19 見えない敵 見える嘘
【日間賀島 西港 フェリーターミナル オペレーター】
「ミケアさ~ん、こっちで~す! 締めて血抜きしてありますよ」
?
ともかく、氷と魚いっぱいの発砲スチロールクーラーをタクシー兼大気圏連絡艇に詰め込む。
人がいるので、建物の影に移動してから、上昇を始めた。
「ボギー、いる?」
「>_はい、ミケア様。お久しぶりです_」
「上がったから、誘導頼むわね」
「>_お任せ下さい_」
【現地タクシー】
めいほうハムを使った美味しいハムカツのお店をやっと出た。
二人は、満足だった。
【衛星軌道上 みんなの地球連邦株式会社所属 試験練習船J―NAS 中央メインデッキ オペレーションAI ボギー】
日間賀島西港から戻ってきた大気圏往復連絡艇タクシーは、J―NAS 中央メインデッキへ着艇した。
与圧扉が締まり、エアー確認が終わってから、連絡艇タクシーのドアを開ける。
「>_おかえりなさいませ、ミケア様。
さっそくですが、先にお魚を冷蔵庫に入れるのがよろしいかと_」
【名古屋証券取引所】
「なんだと? 名古屋証券取引所? ここじゃないのか!
私は東京証券取引所に用があるのだが」
【東海道新幹線 名古屋発東京行】
「笑ってもらえるのは、芸人の本望だろ?」
「部長⋯⋯」
「その昨日のラジオ、俺にも聞かせてよ」
「はい! 昨日の⋯⋯」
通路側反対のサラリーマンだろうか。芸人になりたい部下を部長が励ましているようだ。
『ただいま三河安城駅を時刻通りに通過しました』
「マネージャー!」
「はい?」
「小型挺を手配して、弾丸軌道のほうが早かったのでは?」
「地球の文明を理解する必要があります」
マネージャーは、久しぶりの遠足で張り切っていた。
「ここでは、地球一硬い物質で作られたアイスクリームがあったとか。終わっていたのは、失念でした」
「地球最高硬度は、あずきバーだ。マネージャー、旅行に来たわけではないぞ」
「承知してます」
ストラテジストは、マネージャーが見ていた本を取り上げた。
「なんだ、この『るるふ東京』というのは?」
「寄れたら、TDL行きますか?」
「⋯⋯マネージャー。言いにくいが、TDLは東京ではない」
【金融庁証券取引等監視委員会 事務局】
「金融庁長官を呼べ。話をつけに来た。上から来たと言えばわかる」
長官は不在とする押し問答の末、担当官僚に問い詰める。
「これだけのボラで自由に株価を動かされて、操作されているとは思わんのか?
自由に動かせる現物株価に、なんの価値がある!
事実、証券会社が株価操作で捜査が入っているではないか。先日も、東証関係者がインサイダー逮捕されたな。
どの口が、株価は操作されていないと言うのか。
貴様ら、鼻でもほじりながら監視しているのか?」
官僚は平謝りだが、意味が無い。
「農林中金の責任者を更迭しろ。いったいいくら飛ばすつもりだ。
今回が初めてではない。 1兆、2兆と、豆腐じゃないんだぞ!
豆腐は、貴様らの脳みそだけにしろ!
元はお米を作って頂いた農家から預かった金だ。税金で埋める気か!?
政府米の差額は、どこへ消えた!?(激オコ)
必ず責任者を吊るせ!」
【赤坂某懐石料亭 松ノ間】
一台の黒塗りのハイヤーからSPを従えて、ある人物が、二人が待つ料亭に入っていく。
「日銀総裁は、アホなのか?
円安容認する発言したかと思えば、一転して円安リスクをどうのこうのと。
雑談してるんじゃないんだぞ。経済記者からの誘導するような質問に、ホイホイ何も考えずにペラペラと。
貴様は、飼犬に首輪をはめることも出来ないのかかね?」
「はぁ、日銀の独立性が……」
「貴様の口からその言葉が出るか。技術協力を引き揚げるぞ。よく躾ておけ」
「マネージャー戻るぞって、なんだ、そのお土産の山は」
【月裏側 母艦オウムアムア ファンド系投資顧問星系探査艦隊 オペレーターの自室で鳴るポケベル】
『!<~~♪>』
オペレーターのポケベルが鳴ったので、急いでブリッジに駆けつける。
「はい、ボス!」
「ボス? ポケベルなんぞ持ちおって、いつの時代だ。
それより小型挺を下へ寄越せ。上がるぞ。話にならん!」
昭和大好きのオウムアムアのオペレーターは、不思議に思った。
「あれ? 明日は、浅草観光と予定表にありますが、もうよろしいので?」
「観光? 何を言っている?」
後ろではマネージャーが肩を落としていた。
【数日後⋯⋯衛星軌道上 みんなの地球連邦株式会社所属 試験練習船J―NAS 談話室】
お魚が手に入ったので、みんなで手巻き寿司パーティーを楽しんでいた。
「急遽呼ばれましたが、何処へ行くんですか?」
ミケアが、お醤油を倒してぶちまけた。
【月裏側 母艦オウムアムア ブリッジ】
「戻ったぞ。現状報告!」
「はっ。原住民がお醤油をこぼしたので、今、ぞうきんで拭いているそうです」
「ふん、笑うと思ったか!ぬるいわ!
原住民は戻ったか? なら連絡を入れろ。今からは我々のパーティーに付き合ってもらう」
【試験練習船J―NAS 談話室 オペレーター】
「親会社から入電。発進準備して待機とのことです」
ミケアは尋ねた。
「で、今回は何をしに?」
「今回、動画撮影して配信で公開するそうです」
ミケアは両腕で胸を隠した。
「……私、水着ならないから」
「よし、お寿司片付けろ! ボギー聞いたな? 発進準備だ!」
「無視か!」




