冒険にゆくぞっ!!
ゆっくぞ〜っ! 9999【WEB】
検索用Nコード:N7773IL
作者:雨澤穀稼 先生
の二次創作です。
作者の雨澤穀稼 先生より許可をいただいております。
悪ふざけがすぎた(汗)
「ゆくぞっ!!」
あらあら、ユゥくん。
もうおひさまも暮れて。晩ごはんも食べたっていうのに、どこへゆくつもり?
「ぼく、冒険にゆかなきゃなんないんだ」
晩ごはんのあとに見た、アニメの影響かしら?
お父さんもユゥくんくらいのころは、週刊少年ドリームズに夢中で。タスマニアマスクの愛国技を、まねしたものだって言ってたわね。
だけど、ユゥくん。
冒険だなんて、あなた、いったいどこへゆくつもり?
「とりあえず、東の国へ。
ルビーのほっぺをしたお姫さまに会いにゆくんだ」
あら、素敵。
だけど、ユゥくん。
東には青い龍がいて、森に嵐と雷を降らすのよ。
「じゃあ、西の国へ。
聖なる岩にささってる、伝説の三つ又のつるぎを引き抜きにゆこうかな」
あら、それはレア・アイテム。
課金なしで手に入るなら、ぜひともおさえておきたいわ。
だけど、ユゥくん。
西には白い龍がいて、百の刃と千の槍を突き立てるのよ。
「ふぅん。じゃあ北の国へ。
シロクマの海賊が残した、沈没船の宝を探しにゆくよ」
あら、それならひと財産。
あたしたちの老後のことも考えたら、逃す手はないわね。
だけど、ユゥくん。
北には黒い龍がいて、氷まじりの冷たい水の流れで、すべてを飲み込むのよ。
「だったら、南の国へ。
フルーツと砂浜のある楽園で、水着のお姉さんたちに見とれるんだ」
あら、ずいぶんマセガキなこと。
誰の影響かしら? お父さーん、ユゥくんのまえで、グラビア・アイドルのDVD見るの、これからやめてもらえる?
だけど、ユゥくん。
南には赤い龍がいて、太陽さえも焦がす炎で、あたり一面、火の海にしちゃうのよ。
「うぅん。それなら、地底はどう?
モグラ人間のみなさんと貿易をはじめて、会社をつくって大儲けするんだ」
あら、それはビジネス・チャンスね。
パイオニアによるイノベーションが、シンコペーションのポンポコベーコンだわ。
だけど、ユゥくん。
地底にも黄色い龍がいて、怒らせると深い地割れを起こして、地底よりももっと深い、奈落の底へと落とされるのよ。
「もう! だったら、空に飛んでゆくよ! それならどう? お昼に空を見あげたけど、龍なんて一匹もいなかったから、だいじょうぶだよね?
天空のスーパー銭湯で、お風呂あがりにお姉さんと卓球するんだ」
あら、浴衣がはだけないか、ドキドキね♡
お父さーん。ユゥくんのまえで、昔のちょっとえっちなラブコメのアニメをDVDで見るの、金輪際やめてくれる?
だけど、ユゥくん。
たしかに、ユゥくんの言ったとおり、空には龍は一匹もいないわ。
だけど、ユゥくん。
なんで、空に龍がいないか、その理由を考えてごらんなさい。
そうなの。
空には、あの怖い龍たちでさえ飛びまわれないほど、恐ろしいやつが隠れているの。きっとあの雲の影。夜なら、お月さまの裏側かもしれないわね。
そんな空に、あなたは本気でゆくつもり?
「ぶぅ! じゃあ、どこへも冒険になんかゆけないじゃないか!
いったい、ぼくはどこへゆけるっていうのさ?」
そうね、ユゥくん。
東も西も。北も南も。下も上もゆけないんじゃあ、どこにもゆけないんじゃないかって困っちゃうのもわかるわ。
だけど、ユゥくん。
あなたは、たったひとつだけゆけるところがあるのよ。
こんな夜遅くなって、こどもはもうどこへもゆけない時間になっても。
お風呂にはいって、ふとんにもぐって。
そして、目がさめたなら。
あなたは、ちゃんとゆけてるの。
「あした」という、つぎの日にちゃんとゆけてるのよ。
「あした」はきょうとはちがう日だし。きのうとちがって、まだなにが起きるかわからない。
これって、最高の冒険だとおもわない?
ほら、ユゥくん。
だから、とっととお風呂にはいって、ふとんにもぐって。
もう、寝ちゃいなさい。
ちゃんと歯磨きはするのよ。
そうそう、いい子ね。
あしたが待ちきれなかったら、夢のなかで、おもうぞんぶん冒険するがいいわ。
目がさめたなら。
あなたはちゃんと、ゆけてるはずだから。
「あした」っていう、つぎの日に。
それがあなたの冒険。
だから、それまでおやすみ、ユゥくん。
「あした」があなたにとって、冒険に満ちた一日でありますように。
だめよ! あなたは、まだこどもなんだから、もう寝なさいってば!
おとなはいいのよ。おとなは!
お父さーん。ユゥくんが眠るまでは、夜中、コンビニ行くのやめてもらえる?