Break1『消えたポップコーンの行方』1
レストランで美味しい食事と楽しい時間を満喫した私とテディは、先週の休日に行くことが出来なかったインテリアショップにようやく足を運び、買い物をして帰宅した。
インテリアショップでは当初の予定通りメインディッシュ用の大きなお皿、グラタン皿にスープマグを購入したが、食事がより楽しくなりそうな可愛くてオシャレな食器が沢山並ぶ店内は誘惑の場だった。
その誘惑に負けた結果、当初の予定にはなかったグラスや箸置きなども買ってしまったし、現在の所持金と貯金残高、今後かかるであろう出費などを考慮しなければもっと買いたいくらいだった。
それでも店内に飾られていた新商品予告のフライヤーに掲載されていたグラスとお皿がとても魅力的だったので、それらが店頭に並ぶタイミングで再来店しようとテディと約束した。
恐らくそれらが店頭に並ぶ頃には、現在よりは貯金残高が増えているだろう。
「ただいま!」
「ただいまー!」
「あやさん、テディさん…!おかえりなさいませ。たのしいじかんをすごすことはできましたか?」
大食いによる体調不良で青ざめながら帰宅した先週が懐かしくなるくらい元気な声でリビングに向かって帰宅を告げるテディだったが、そんなテディを出迎えたのはメリーさん一人だけで、そのメリーさんも何かを考えるように腕を組み首を傾げていた。
先程までゲームをしていたのか、テレビには先週プレイしていたゲームのポーズ画面が映っていた。
コントローラーやテーブルに置かれた飲み物、お菓子の量から察するに、私とテディが帰宅するまでは夢野さんと真宙くんもリビングでメリーさんと一緒にゲームをプレイしていたのだろうが、現在のリビングには夢野さんも真宙くんも見当たらない。
テディは誰かの飲みかけであろうオレンジジュースが入ったグラスを「もらっちゃおっと…」とそっと手に取り、ソファに座って一口飲むと、
「さっきまでみんなでゲームしてたの?ゆめのさんとまひろくん、どっかいっちゃったの?」
と、私の疑問を代弁するかのようにメリーさんに尋ねた。
メリーさんは腕を組んだままこくりと頷き、そのままテディの隣に座った。
「どっかいっちゃったといいますか…ワタクシがふたりにどこかにいっていてほしいとたのんだんです」
「え!?なんでー?」
「しょうしょうかんがえたいことがありまして…ふたりがジャマだったといいますか…」
「それじゃあぼくたちもジャマになっちゃう?あやちゃん、ぼくたちのへやにいってよっか!」
テディは、すばやくソファから立ち上がると私の手を引き、私とテディの部屋まで向かおうとしたが、そんなテディをメリーさんは制止した。
「いえ!おふたりはジャマではありません!ジャマなのはケイイチとまひろさんだけです!」
優しいメリーさんが『ふたりがジャマだった』という言い方をすることに違和感を覚えていたのだが、私とテディは邪魔ではないということからしても、夢野さんと真宙くんの二人に対して何か思うところがあるのかもしれない。
テディもそれに気づいたようで、
「もしかしてメリーさん、ゆめのさんとまひろくんのふたりとなにかあったの…?」
と、恐る恐る尋ねた。
「なにかあったといいますか…せつめいがむずかしいのです。そうですねぇ…あのひ、テディさんはふくつうでねむっていましたから、なにがおきたかわかりませんよね。なのでまずは、あのひおきたことをおはなししましょう」
“あの日”というのは、テディが腹痛で眠っていたという情報から推察するに先週の木曜日、私たちぬいぐるみのクローゼット従業員の休日のことだろう。
「あのひ、テディさんがふくつうでねむっていたあいだ、ワタクシたちはテレビゲームをしていたんです。あやさんとゲームをプレイするのがはじめてだったので、それがうれしくちょっとしたパーティーきぶんだったんです。ときにテディさん、パーティーにひつようふかけつなもの…なにかわかりますか?」
「そんなのわかるにきまってるよ!パーティーには、おいしいたべものとのみものがひつようだよね!」
「だいせいかいです!」
二人とも真剣な表情をしているが、話している内容はとても微笑ましく可愛らしい。
思わず笑ってしまいそうになったが、真剣な二人に、特に夢野さんと真宙くんを部屋から追い出してまで何かを考え込んでいるメリーさんに失礼にあたるので堪えた。
それでも、私と一緒にゲームをプレイしたことをこんなにも喜んでくれていたのだと改めて伝えてくれたことが嬉しかったので、その嬉しさによる笑みは溢れてしまった。
「そういえばあの時メリーさん、ポップコーンを用意しましょうって言ってくれてたよね。ストックがなかったからポップコーンじゃなくてクッキーになったけど…あのクッキー美味しかったよね」
「そう!!そうなのです!!あのときはあやさんとのゲームにむちゅうになっておりましたのでスルーしましたが…ストックしていたはずのポップコーンが、ゆくえふめいになってしまったのです!!」




