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39 ビーナスは、微笑むか

【金星周回軌道投入 みんなの地球連邦 試験練習船 J―NAS ブリッジ オペレーションAI ボギー】



「>_間もなく、ターゲットが金星重力圏に接近。スイングバイを予定通り実施しています_」





【同 中央メインデッキ トゥラン整備棟】



「>_MAIN PWR-BATT ON

 >_INS ON

 >_EXT PWR OFF

 >_APU START」


(メインパワーバッテリーオン、自立航法装置作動、外部電源切断、補助電源スタート)





[管制 ボギー]


「>_ミケア様、金星の重力に引き込まれないようにご注意ください_」


「>_バックアップのランドブースターはイグニッションスタート後、アイドリングでのスタンバイです。_」




「>_HYD SET

 >_OIL PRESSURE RISING」


(油圧システムセット、油圧上昇)




 ボギーは以後の起動プロセスをトゥラン引き継ぐ。



[TORUN]

「>_HELLO. THIS IS TORUN. _」


 (こちらトゥラン)




[管制 ボギー]

「>_EXAMINE DATA LINK , CHECK_」


 (データリンク、確認)



[TORUN]

「>_MAIN TRANS ENGINE

 NO.1.2 ON.

 NO.3.4 OFF.

 NO.5.6.7.8 ON

 LANDBOOSTER IGNITION START、STANDBY

 APU SHUTDOWN_」


  (メインエンジン、NO.1.2 オン、 NO.3.4 オフ、NO.5.6.7.8 オン ランドブースター、イグニッションスタート、スタンバイ APUシャットダウン)




[管制 ボギー]

「>_CONFILMED TORUN. INSTRUMENT RECORDER ON_」


  (トゥランの起動状況確認。フライトレコーダー、オン)





[TORUN]

「>_REQUEST STANDBY_」


  (待機状態まで誘導願う)



 ゆっくり台座を進める。

 やがて台座をカタパルト状態へ移行、発進準備が整う。


 トゥランが突然動き出す。カタパルト上で、前傾して発艦姿勢。


 電磁カタパルトから、なんとも言えない振動が徐々に大きくなっていく。




[管制 ボギー]

「>_PERMISSION GRANTED. GOODLUCK TORUN!_」

  (発艦を許可する。トゥランの武運を)




「!<ポーン>」


 合図と共に、電磁カタパルトによって、宇宙空間へ巨体が押し出されていく。




 今回の任務は太陽探査機の護衛ではあるが、周囲の警戒だけに留め、金星重力圏を離脱した段階で任務完了、のはずだった。



「>_間もなく、ターゲットが金星重力圏に接近。スイングバイを予定通り実施しています_」




【同 人型支援機トゥラン コクピット】


 念のため、今回は耐圧耐熱、耐高重力下での装備一式で作戦に挑んでいる。


 万が一金星の重力に引き込まれても、オプションで装備したランドブースターで離脱が可能。


 金星と地球を比較した場合、重力は地球とさほど変わらない。


 トゥランは、自力での地球大気圏離脱能力がないため、当然、金星の重力にも単体では抵抗出来ない。




 「>_間もなく、ターゲットが金星重力圏に近接位置通過。スイングバイ継続中です。_」



 ミケアは、周囲のセンサーに目を配る。

 太陽に近いため、可視光線の減光調整を施しているものの、ここからでも地球よりは大きな太陽を眺めることが出来る。



 太陽の黒点もはっきりと見えるため、なんとなく観察していた。

 トゥランは耐熱シールドを太陽に向けて、待機していた。




【月裏側 母艦オウムアムア ファンド系投資顧問星系探査艦 指揮官ブリッジ 参謀】


「子会社の母船と支援機の位置を」


 参謀の指示により、オペレーターは正面モニターへ、自身艦隊の位置と子会社の位置を映し出す。


 「まもなく、太陽がここから見えてきます。そのタイミングで、太陽正面に向かって主砲発射。

 子会社へ射線からの避難と、到着予定時間の連絡お願いします」


 オペレーターは、各種センサーを見回す。


「えっと、太陽に打つんですか? 何も見えませんが・・・」


 参謀は、未確認の機影が見えないモニターを見ながらうなずく。


「ええ、主砲発射です。」




【金星周回軌道 みんなの地球連邦 試験練習船 J―NAS ブリッジ オペレーター】


「親会社より緊急! 本艦はこれより太陽に向けて主砲を超長距離砲撃を15秒間開始。金星周回軌道通過まで13分を予定。射線上に入るな、とのことです!」



 船長は、モニター上の、月軌道から金星への超長距離発射の射線を眺める。


 とりあえず、現状、自分たちよりかなり離れた距離を通過する予想なので、さほど心配はしていない。



「ミケア、聞いたか。今さっき、親会社が太陽へ主砲を発射した。光の速さで金星通過は13分後だ」



「何か、親会社は見つけたの?」


「さてな? うちのセンサーには反応は無い。ボギー!」


「現状、本船は、確認しておりません」




 待つこと、およそ13分後に、横方向に光の筋が太陽に向かって何本も飛んでいくのが見えた。


 流れていく光の筋は、やがて太陽に向かって消えていく。




【同 人型支援機トゥラン コクピット】


「ん?」


 光が太陽へ吸い込まれていく先の小さな黒点が動いたように見えた。




「・・・いや、黒点と違うぞ」





【金星周回軌道投入 みんなの地球連邦 試験練習船 J―NAS ブリッジ 船長】


「主砲展開! 最高出力で同方向に10秒斉射。撃て!」




【同 人型支援機トゥラン コクピット】



 ミケアが太陽の黒点と認識していたのは、逆光シルエットに映った未確認機影だった。

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