表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぬいぐるみたちのメンタルヘルス  作者: 三森れと
Karte2『写真嫌いのマーチ』
30/41

Karte2『写真嫌いのマーチ』21

「コトコさん、マーチさんのことみつけてくれるといいねー!」


マーチさんと同じくらい真っ直ぐな性格のテディが、マーチさんとナツミさんに無邪気に声をかけた。


「あははっ!テディさん、コトコさんじゃなくて、コトネさんですよ!」


「わー!!ぼくとしたことが!!いいまちがえちゃったよー!だって、ふたりとも、おなまえがにてるんだもん!!」


申し訳なさそうに叫ぶテディを見て、ナツミさんはヘッドマスク越しでも分かるくらい楽しそうに笑った。


「ふふっ、ちなみに似ているのは名前だけじゃないんですよ…苗字も似ているんです」


「え!そうなんだ!みょうじは、なにさんっていうの?」


「タカマチコトネさんというんです!コトコさんは、ナカマチコトコさんですから、ほんとうににていますよね。あぁでも、コトネさんが、どこかのおうちにとつがれているのでしたら、いまはべつのみょうじになっていますけどね」


「人様のお家のことをペラペラ話すのは失礼ですけど…コトネのお家の事情が変わっていないのであれば、お婿さんに来てもらっている可能性の方が高いはずです…。だから、今も苗字変わっていないんじゃないかしら…」


「あぁ…そういえばコトネさん、そんなことをいってました!いままでわすれていたぶん、せんめいにおもいだせます!」


高町コトネと中町コトコ…確かによく似ている。


お二人のことを同時に話せばテディじゃなくても言い間違えてしまいそうだ。


「高町コトネ…高町コトネ…」


私の隣で、真宙くんがコトネさんの名前を繰り返し呟いている。


「どうしたの?真宙くん」


「高町コトネ…高町コトネ…どこかで聞いたことが…いや、見たことがある名前だなって…あ、そうか…!」


私の問いに答えると言いたげに目配せをした真宙くんは、マーチさんのスマートフォンに表示されたままのぷろむなどのバックナンバーをタップし、あるページを開いた。


そのページとは、編集後記だ。


編集後記とは雑誌の編集者による後書きのことだが、真宙くんはそのページに記されている、ぷろむなどの編集長の名前を指差した。


そこには確かに【高町コトネ】と記されていた。


「もしかして…コトネさんが、ぷろむなどの編集長!?」


「え!?」


マーチさんは驚きの声を上げ、真宙くんから奪い取るようにスマートフォンを取り画面を見た。


ナツミさんもマーチさんと共に画面を見て、驚きからか言葉を発せずにいるようだ。


ナツミさんとは裏腹に、マーチさんは興奮を抑えきれないようで、


「ちょ、ちょっとまってください!!けいさいのおはなしをうかがったさい、へんしゅうしゃさまから、びじゅつかんのとくしゅうは、へんしゅうちょうがいつもいじょうにきあいをいれているんだっていってました!だから、へんしゅうしゃさまも、おなじナンバーにけいさいするみせえらびは、しんちょうにおこなったといってました…!」


と早口で捲し立てた。


真宙くんは興奮冷めやらないマーチさんと固まって動けないでいるナツミさんを交互に見ながら、


「これはぷろむなどの一読者である俺の意見ですが…例え仕事であっても、嫌な思い出がある場所に対して気合いを入れて取り組むなんてこと出来ないんじゃないかって思います。ぷろむなどの記事って、記事に携わった人の愛が感じられますから…。さっきマーチさんが言っていたように、良い思い出があるから、気合い入れて取り組もうって思えるんじゃないですかね」


そう、これまで読んできた記事に思いを馳せるかのように微笑みながら言った。


「そもそも、はりねずみベーカリーが掲載されるコーナーの内容…つまりはりねずみベーカリーの掲載についても、最終判断は編集長がくだしたんじゃないでしょうか」


真宙くんの言うように、はりねずみベーカリーの掲載を最終的に決定したのが編集長であるコトネさんなのであれば、店長であるマーチさんのことを知らないわけがない。


はりねずみベーカリーは、『この世界』でも珍しいぬいぐるみが店長を務める店なのだから。


マーチさんが言っていた通り、コトネさんもナツミさんとマーチさんに会いたいって思っているのではないだろうか。


長い年月が経ってしまったがゆえ、直接会いに行くことに気恥ずかしさを感じているコトネさんが、仕事をキッカケにマーチさん、そしてナツミさんと再び接点を持とうとしているのかもしれない。


「マーチさんの願い、叶いそうですね!」


「はい!」


マーチさんは嬉しそうに頷いた。


ナツミさんもマーチさんに同調するかのように小さく頷いたが、戸惑っているようにも見える。


無理もないだろう。


罪を抱え、自分は許されてはいけないと思いながら生きようとしていたナツミさんにとって、マーチさんの願いが叶うことーーコトネさんとの再会は、恐怖でもあるはずだ。


だが、コトネさんも二人に会いたいと思ってくれているのであれば、それが叶った瞬間にナツミさんが抱えていた罪も消えるだろう。


当時のように仲の良い三人に戻れる日は近いーーそう、私は思う。


…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ