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ぬいぐるみたちのメンタルヘルス  作者: 三森れと
Karte2『写真嫌いのマーチ』
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Karte2『写真嫌いのマーチ』5

「だー!!彩さんまじで強すぎ、圧勝…というか完勝じゃん!!」


「彩さんと組んだチーム戦以外勝てなかった…」


「ワタクシもです…!ワタクシはともかく、ゲーマーなケイイチがここまでかてないなんて……」


真宙くんは悔しそうな表情で、夢野さんとメリーさんは唖然とした表情でゲームの終了画面を見ていた。


「あーあ!せっかく彩さんにお願い聞いてもらうチャンスだったのになぁ…」


真宙くんは残念そうな顔で両手を頭の後ろで組み、テレビに近い位置にあるサブソファーの背もたれに身体を沈めた。


自分でもびっくりしているが、五十種類程のミニゲームをプレイした内の全て、私が勝ってしまったのだ。


「いやはや、あやさんのあらたないちめんをしってしまいましたねぇ…!こんなにゲームがおつよいとは、おもいもしませんでした!」


メリーさんは「すごいです!!」と先程までの唖然とした表情からは打って変わり、目をキラキラと輝かせて私に握手を求めてきた。


それに応えるように私はメリーさんの小さな手を取る。


たっぷり綿が詰められた手はふわふわの見た目とは裏腹に固い。


「メリーさんありがとう!でも、今日私が勝ったのはたまたまだよ」


「いえいえ!たまたまのレベルじゃありませんよ。こんどはちがうゲームをいっしょにやりましょう!リベンジしたいです!そのときはテディさんにもプレイしていただきましょう!」


「ぼく…?」


いつの間にか目を覚ましていたテディが、毛布にくるまったままメインソファーから降りて私の隣までやってきた。


まだ眠いのか、とろんとした表情をしている。


「テディ大丈夫?おなか痛いの、少しは良くなった?」


「うん、さっきよりげんきになったよ…!」


テディは起きたばかりで甘えたい気分なのか、「よいしょ…よいしょ…」と私の膝の上によじ登ろうとした。


確かに、帰宅直後は真っ青だった顔の色が先程よりも健康的なものに変わっている。


テディの顔を確認しつつ優しく抱っこし、私の膝のちょうどいい位置にくるようにテディを座らせた。


「さっきまでみんなとゲームしてたんだよ。次はテディも一緒に遊ぼうね!」


「うん…あそぶ…」


テディはそう言いながら私の身体に顔を埋める。


どうやらこのまま私の膝の上で二度寝しようとしているようだ。


今の時刻は午後四時、そろそろ夕食の支度を始めたいが少しだけ寝かせてあげようか。


そんな私の考えは


《ピンポーン!》


と、突如鳴り響いた家のチャイムの音でかき消された。


テディの眠気も吹き飛んでしまったらしく「だれかきた!?」と勢いよく身体を起き上がらせた。


「そういえば真宙くんの荷物が届くんだったね、出ておいでよ…僕は一歩も動きたくないから。どっちみち真宙くんのお客さんだろうしね」


夢野さんはテーブルのオレンジジュースに手を伸ばしながら真宙くんに振る。


ゲームの結果により少しだけ拗ねたような声色の夢野さん、いつもであれば「拗ねんなよ、大人げない!」と返しそうな真宙くんだが、その真宙くんはというと、不思議そうな顔とも困ったような顔とも取れる表情で夢野さんを見た。


「それにしては早いと思うんだけど…」


「え、そうなのかい?」


「だって十七時から十九時で指定したんだよ?まだ十六時じゃん」


「あぁ、それは確かに…誰だろう?」


真宙くんも夢野さんも怪訝な面持ちで来訪者がいるであろう玄関方面を見た。


真宙くんは溜息を吐きながら腰を上げ、


「まぁ予定より早まったのかもしれないし、出てみるか」


と玄関に向かう為リビングを後にした。


「ケイイチ、まひろさんのにもついがいにどなたかいらっしゃるよていはありますか?」


「いや、ないよ。真宙くんの言うように予定より早く荷物が届いたのかもね」


「いちじかんもはやくですか?ずいぶんせっかちさんですねぇ…」


そうメリーさんと夢野さんが話していると、リビングに戻ってくる足音が聞こえてきた。


荷物の受け取りにしては戻ってくるのが早いが、聞き慣れた真宙くんの足音と、その真宙くんの足音からずれるようにもう一人分の足音が聞こえてきたことにより来訪者が荷物の宅配便ではないことに気が付いた。


足音以外にも、真宙くんが誰かと話しているような声も聞こえてくるーー知り合いでも来たのだろうか?


そう思いながらリビングの扉に注目していると、ガチャとドアノブが回る音と共に、大きな紙袋を二つ持ったシニア世代の女性と、ドアを支えながらその女性を「どーぞ」と部屋に招き入れる真宙くんが姿を見せた。


真宙くんが長身だからというのもあるが、背筋が綺麗に伸びているにもかかわらず頭の先が真宙くんの胸元に届かない程小柄なその女性は、ドアを支える真宙くんに「ありがとうねぇ」と頭を下げると、ゆっくりながらもしっかりとした足取りでリビングに足を踏み入れた。


その出で立ちは菫色のセットアップに同色のクロッシェ、首元に巻いた黄色のスカーフがとてもオシャレだ。


白髪を生かした美しいグレイヘアは顎下で切り揃えてられており、洗練された上品な空気感を醸し出している。


女性は私を見るや否や「おぉ!」と満面の笑みを浮かべた。


その空気感とは裏腹に、笑みは新しい遊びを覚えた子供の様に無邪気な輝きを見せている。


女性は、その場で立ち上がった私の目の前に立つと、


「聞いていたとおりの、聡明そうなお嬢さんだねぇ!この子はテディかい?」


と言って今度は私の足元に立つテディを覗き込んだ。


チャイムの音で完全に目を覚ましたテディは女性を前に姿勢を正し、


「そうだよー!はじめましてだけど、おばあさんはだあれ?まひろくんのしりあい?」


と首をかしげながら尋ねた。


そうテディに尋ねられ、女性はかぶっていた帽子を脱ぎ自己紹介してくれた。


「ワタシの名前はコトコ、中町コトコじゃ!ワタシの名前、ケイイチ坊ちゃんから聞いたことはないか?」


「あ!」


私とテディは同時に声を上げた。

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