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13 すごいやつ

 レオナルドは、めちゃくちゃ面倒見がいいやつだ。

 だけど、怒らせると怖くてスパルタだ。


 皆の前ではそんなことはしないが、俺と二人きりだと「チッ」と舌打ちをして、苛ついた顔をする。

 なのに、見捨てずに最後まで説明してくれる。


「分からないこと」を「分からない」と言うと、たぶん基礎中の基礎なんだろうな、というところから根気強く教えてくれる。


「分からない」と言わず、ただ頭で「よく分からないな」と考えていると、「何が分からないんだ?」と訊いてくれる。

 なんで俺が分かっていないことに気付いたのかを尋ねたら、「顔面に『分からない』と書いてある」と答えられた。

 そんなこと、初めて言われた。


 俺が「分からないこと」がなんなのかすら分かっていない時は、一緒に「何を理解していないのか」を探してくれる。

 たぶん、すごく——どころか、ものすごく頭がいいんだと思う。


 体術や魔術の勉強をしている時もそうだ。

 俺にいろいろやらせて、それを見ながら、ぶつぶつといろんなことを言う。

「どれそれの応用ってことか」とかいろんな公式(だと思われるもの)を呟いたり、この前は「結局、術陣と詠唱を同時に組み込み、両方を省略するのが最適解か?」とか、独り言みたいに考えをまとめていた。


 意味はカケラも分からなかったが、すごいやつだなと思った。



 ----------




 クラウスは、バカだ。


 頭が悪いというわけではない。説明すれば理解する。

 語彙力が足りないせいか、単語の意味から教えなければならないこともあるが、理解力自体は決して低くない。


 クラウスは、「大人しく机に向かえないバカ」だ。


 時間をかけて勉強を教えた。

 テスト前に口頭で問題を出した時には答えられていた。

 しかし、実際のテストでは及第点しか取らない。


「座ってると集中できないガキ」のようなものなのだろうか。


 昔、家庭教師が「そういった子供も存在する」と言っていた記憶がある。

 当時は自分に関係のない話だと思い、深く掘り下げなかった。

 今になって、あの時もっと問いを重ね、そういった者への対応策を聞いておけばよかったと悔やまれる。


 だが、クラウスは時折、誰も思いつかないような角度から発想を出す。

 基礎知識が足りないはずなのに——いや、むしろそうだからこそ、既存の「答え」にとらわれず、新しいアイディアを生むのだ。

 そういった視点からも、軍人としての「才能」を感じる。

 ……悔しい、と思う。


 クラウスはバカだが、すごいやつだ。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
バカと天才は紙一重とはよく言ったものですが、クラウスはまさにそんな感じですね。 読字障害で語彙力はないけど、理解力はある。うらやましいような、そうでもないような。
ここまでくると、クラウスの読字障害を理解したレオナルドがどう行動に移すのか、気になってきますね。
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