Karte3『コナンとドイルの二者択一』2
私の思った通り、昨夜テディが見ていた夢の内容はパンケーキにまつわるものだったらしい。
「あさごはんはパンケーキがいいなー!」とリクエストしてくれたので、今朝の食事はホットケーキプレートにした。
パンケーキではなくホットケーキにしたのは、昨日レストランで食べたパンケーキは生地自体には甘みが付いていないものだったので、生地自体が甘いホットケーキにして違いを出してみようと思ったから。
カリカリベーコンとスライスしたアボカド、アスパラガスのソテーを添えたホットケーキプレートは、どれも簡単に作れるのに豪華に見える。
そして、さすがは甘党揃いのこの家、料理に甘みを付けるために使っているはちみつだけではなくメープルシロップも常備されている。
そういえば以前メリーさんが、
「ちかくにフレンチトーストがおいしいカフェがありまして、あやさんとテディさんがいらっしゃるまではだれもりょうりをしませんでしたから、よくデリバリーしていたのです!」
と言っていたので、フレンチトーストを食べる時に使っていたのかもしれない。
私とメリーさんはメープルシロップ、夢野さんははちみつ、テディはメープルシロップとはちみつのハーフ&ハーフと、それぞれの気分と好みに合わせてホットケーキを味わった。
ちなみに真宙くんはリビングにいない。
というのも、ぬいぐるみのクローゼットは定休日以外はシフト制で、真宙くんは今日もお休み。
そのため、真宙くんはお昼まで寝ているそうだ。
全員揃って食事を取ることを大切にしている夢野さんではあるが、休みの日は自由にさせてくれている。
真宙くんの分のホットケーキは冷蔵庫に入れておこう。
冷めても美味しく食べられるレシピを選んで作ったので、きっと美味しく食べてもらえるはずだ。
「きょうは、ゆめのさんとおしごとだー!いらいにんさんのところまでいくんだよね?」
アスパラガスのソテーをカットせずそのまま口に入れ、一生懸命もぐもぐさせながらテディは言った。
「そうだよ。今回の依頼人は仕事の関係でぬいぐるみのクローゼットまで来るのが難しいみたいでね。難しいと言っても、距離的には寧ろ近いみたいだから徒歩で行けるよ。目的地まで、ちょっとした散歩気分を味わえるんじゃないかな」
「わーい!たのしみ!…あっ!もちろんおしごとだから、はしゃぎすぎないようにする!」
「うんうん、良い心がけだね♪」
「仕事の関係で、とのことですが…依頼人の方はどんな仕事をされている方なんですか?」
私と共に先に食べ終え、食器洗いを手伝ってくれているメリーさんにお皿を渡しながら、私は夢野さんに尋ねる。
「本業は小説家なんだけど、小説の執筆の他に家業の雑貨屋を手伝っているそうだよ。ぬいぐるみのクローゼットには数週間前から来店予約を入れてくれていたんだけど、数日前からご両親共に体調を崩されているみたいでね…ここ数日は依頼人一人で雑貨屋の営業を行っているんだって。来店日を変更するのも本業のスケジュール上難しいとのことだったから、こちらから伺うことにしたんだ」
「しょうせつか!?すごーい!どんなしょうせつかくひとなの?」
目を輝かせながら尋ねるテディに、夢野さんは覚えのある名前を口にした。
「テディと彩さんは知ってるかな?栗栖エルっていう、若い子達に人気のミステリー小説を書いている小説家だよ」
栗栖エル、昨日知ったばかりの名前だ。
「難しい言葉を使わないようにしていたり、謎もあえて読者が簡単に解くことが出来る難易度に設定していたり…良い意味で何も考えずに読むことが出来て、だからこそ物語の世界にも入り込みやすい…それが人気の理由なんだって。真宙くんが言っていたよ」
「くりすエルさん…ぼく、そのひとのことしってるー!きのう、あやちゃんといったインテリアショップで、コラボしょうひんがうられてたんだよね!」
「うん。なので、私もその作家さん気になっていたんです。真宙くん、本持ってるのかな?持ってるなら借りたいな…」
「うーん…どうだろうね。真宙くん、集めてる本は文庫ばかりで、ハードカバーの本はスマホアプリで読んでるはずだから。これも真宙くんが言っていたんだけど、栗栖エルの小説は、発売してからどんなに年数が経っても文庫化されないんだって。読み終わった後はインテリアの一つとして飾って欲しいって、見た目にもこだわったハードカバーしか出さないんだそうだよ。電子書籍が主流になりつつある時代だから、さすがに電子書籍化はされているみたいだけどね」
「そうなんですね…インテリアとして飾って欲しいって発想、お家が雑貨屋さんだからでしょうか。そういう部分にこだわられてるところも人気の理由なんだろうな…」




