裁き手に在らずは.....
いつもありがとうございます!
「教皇様に命を受けて裁き手を育てる!それが私達にとってどういう事を意味するのか、貴殿は知らないのです!」
「.....どういう意味だって言うんですか」
マストは深呼吸をして、落ち着きを取り戻した後、語り始めた
「そもそも裁き手について貴殿は何を知っていますか?」
「神国の武力組織で、神国の敵を神に代わって裁きを行うということなら知っています」
「大体合っていますが、1つ大切な情報が抜け落ちています。それは、各家の人間1人しか裁き手には加入できないという事です」
つまり兄弟揃って裁き手になる、みたいな事が出来ないってことか
「それは何故ですか?」
「単純なことです。裁き手加入者は1人で聖騎士何十人分の戦力になるので、裁き手内で派閥などを作って力を持たないように教皇様が定められたのです」
その理屈は多少は分かるがそれがなんだというんだ
「だからなんだって言うんですか?」
「.....私の息子は裁き手になる為に人生の大半を費やして修行を積んでいました」
待てよ、マストの息子が裁き手になろうとしたとしても教皇に命じられてアンナさんを裁き手にしてしまったら.....
「アンナを裁き手にするよう教皇様から命じられて、息子の努力は全て無意味になってしまったのです」
「無意味って、裁き手にならなくたって死ぬわけじゃあるまいし.....」
「私の息子は裁き手になるのが小さい頃からの夢でした。それをある日理不尽に刈り取られてしまった。アンナが裁き手に正式に加入をした次の日に私の息子は自殺していました」
「え?」
部屋の隅から声が聞こえた
全員が声の方を見るとそこには見覚えのある女性の姿が現れていた
「アンナさん.....」
恐らくアンナさんは透明化を使ってこの会話を盗み聞きしていたのだ
「そ、んな、私のせいで、兄様が自殺.....?」
アンナさんは酷く動揺していた。マストの息子が自殺しているのを知らなかったのか、はたまた自殺した動機を知らなかったのか
「来ていたのかアンナ、折角だからお前もこの話を聞くといい。イエヒサ殿の隣に座らせてもらいなさい」
アンナさんはフラフラとおぼつかない足取りで俺の隣の席に座った
「私の息子が遺した遺書にはこう書かれていました。裁き手に在らずは英雄に非ず、と」
そんな.....そこまで裁き手に憧れていたのか、マストの息子は
「理解して頂けたでしょうか?私がアンナを勘当した理由が」
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