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ぬいぐるみたちのメンタルヘルス  作者: 三森れと
Karte2『写真嫌いのマーチ』
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Karte2『写真嫌いのマーチ』12

“マーチさんとナツミさんについて、コトコさんのお話を伺いたいです。来週のどこかのタイミングでお時間をいただけますでしょうか”


突然の依頼にも関わらずコトコさんは快諾してくれた。


コトコさんが土日もお仕事をされているのか、それとも休息の時間に使っているのかは分からないが、どちらにせよ避けた方がいいと思ったので“来週のどこかで”と提案したのだが、早いに越したことはないと連絡の翌日ーーつまり今日、ぬいぐるみのクローゼットに来ていただけることになった。


私たちが伺うつもりでいたが、後に控えているスケジュールの都合上ぬいぐるみのクローゼットに足を運ぶ形の方がありがたいとコトコさんからの申し出があり、その言葉に甘えさせていただくことにした。


応接室は今日も夢野さんが対応の為使用しており、在庫管理フロアの狭い作業スペースに案内するわけにもいかないので自宅で話を伺う。


その作業スペースでは現在真宙くんが作業を行っている筈で、コトコさんから話を伺った後合流する予定になっている。


「一昨日ぶりじゃな!またすぐに彩嬢ちゃんとテディに会えて嬉しいよ。依頼などなくても、いつでも声をかけてくれ!」


一昨日お会いした時に着用していたものと似たような形ではあるが前回の菫色とは対照的な印象を受けるマンダリンオレンジのセットアップを身に纏ったコトコさんは、セットアップの色に負けないくらいのエネルギッシュな声色と笑顔で私とテディの出迎えを喜んでくれた。


コトコさんは前回同様今日も紙袋を何個か持っていて、前回より小さい袋ではあるものの数が増えているので持って歩くのはやや大変そうだ。


「良ければお預かりしましょうか?」と声をかけるとコトコさんは


「じゃあこの紙袋たちを預かってくれるかい?この二つはお前たちへの差し入れじゃ!」


そう言って右手に持ったお預かりする方の紙袋三つを私に、左手に持った私たちへの差し入れだという紙袋二つをテディにそれぞれ渡してくれた。


「このかみぶくろとあまいにおい...これ、こないだくれたシュークリーム!?」


「そうじゃ!一昨日持ってきたのはレギュラーメニューのパイシューだったが、今日持ってきたのは季節限定メニューの生のイチゴが入ったシュークリームでな、賞味期限的に今日中に食べるべきじゃが...今日は一昨日のように食べ過ぎてないだろうな?」


「だいじょうぶー!!」


テディはえっへん!と自分のお腹をポンポンッと叩き得意げな顔をした。


「それは何よりじゃ!...で、こっちの紙袋は彩嬢ちゃん用だな」


コトコさんはテディが持つもう一つの紙袋を指差した。


「え?私用ですか?」


私はテディから紙袋を受け取ると、中に入っている物を確認した。


中には五百ミリリットルのペットボトルより一回り程大きい細長い袋にぎっしりと詰められた()()()が三種類、それぞれホタテ味・エビ味・カニ味と記載されている。


「わぁ、美味しそう!海鮮味のおかきなんですね!ホタテも甲殻類も好きなので嬉しいです!」


「やはり彩嬢ちゃんはこっちの方が好きじゃったか!ここの者たち...特に真宙坊は甘い物好きだから差し入れとなると甘いものを選ぶことが多かったんじゃが、このおかきも絶品だから是非誰かに食べてもらいたくてのう!」


コトコさんの言う通り、私は甘い物よりこういったおかきやお煎餅のような塩気のあるお菓子の方が好きなのだ。


勿論一昨日頂いたシュークリームもとても美味しかったが、コトコさんに気づかれているということは顔に出てしまっていたのだろうか。


「気を使わせてしまってすみません...甘い物も嫌いではありませんしシュークリームもとても美味しく頂いたんですが、普段食べない分食べなれていなくて...でも美味しいというのは嘘じゃないんです」


「心配しなくても、それはわかっているから安心せい!先程も言ったが、このおかきも絶品だから誰かに食べてもらいたかったんじゃ。ケイイチ坊ちゃんもメリーも真宙坊も、こういうのより甘い物の方が喜ぶから今まで持ってこれなくてな、彩嬢ちゃんのような子に食べてもらえるのがワタシも嬉しいんじゃよ!あまりにも好きすぎて家にストックが沢山あってな、気に入ったらまた持ってくるから言ってくれ!」


コトコさんの表情と声色からは嘘が感じられない、きっとコトコさんは本心でしか人と話さない人なのだろう。


このおかきも気を使ってのものではなく、自分が気に入っているものをただ私に食べさせたいだけ。


それが私にとってはとても嬉しい。


「はい、ありがとうございます!食べる前から美味しいって確信してるので、是非頂きたいです!」


「ふふっ!他にも色んな味があるからのう、全種類食べてもらおうか!」


コトコさんは嬉しそうに笑った。


「ねぇねぇ、このおかき、ぼくもたべていい!?」


テディはシュークリームの紙袋を宝物を守るように大事そうに抱きかかえながらも、新たな魅力的なお菓子を前にして目を輝かせている。


「勿論じゃよ!彩嬢ちゃんと一緒に食べてみてくれ!」


「わーいっ!あやちゃん、きょうのおひるやすみに、あったかいおちゃといっしょにたべよー!ぼくホタテあじがきになるよー!」


「じゃあホタテ味から食べよっか!イチゴのシュークリームも一緒に食べて...お昼が楽しみだね!」


「うん!あまいのとしょっぱいの、どっちもあるなんてさいこうだよー!なんか、おいわいみたいだね!」


コトコさんは私とテディのやり取りに「はっはっは!二人は本当に仲良しじゃのう!」と愉快そうに笑ってメインソファーに座り、私が淹れたアイスティーを口にして一息つくと、優しくもありどこか寂しさも感じられるような表情に変えた。

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