007
(DANKU’S EYES)
最初に出てきた小学生ぐらいの女の子、エフネ。
男のような見た目で、グランドファンタジアの主人公でもあるスピカ。
二人が、俺の部屋にいきなり出てきて戸惑いが起っていた。
だけど、時間が経つにつれて徐々に落ち着きを取り戻していた。
「こういう転移モノは、普通連続で来ないよな」
ぼやく俺は、スピカを見てなんとなく理解した。
スピカはグランドファンタジアの登場人物、しかも主人公だ。
グランドファンタジアは、男女の二人から一人の主人公を選ぶ。
女主人公の名前が、スピカだ。職業は勇者。
それと、エフネの使う魔法……『ヘルブレイズ』。
あれは、魔王バロルが使う魔法と同じだ。
自称魔王の娘とか言っていたエフネだけど、魔王に子供がいた設定は覚えがない。
だが、目の前に二人が現れたことで空気がヒリついていた。
「とりあえず、落ち着け」
「うん」女勇者スピカは、なぜか照れていた。
エフネの方は、泣き出していて……涙を拭う。
こういう所は、リアルの子供っぽい。
「だが、これは困ったな……流石に黙って住ませるわけにはいかない。
一旦、同居人の方に連絡するか」
ここはシェアハウス、俺以外にも住んでいる人間が二人いた。
そのうちの一人は、滅多に帰ってこないけどもう一人は……鹿山。今もこの家にいた。
「じゃあ、一旦リビングに行くか」
現状を鹿山に報告するべく、俺は振り返った。
廊下を抜けて……リビングに向かうと、リビングのガラス戸から黒い光が見えた。
(リビングはテレビとか、つけていなかったよな)
一瞬、頭の中で考えたリビングの状態。
そのまま、俺はリビングのドアを開けた。
開けた瞬間に、黒い魔方円に一人の人間が引きずり込まれているのが見えた。
「鹿山っ!」俺は叫んだ。
少し離れた場所で、鹿山が円の中に吸い込まれて……黒い結晶が彼の回りを覆い被さった。
俺が近づいた瞬間、黒い柱になってそのまま床に消えていった。
一瞬のことで驚いて、そのまま足元の黒い円を見ていた。
「なにが、どうなっているんだ?」
俺は難しい顔で、吸い込まれた黒い円を見ていた。
黒い円が光を失うと、文字のようなモノが消えていくのが見えた。
(なんだ、あの文字は?)
首を傾げるも、読むことが出来ない。
遅れてエフネとスピカが、リビングを見ていた。
「どうした、男駆?」
「ああ、あの円に同居人が吸い込まれた」
俺は愕然とした様子で、円のそばでしゃがみ込んだ。
そのそばには、掘りこたつがあり彼が飲んでいたと思われるマグカップが置かれていた。
「円……魔方円か?」
「なんだ、それは?」
「転移魔方円……モノを一瞬で瞬間移動させる簡易魔方陣だ」
小さな女の子のエフネが、淡々と話していた。
元々赤い目のエフネは、その場にしゃがんでいた。