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1 物価高騰、格安な星に投資する

【名古屋市 アパートの一室 ミケアさんの自宅】


 ハムスターケージを掃除するため、彼女はハムスターを一時別室に移動させようとしていた。

 ハムスターの二匹を手のひらに乗せる。


 「あんこさんより、きなこさんのほうがデブいかな?」

 

 あんこさんは小さい両手でひまわりの種を持ち、こちらを見て、いる?という視線を向ける。

 きなこさんは、ムチムチなハムケツをこちらに向けていた。

 手早く掃除を済ませ、彼女は出かける準備を急ぐ。




【日本政府 臨時特別対策室】


「公表すべきではない」


 閣僚達は小声でヒソヒソと、しかし熱のこもったやり取りをしていた。


 政府の方針は、一貫していた。


「外部に漏らすな。ただし、水面下にてコンタクトは引き続き対応していく」




【NASA: 地球近傍天体観測センター (Center for Near Earth Object Studies, CNEOS) 】


 突如出現したPHAs(潜在的な危険な小惑星)に、各地域の早期警告システムがアラートを発動していた。




【北アメリカ航空宇宙防衛司令部 North American Aerospace Defense Command、略称:NORAD 司令部】


「自然ではあり得ない人為的な機動です。またこのスピードは、現在の技術力では不可能です。

 そして、実はもう一つお聞きいただきたいことが⋯⋯」



 部下から報告を受けた彼は、天を仰いだ。


「⋯⋯⋯大統領に報告を」




【アメリカ合衆国 ホワイトハウス 執務室】


「ミスタープレジデント、御報告です」 


 側近は各セクションから送られた大量の書類を手に、アメリカ大統領執務室を訪ねた。


「合衆国の⋯我々の信頼出来る筋が掴んだ情報によると、日本政府に対して、各国政府に該当しない組織、つまりは⋯⋯」


 大統領は、執筆中のペンを置いた。

「つまり⋯何かね?」


 側近は、一呼吸して報告を続ける。


「⋯⋯地球外の異世界文明から、コンタクトが有り』との一報が⋯」


 大統領は慌てた様子も無く、しかし深いため息をついた。




【日本政府 臨時特別対策室】


「合衆国から、情報の問い合わせが来ております」


「⋯⋯⋯そうか」




【名古屋市 アパートの一室 ミケアさんの自宅】


 ポストに入っている封書の厚みで、だいたいのことは察するが、一応開けてみる。


『今回ご縁に恵まれませんでしたが、末筆ながら、貴殿のこれからの御活躍をお祈り申し上げます』


 その夜、彼女はまた感情を失っていた。




【翌朝 朝のワイドショー 天気予報】 


「終末のお出かけのお天気は〜」

 いつもの天気予報に割り込む、緊急速報の案内音と共に、画面上部にテロップが流れた。


『午後1時より、政府官邸から国民の皆様へ首相より緊急会見』




【国営放送、朝ドラ】


 朝ドラのヒロインが恋人からプロポーズを受けそうな直前で朝ドラは打ち切りになり、急遽報道デスクからの画面に切り替わる。


「この時間は予定を変更して、報道特別番組をお送りします。現場から中継が入っています」


「こちら、政府官邸です。緊急国会召集の動き、また、各国政府機関においても、慌ただしい動きが見られます」


「一部関係者の声として、静止軌道上の他国の衛星と思われる物が、日本に対して何らかの動きをしているとの観測ですが⋯」




【名古屋駅 新幹線口へ続く連絡フロア 液晶ディスプレイ】


「JR各社の対応です。午前中はダイヤ通りの運転。午後は運航休止を視野に入れて減便対応。各私鉄においても、同様の処置が講じられる模様です」


「政府は緊急アラート、もしくは緊急事態宣言の発令を視野に入れている模様です」




【SNS】


「電車が動くうちに早く出社しろ言われた」

「おおおまいら、はまやるな!」

「おじいちゃんに、もうすぐ会えるよって合掌した」

「お前が電車止めるな!」




【日経マーケット】


「東京市場は緊急アラート発令可能性の一報が出てからは、気配値プラスから一転、マイナスに転じました。ドル円は円高の動きです」




【アメリカ合衆国 ホワイトハウス 執務室】


 宇宙飛行士に憧れを抱いていた子供時代もあった。

 その若者も、若かりし頃には不動産王と呼ばれ、今やアメリカ大統領となり、自分の名前を歴史に刻むことを目指していた。


「⋯⋯ふむ、ジャパンに魔女でも出たのかね?」


「いえ、そういうわけでは⋯⋯」


「慌てても仕方あるまい。軌道上のUnknownのことだろう。すでに一報は聞いている」


 大統領はペンを置いて、署名を終えた分の大統領令を机の右側にまとめた。


「仮想敵国のチート人工物ではないという確証を得られたわけだ。他国はどうかね?」


「近隣諸国の報道官は、自国の関与を否定。

 アメリカ単独での交渉を進めた場合には、報復関税の可能性は否定出来ないと」


 側近は、手元のメモに目を走らせる。


「中国は、『その宇宙域は中国の宙域である』

 ロシアは、『軍事衝突の可能性も否定せず。ロシアのいない世界には興味が無い』

 EUは、NATO加盟国を中心に、現状沈黙を続ける様子。

 未だ、日本以外の他国と接触は無い模様です」

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