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33 クラウスの帰省 理解の先に

 ※この話には魔術戦が含まれます。

 魔術の系統や適性などの世界観設定(5話時点)は、2025/05/20の活動報告にまとめています。

 https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2897432/blogkey/3444799/

 未読でも読めるように書いていますが、設定を把握しているとより楽しめます。ぜひご活用ください。

 兵士たちの目には、二人が互いの動きを完全に読み合っているように映った。


 だが実際には、戦場の流れを読み、構築していたのは、レオナルドただ一人だった。

 クラウスは戦術を思考して動いているわけではない。

 本能が告げる答えに従ったもの。生まれつき備わった“才能”だ。


『なんとなくあっちよりこっちを守った方がいい』

『後ろから攻撃が来る気がする』


 そんな獣じみた“天性の勘”で、彼は動いていた。

 そしてその“勘”こそが、理性で構築された戦術の構図を、いともたやすく破壊した。




 木剣はすでに折れ、投げ捨てられていた。

 二人は素手で――身体一つで戦っている。


 攻撃し続けているのはレオナルドだ。

 だが、クラウス相手となれば、攻める側が有利とは限らない。


 クラウスはとにかく頑丈だ。軽い攻撃なら、何発か喰らってもほとんど効かない。

 むしろ下手に打ち込めば、反動でダメージを負うのはレオナルドの方だった。


 さらに、クラウスも要所要所で反撃をする。

 それが渾身の一撃でなくとも、レオナルドにとっては十分すぎる打撃になる。


 現状、傍目から見てダメージが大きいのは、レオナルドだった。


 ──とはいえ、こう思う者もいるかもしれない。

「そもそも、クラウスは〈障壁〉を使えるのだから、ダメージを負わないのは当然ではないか」と。


 だが、それは誤解だ。


 〈障壁〉とは、〈風〉と〈土〉の魔術を応用して発現される防御魔術である。

 この魔術を扱うには、両属性の高い適性に加え、展開に必要な知識と技術を備えていなければならない。


 〈風〉が障壁の形状を作り、〈土〉がそれに強度を与える。

 つまり、〈障壁〉とは、場の魔力を凝縮し空間に固定して作る“魔力でできた透明な壁”である。


 魔術をはじき、形や大きさを自在に変えられる。それが、ただの壁とは異なる点だ。


 その性能は、使い手の技術と注ぎ込まれる魔力量に大きく左右される。

 技術が拙かったり、魔力が足りなかったりすれば、強い衝撃を受けたときに結合が乱れ、〈障壁〉はあっけなく崩壊する。


 また、展開されていない部分──いわゆる“隙間”からの攻撃は当然、防げない。


 〈障壁〉による防御を成立させるには、敵の攻撃の方向や軌道、威力を瞬時に読み取り、それに合わせて適切な形を想像し、十分な魔力を注いで展開しなければならない。


 さらに〈障壁〉は発現中継続して魔力を消費し続け、そのうえ、集中が途切れれば即座に霧散してしまうという性質もある。


 だからこそ、これを自在に扱える者は極めて少ない。


 アイゼンハルトが“王国の盾”と称されるのは、“軍の家”であることに加え、その血に〈障壁〉を扱うだけの適性を宿し、幼い頃から〈障壁〉を叩き込まれる家系だからだ。


 〈障壁〉を崩す手段の一つは、ただひたすら攻撃を続けることである。

 〈障壁〉が耐えきれないほどの衝撃を加えるか、展開し続けるための魔力が尽きるまで攻撃をやめないこと。


 しかし、クラウスは化け物級の魔力量をもっている。

 レオナルドの膂力と魔力では、クラウスの〈障壁〉を正面から破ることはできない。


 ──けれど、彼にはそれを崩す“術”があった。

 なにせ彼は、誰よりも長くクラウスを殴り続けてきた男なのだから。

 喧嘩をし、実戦を重ね、どうすればクラウスを倒せるかを、誰よりも真剣に考えてきた男だ。


 どうすれば〈障壁〉を破れるのか。

 考え、突き詰め、導き出した答えは、こうだった。


「魔力が空間に固定されているのなら、その結合を崩せばいい」


 学者や魔術師が聞けば、こう返すだろう。


「そりゃそうだけど」

 ──そんなこと、できない。

 第三十話時点までのキャラクター・家系設定を活動報告にアップしました。

 お役に立つと幸いです。

 https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3452086/


 次回のタイトルは、「化け物と少年 」です。

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