「水琴窟」
(カクヨムにも投稿)
きん、ぽちゃん、しゃらーん
耳を澄ますと 静寂の中に 波紋を広げるかのように
聞こえてくる
ぴしゃん、ぽとん、きーん
地上の木の葉のそよぐ音 小鳥の羽ばたきさえも
すべてがガラス張りの向こうの出来事のように
私の意識はすべて この小さな穴の下
闇の世界へと向かう
ぽとぽとん、ぴっちゃん、しゃりーん
そしてふとこわくなる
この下の閉ざされた空間に この音を伝える
小さな穴を通気口にして
誰かがじっと息をひそめているような気がして
わずかに流し込まれた水で 命を長らえている
永遠という時の棺に閉じ込められた 誰かが
影をひそめているような気がして
こわくなる