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ぬいぐるみたちのメンタルヘルス  作者: 三森れと
Karte2『写真嫌いのマーチ』
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Karte2『写真嫌いのマーチ』22

マーチさんが写真嫌いを克服した数日後、ぬいぐるみのクローゼットの定休日である本日、私とテディは先週訪れたレストランに再来店した。


前回、前日からの大食いによりレストランを満喫することが出来なかったテディのリベンジのため再来店したのだ。


「今日は程々の注文にしようね、テディ」


「もちろん!きょうは、このまえぼくのせいでいけなかったインテリアショップにもいかなきゃだしね!あたらしいおさら、ぼくもたのしみー!」


テディは同じ失敗を繰り返さまいと意気込んでからメニューブックを読み始めた。


「こないだのオムライスおいしかったな…ドリアもたべてみたいな…パエリアもおいしそう…クラブハウスサンドもおいしそうだなぁ…」


と、目についたメニュー名を片っ端から呟いているテディを見て、私が止めなければ同じ失敗を繰り返しそうだと感じた。


テディを見て苦笑していると、店員さんが「失礼いたします!こちらのメニューもオススメしておりますので、よろしければどうぞ」とメニューブックとは別に単独のメニュー表を渡してくれた。


「あやちゃん、それなに?」


「えーと…【期間限定!クマのはちみつパンケーキ】だって!」


「パンケーキ!?」


メニュー表には、可愛いクマのイラストが描かれたプレートに四段程積まれた薄いパンケーキの写真が載っている。


パンケーキの上にはクマ型のバターが乗っており、パンケーキの横にはやはりクマ型のシロップ入れが添えられていて、メニューの説明文によると有名な産地のはちみつが添えられているようだ。


「わー!!とってもおいしそうだし、みためもかわいねー!あやちゃんあやちゃん、ぼく、そのパンケーキたべたいし、いっしょにしゃしんとりたい!」


「そうだね、それじゃあこのパンケーキ頼もっか!」


薄いパンケーキとはいえ四段も積まれているので結構な量の筈だ。


今日のメインディッシュはパンケーキにして、パンケーキに合いそうな副菜を何品か注文することにしよう。


注文から数十分後、注文していたメニューが一斉に届いた。


ベーコンステーキ、ポーチドエッグの乗ったアスパラガスソテー、ハーフサイズのシーザーサラダ、そして私たちの本日のメインディッシュであるパンケーキ。


パンケーキは写真で見る何倍も可愛く仕上がっており、バターと小麦の甘い香りが食欲をそそる。


「それじゃあ早速写真撮ろっか!冷めないうちにね」


「わーいっ!」


私がスマートフォンを構えるのと同時に、テディは両手でパンケーキのお皿を掴み上目遣いでスマートフォンのカメラを見つめた。


「それじゃ撮るよ!何枚か撮るから、自由にポーズ撮ってね!」


「はーいっ♪」


店内なのでカメラのシャッター音は消し、ポーズを変えるテディに合わせてシャッターボタンを押す。


親馬鹿だと言われてしまうかもしれないが、どんなポーズのテディも凄く可愛いし、撮影している私も凄く楽しい。


ぬいぐるみが動くという部分を抜きにしたら『もといた世界』でぬい撮りを楽しんでいる人たちも、きっとこのような気持ちなのだろう。


(もっと早くーー『もといた世界』でもテディとぬい撮り(こういうこと)をしていれば、テディとの思い出ももっと沢山作れていたし、写真にも残せていたんだろうな…)


「どうしたの?あやちゃん」


シャッターボタンを押さず黙り込んでしまっていた私を気にして、テディが声をかけてきた。


「…ううん、何でもないよ!もう何枚か撮らせてね!」


再びシャッターボタンを押し、何枚か撮り終わったタイミングでテディがレストランホールをキョロキョロと見渡した。


どうやら店員さんを探していたらしく、見つけると、


「てんいんさーん!おねがいしまーす!」


と手を挙げ店員さんを席まで呼んだ。


「お待たせいたしました!」


「てんいんさん!ぼくとあやちゃんのしゃしんとってください!」


そう言うとテディは私の手からスマートフォンを取ってそのまま店員さんに渡し、「よいしょ…!」と席を降りると私の膝によじ登り、私に背を向け座った。


「ふふ、かしこまりました!」


店員さんが私たちに向かってスマートフォンを構えてくれたので、私はテディとこの状況に流されるまま、テディと一緒にスマートフォンのカメラを見つめた。


ハイチーズの合図と共にシャッターボタンが押され、「確認お願いいたします!」と返されたスマートフォンの画面には、満面の笑みを浮かべたテディと、ぎこちなさと照れが混ざった表情を浮かべた私が写っていた。


「わーい!ありがとうございます!」


テディは元気にお辞儀すると、身体をくるりと返し、私に顔を近付け笑った。


「ぼくね、あやちゃんといっしょにしゃしんとるの、ひそかなゆめだったんだよー!だからね、これからはいっぱいしゃしんとろうよ!ぼくとあやちゃん、いっしょにうつろうね!」


テディは「えへへ♪」と笑うと自分の席へ戻り、「それじゃあたべちゃおー!いただきまーす!」とナイフとフォークを手に取った。


ーーもっと早く、しておけば良かった。


そう考えるのは、もうやめにしよう。


そんなことを考えたって、過去は変えられない。


そんなことを考えるくらいなら、未来の私が二度と後悔しないように、今を生きれば良い。


『この世界』で、大好きな貴方(テディ)と、今を生きよう。





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