1/41
Prologue
あなたは私が辛い時、いつもそばにいてくれた。
ふわふわでやわらかい毛を撫でれば、どうしようもない不安感が少しずつ薄れていった。
何も言わずにただ私の話を聞いてくれることも、ぐるぐるとした思考を整理することが出来て助けられた。
ーーじゃあ、あなたが辛い時は?
あなたが辛い時、私に出来ることは何だろう。
そもそもあなたは、辛いと感じているのだろうか。
私にとってあなたがどれほど大切な存在だとしても、他者から見たあなたは"物"でしかない。
悲しい、苦しい、辛い、そういった負の感情どころか、楽しい、嬉しい、幸せ、そういった前向きで明るい感情すらないのかもしれない。
それでも考えずにはいられない。
もしあなたに感情があったとして、私があなたを思うように私を思ってくれていたとして。
私は、物言えぬあなたに何をしてあげられるのだろうか。