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子供たちと森の主②

「ヨハンくーん!」


 そう声を上げながら近づいてくるのは、この国では標準的な髪の色である茶色の髪をショートカットにした少女だった。

 彼女を筆頭に、武装した少年少女がヨハン達に笑顔を見せて寄ってくる。

 その数は4人だった。

 最初に声を掛けてきたショートカットの少女は、ベズィー。年齢は14で、ヨハン達よりも年上である。身長も高い方で、ヨハンよりも少し高いくらいであった。

 彼女は軽装の革鎧を着ており、背には矢筒と弓を背負っている。

 次に長髪を後ろに束ね、幼さの残る顔にどこか眠たげな眼をした少女、トーアーサ。彼女は同じく革鎧で、獲物は腰に付けた短剣である。

 次いでオールバックの少年、コギル。彼は騎士に憧れており、サイズの合っていない古びた銅の鎧に身を包み、片手でも扱えそうなツーハンドアックスをぶら下げている。

 そして最後に、気の弱そうな少年。サラサラの緑の髪をしており、ベズィーやトーアーサよりも革の面積がすくなく、洗練された軽装の革鎧を着ておどおどとした様子でヨハン達を伺う少年、ポルルだった。

 全員が集まった事を確認し、ヨハンは一つ頷いてシモンと目くばせし、その場の全員にむけて号令のように声を発した。


「よし、行こうか」


〇〇〇


 ヨハンとシモンを伴った計6人の少年少女は、村長宅、ケティルの家に辿り着いた。

 そこでは、家の前でポルルの母ピュズリが腰に手をあて仁王立ちで出迎えてくれた。


「よく来たね! さっさと入んな!」


 言われて、それぞれ礼を言いながら玄関をくぐってゆく。

 応接間に通された一行、そこでケティルが「よう」と声を掛けてきた。

 自然体のヨハン、シモン。やや緊張した面持ちで武装した残り4名という一種異様な様相であった。

 ケティルは、その面々を見渡し、困ったような顔をしながら、ヨハンに剣と盾、シモンに長剣をそれぞれ投げてよこした。

 ヨハンとシモンは視線をケティルから一切動かさずそれらを受け取って、「ありがとうございます」と礼を言う。

 そこに、ピュズリが加わって大きな声を張り上げた。


「いいねえいいねえ!! あんたらはきっと強くなる! あたしには敵わないだろうけど、ケティルよりはつよくなるかもねえ!」


 その言葉を受けて、眉をハの字にしたケティルが、ヨハンに向かって心配そうな声を掛けた。


「なあ、本当にいいのか? 危ないと俺は思うんだが……」


 その声がピュズリの耳に入り、ピュズリは腰に手を当て怒鳴る。


「あんたはまだそんな事言ってるのかい!? ヨハンとシモンは、そんじょそこいらの傭兵より断然強いんだ。そんな事あんたにだってわかってんだろ!」


「そりゃ、そうだろうけどよ。まだ子供だし、ペトロから預かった子なんだ。心配だろ」


「この子達はね、勇者一行に加わろうなんて事言う子たちだよ? もしこんな所で死ぬなら、どうせそう遠くないうちに死ぬよ」


「わかったけどよ、村の子供と一緒ってのも、なあ」


 言って、ケティルは村の子供たち4名に視線を送る。だが、ピュズリはそれを跳ね返した。


「はっ! バカ言うんじゃないよ。ヨハンとシモンの二人がいれば、大丈夫に決まってるだろ。それに……」


 ピュズリは、言葉を続ける前に、息子であるポルルに視線を送る。その視線は、今までとは違い、慈愛に満ちた視線に思えた。


「ポルルもいるんだ。ポルル、しっかりみんなを守ってやんな」


「は、はい! 母さん!」


 その返事に満足したのか、ピュズリはにこりと笑ってポルルの頭を撫でる。

 ケティルは諦めたようにため息をついていた。

 このやりとりに、ヨハンとシモンは、これが母親という存在なのか、と目を見張っていた。

 彼らは母親を知らない。少なくとも、物心がついたころには父とヨハン、シモンの三人で生活していた。

 この眼前で繰り広げられている光景を見るに、母親の存在というのは、家族の中でも大きいものではないかと二人は思った。

 それと同時に、母親が居ないにも関わらず、全く不幸を感じず生きてこられた事、それを成した父、ペトロの偉大さと愛の深さを噛みしめていた。

 そんなヨハンとシモンに、ピュズリが確認をしてくる。


「さて、あんたたち。今回の目標を言ってみな」


 答えるのはヨハンだった。真っすぐにピュズリの目を見て言う。


「はい。今回は南に数日行った場所にある森に向かい、父上の杖の素材となるものを捜索してきます」


 続いて、シモンが続ける。


「道中は危険度が低いですが、森は危険な場所と想定しています。現状ですと、肉食の魔物が数種確認されています。よって、戦闘は私とお兄様。戦闘補助にポルル。野営の設営や探索補助にベズィー、トーアーサ、コギルという構成を想定しています」


 その答えに、ピュズリは満面の笑みだ。


「いいじゃないか! さすがペトロの子だね! あと、気を付けな。南の森は人間が踏破していない場所。つまり、別の何かが支配している可能性がある。あたしの勘だと……いや、こいつは自分達で確認してみな。じゃ、気を付けていってきなよ! ケティル! 準備手伝ってやんな!」


 全幅の信頼を寄せてくれるピュズリに、ヨハンとシモンも最大限の信頼を込めて「ありがとうございます!」と返し、一行はケティルが用意してくれている馬車の下へ向かったのだった。

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