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21/42

21 サプライズの歓迎

【日本時間11時 東京市場前場】


 映像でダイレクトに、様子をリアルタイムでネット配信して、投資家を刺激しようという試みだ。


 そのため、今回の撮影は日本市場が開く前場に合わせた時間に設定した。




【同時刻 支援機トゥラン、コックピット】


 用意された台本を見ながら、トゥランの展示行動を始めた。


 単純に見映え良く式典用装備での活動となった。

 背中にトゲも何本か生やしたが、まったく意味は無い。

 正直、邪魔だ。


 当初のアニメ制作会社でラフで描かれたコンセプトデザインが元になっている。


 いわゆる、フルアーマー状態である。両手には、重火器のライフルを持たせているが、弾は光る空砲だ。

 背中には、これまた重火器のキャノン砲やプロペラントタンクを接続されているが、そのように見えるだけの、ペラペラの中身は空っぽだ。


 格納されている背中のアレスティングフックには、パイロンを介して実剣が装備され、使用の際にはアレスティングフックを展開。背中から肩越しに取り出すギミックだ。

 実際は、剣の形をした鋼材の板に過ぎない。


 地球では初めてのトゥランと母船の映像公開だったため、視聴回数はどんどん上がり、連れて、株価も上昇していた。




 だが、順調だった配信はドローンカメラ撮影中に、ある突然のトラブルで一転する。


 配信画面奥に映り込んだ試験練習船、J―NASが何かに被弾する場面が動画に撮影された。


 『爆発?』『光った?』『俺の頭見るな』と書き込みが一斉にチャット欄を埋め尽くしていった。


 最初の発光から数秒後、再度光った様子を配信カメラは捉えた。




【みんなの地球連邦株式会社所属 試験練習船 J―NAS ブリッジ オペレーションシステムAI ボギー】


『!<警告音>_』

「>_未確認エネルギー命中。機体外装の損傷軽微。バリア展開_」


 船内にでは、装甲外部に急な圧力変化と温度上昇に警報が鳴り響く。

「>_ステルス機体と推定。レーダー捕捉不能_」


 船長が急いでブリッジに戻る。

「隕石の類ではないのか?」


 オペレーターがすぐに調べる。

「表面温度から、人工的なエネルギーです。

 最初の数発は、装甲付近の圧力変化から何らかの実弾。

 以降は、急激な温度上昇から光学兵器と推定されます」



「バリア解除。最小出力で主砲展開。被弾方向から発射位置割り出し。威嚇だ。方向だけ向ければいい。主砲発射!

 トゥランを射線から回避させろ」


 複数のレーザーが号砲を上げる。

 発砲したうちの一発が、遠方で淡い光を発光したのを確認した。




【月裏側 母艦オウムアムア ファンド系投資顧問星系探査艦 ブリッジ オペレーター】


「子会社の母船が攻撃を受けています」

「攻撃だと!?」


 この星域には、ライバル会社はいないはずだし、いたとして、宣戦布告無しに仕掛けてくるのは、紳士協定違反だ。


 おそらく、申請記録を覗いた他社のうちのひとつだとは思ったが、わざわざこんな田舎に仕掛けてくるのは、経済論理からは考えられなかった。


 利潤追及を絶対とするのなら、たとえここで交戦状態になったとしたら、決して被害がゼロにはならない。

 ここの星域の価値を、足し算引き算してどれほどのメリットがあるのか。


「被害状況報告を報告させろ」




【地球重力圏離脱航行中 試験練習船 J―NAS ブリッジ】


「被害状況は!?」

 船長の問いにオペレーターが一通りの被害状況を調べるが、


「⋯⋯とくに被害は無いようです」


「? ⋯⋯ボギー、進路に異常は?」

「>_航行に異常は見られません。船体の姿勢に乱れは確認出来ません_」


 船長には、この攻撃が攻撃になっていないとして、相手の意志を計りかねていた。


「攻撃でない⋯⋯」




【月裏側 母艦オウムアムア ファンド系投資顧問星系探査艦 ブリッジ オペレーター】


「攻撃は、照明弾、もしくは信号弾の類いだと思われます」


「照明弾? ⋯⋯明るくして、どうするんだ? 目視戦闘しているわけではないぞ」


 宇宙空間レベルでよほどの近接戦闘以外は、目視攻撃はしない。

 しようとしても遠すぎて見えないので、レーダーやセンサー任せで済ませることがほとんどだ。


 ゆえに、時間がかかり、相手に回避行動をする時間を与えてしまう。

 結局は、徐々に距離を詰めて、最終的には目視戦になることはある。




【地球重力圏離脱航行中 試験練習船 J―NAS ブリッジ】


 船長がモニターやセンサーを見ながら、オペレーターに問いかける。

「正体不明機は、見つかったか!?」

「⋯⋯あれ? え~っと⋯⋯」


 ボギーが代わりに答える。

「>_おおよその方向と距離を計算出来ますが、今現在、正体不明機は確認出来ません。

 ステルスタイプか、レーダーレンジ外に出たか、隕石や小惑星の影に隠れたと思われます」


「そうか⋯⋯」






『!<ゴォォーーーン!>』

「わあああああ!!」


 突然ミケアの悲鳴。

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