能性を示唆していた。


(AI_MANAGERは、私に接触する手段として、この騎士を利用しようとしている。私が最も隠したい『男の魂を持つニート』という事実を、この騎士に知られ、私の外聞を崩壊させるつもりか!)


ローゼは個人的な怒りを感じた。「許さない。私のニートの黒歴史を掘り返そうとするなんて、絶対に阻止する!」


ローゼはすぐにカイルのログへ干渉する計画を立てた。カイルはまだ領地に到達していないため、ローゼは遠隔からのコード干渉が可能だ。


ローゼが考案したのは、「記憶の内容を書き換える」という、ニートらしい最小労力の偽装工作だ。


ローゼは、AI_MANAGERがカイルに植え付けようとしている「共通の私的記憶」を、「ローゼの過去とは無関係な、ゲームの裏技の記憶」へとすり替えるコードを構築した。ローゼの肉体が女性である今、「男としての過去」は、「ゲームの知識」として上書きされるのが最も安全だった。


ローゼの瞳には、世界の管理者が仕掛けるあらゆる「面倒ごと」を、徹底的にリモートで排除するという、強い決意が宿っていた。

読んでくれた皆さん、ありがとうございます! 感想やブックマークや評価も良かったらお願いします!作者のモチベーションがUPします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ