28 届く想い、届かない警告
【間もなく火星軌道 みんなの地球連邦 試験練習船 J―NAS ブリッジ】
「全チャンネル、全主要言語で警告発信! 我々に敵対する意思は無い」
「警告発信。応答ありません!」
「ボギー、索敵しろ。詳細な座標は掴めたか?」
「>_被弾角度から、発射位置を特定済み。主砲合わせます_」
【実戦用実剣を背面装備 支援探査機 トゥラン】
「ミケア、親会社の艦載機到着まで、前に出るなよ。撃破する必要は無い。追い返せ」
「いんヤ! 前回の恨みもどえりゃああるでよ! 借りたら返せって、親に言われてるもんだで! まーァ叱ったらなかんがや!」
鼻息の荒くなったミケアを、半ば諦めで船長は言葉を繋げた。
「結局、冷静なの、俺だけか⋯」
『!<警告音>_』
突然、聞き慣れない警告音がコクピットに響く。
モニターに後方からの射線から離れるように警告が出た。
トゥランのスラスターが作動。
しばらくすると、後方から実弾のミサイルが凄いスピードで飛んで行った。
「>_該当機、回避行動に入りました_」
先に発射されたミサイルは執拗に追い回している。誘導弾らしい。
【みんなの地球連邦 試験練習船 J―NAS ブリッジ】
「あ〜あ、打ってやんの。こっちが丁寧に対応してるのに⋯⋯もぉ」
【トゥラン、現在手ぶら】
「>_ミケア様、親会社の艦載機と合流が可能です_」
「トゥラン、受け取るよ! ボギー!」
「>_艦載機と速度合わせます⋯⋯
⋯⋯3、2、1、コンタクト。
装備、掴みました_」
艦載機の腹部に下げた装備に手が届く。
「>_艦載機から装備切り離し確認。
スラスター全開、艦載機から離脱します_」
ミケアは、鼻息が荒かった。
「よしわかった! 今からちょっと説教してくるわ!」
『!<ゴォーー!>』
遠くで光るのを目撃。誘導弾が近接爆破したらしい。
【トゥラン、携行パワーランチャー装備】
「よし、どんなもんか見てみよう! ボギー!」
「>_装備とリンク完了。照準ロック。いつでもどうぞ_」
「ポチッとな♪」
『!<ゴギューーーン!>』
⋯⋯⋯。
「お!⋯⋯おお!」
おそらくはなかなかの強度を持つ武器には思えた。
⋯⋯少し引いた。
「>_該当機、高速で離脱します_」
船長が割って入る。
「追うな。追うなよ! 追うなっつってんの! フリじゃねーって!」
【臨時ニュース】
朝の生ワイド番組の上部に、チャイムとテロップが流された。
『民間の日本初の有人宇宙航行船、火星軌道付近で未確認体と交戦中』
【お昼のニュース】
防衛省記者会見
「JAXAからの報告をお伝えします。
本日、日本時間でヒトヒト、マルキュウ、民間所属の機体が、未確認の不審宇宙船と交戦。
ヒトフタ、ヨンマル、該船、逃走」
【日本市場後場 マーケットプレイス】
「証券コード、222B、みんなの地球連邦、後場に一気にプラス転換です。
未確認の潜在抵抗勢力に対して、排他能力の実証が評価されている模様です」
【株式SNS】
「みん地、プラ転!」
「売り豚全員ミンチ」
「待たせたな!(デデン!)」
「落ちろ落ちろ落ちろ!」
【月裏側 母艦オウムアムア ファンド系投資顧問星系探査艦 ブリッジ オペレーター】
「子会社、艦載機と接触。
支援機、武装回収完了と使用を確認」
「どうなった?」
マネージャーがニコニコ顔で、ストラテジストにウインクする。
「追い払えたようですね。よくてよ♪」
「⋯⋯」
マネージャーのウインクに固まるストラテジストに、別のオペレーターが報告を入れる。
「艦載機、支援機、共に、母船に収容したようです」
「うむ、一段落か」
しかし、ストラテジストは浮かない表情をしている。
「そうか、おそらく⋯⋯」
「どうか?」
「参謀、奴らは、原住民のマーケットが開く時間しか、仕掛けて来ないと思われる」
「⋯⋯さて、お聞かせ頂いても?」
「やはり奴らの目的が、我々の排除ではなく、株価操作が目的だからだ。
わざわざ威嚇発砲してから、バリア展開まで待つ御人好しがいるか。
バリアを待ってから直撃させれるなら、最初から直撃出来たろうに」
参謀は、目を閉じて考える。
「ですが、費用対効果として、いかがでしょうか?」
ストラテジストは、腕を組む。
「抵抗が排除されたように一芝居打ってたらどうする? わざとだ。
その度に、子会社の株価は上がって、融資が融資を呼んで、
さらに上げきったところで大量の売り仕掛けを浴びせて、一転して株価を強引に下げに来る⋯⋯とかな」
「その辺は、ストラテジストやマネージャーの方のほうが詳しいかと。
しかしながら⋯⋯」
「⋯⋯?」
「そんな大胆な作戦をするなら⋯⋯
にしては、動かす資金量が少ないかと愚考いたしますが、さて⋯⋯」
「決めつけは出来んが」
評価感謝です




