Karte3『コナンとドイルの二者択一』3
私の推察に、夢野さんは肯定するかのような笑みを浮かべた。
それにしても、少しだけ意外なように感じる。
『電子書籍が主流になりつつある時代だから、さすがに電子書籍化はされてるみたいだけどね』
夢野さんは、そう言った。
確かに『もといた世界』でも電子書籍の市場規模は増加していた。
それでも『もといた世界』では紙書籍を好む人の方が多かったし、特に小説に関しては紙書籍でなければ読んだ気がしないと電子書籍を疎む人も少なくなかったように思う。
なので市場規模こそ増加はしていたが、それでも主流になるようなことはないように感じていたし、実際"紙書籍がなくなることはない"と断言する声も多かった。
だが、夢野さん独自の見解というわけではないのであれば『この世界』では電子書籍が主流になりつつある。
『もといた世界』で紙書籍がなくならないと言われる理由の一つが紙書籍をコレクターズアイテムとして扱う人が多いからだが、電子書籍が主流になってきているということは『この世界』では紙書籍をそのように扱う人が少ないのかもしれない。
現に栗栖エルは自身の作品をインテリアとして手元に置いてもらえるよう紙書籍はハードカバーしか売らないという工夫をしているし、あえてそのような工夫をしているのは、そのような工夫をしなければ紙書籍を買う人が少ないからとも取れる。
それが意外なように感じるのだ。
『この世界』のぬいぐるみは、持ち主との結びつきが強くなると生命を宿す。
だからなのか、『この世界』の人たちはぬいぐるみに限らず"物"を大切にする人が多いように感じていた。
なので、本に関しても紙書籍を手元に置き、大切にコレクションする人が多いイメージがあったのだ。
それを夢野さんに伝えてみると、このような答えが返ってきた。
「うーん…逆に、物を大切にしているからこそ電子書籍を選ぶ人が多いのかもしれないね」
「逆に、ですか?」
「うん。紙の本って、結構管理が大変でしょ?黄ばんだり虫がわいたり、集めれば集めるほど置き場所に困って雑に置いてしまうことだってあるだろうしね。管理出来る自信があれば紙の本を買うんだろうけど、管理出来る自信がないのであれば、初めから電子書籍を買うって人が多いんじゃないかな」
「あ、そうか…物を大切にしているからこそ、最後まで責任を持って大切にできないと感じるものは初めから手にしないってことですね」
「そういうこと!真宙くんが文庫しか集めていないのも、それに近い理由みたいだし。本が好きだからこそ、逆に買わない選択をしているんだろうね」
「はいはーい!ぼくも、いがいにかんじることあるよー!」
最後の一枚となったホットケーキを名残惜しそうに食べながら私たちの会話を聞いていたテディが、手を挙げて会話に加わった。




