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なろうラジオ大賞4関連作品

サヨナラ、ひまわり。

なろうラジオ大賞4参加作品。

楽しんで頂けると、幸いです。

 ―――私は見ていた。

 遠い遠い、空の果てで。


 ―――ずっと、見ていた。

 青く澄んだ、黒の中で。




 八年前、私は空を飛びました。

 七年前、私は目を開けました。

 ……ずっと光を、見守る為に。





 私は、空を知りません。

 私は、花を知りません。

 私は、鳥を知りません。


 知らないこと、

 知れないこと、

 無い無い尽くしで、今日も私は生きています。

 ………物知らずな子だと、笑われちゃうかもですね。



 ―――でも………私はこれで良いのです。

 だって私は、


 雲の色を知っています。

 海の色を知っています。

 沢山の光を、知っています。






 遠い彼方で、泣いてた貴方。

 荒れ狂う海で、戦う貴方。

 街角で、ふと立ち止まる貴方。

 ―――そんな、(ヒト)を、知っています。






 諦めなかったヒト。

 負けなかったヒト。

 戦ったヒト。

 笑っていたヒト。

 泣いてしまったヒト。

 傷ついたヒト。

 投げ出したヒト。

 挫けてしまったヒト。

 逃げ出したヒト。

 消えていくヒト。

 ――沢山の(ヒト)を、知っています。






 私に、ココロはありません。

 私に、ナミダはありません。

 私に、エガオはありません。

 ―――けれど私は、沢山の(貴方)を知っています。






 貴方を、救うことは出来ません。

 一緒に、笑うことだって出来ません。

 共感も、同情も、励ます事も、私には出来ません。

 ―――けれど私は、貴方の光を知っています。






 諦めた事もあったでしょう。

 逃げ出した事だってありました。

 苦しんだ事も。

 後悔した事も。

 笑った事も。

 歌った事も。


 褒められた、人生なんかじゃないけれど。

 カッコいい、ヒトになんてなれないけれど。


 それでも生きてる(かがやく)貴方のことを。

 必死で生きてる(かがやく)貴方のことを。


 ―――私はきっと………知っています。







 ―――もうすぐ、私は居なくなります。

 目が霞んで、何も見えなくなって……そうして私は居なくなります。

 だから最後に、伝えさせてください。




 声も届かない、遠い空から。

 空も見えない、黒の中から。



 私に、声は無いけれど。

 私に、鼓動は無いけれど。

 それでも………いつか見た、貴方のように。


 私は此処だと、声を張って。

 私がいるぞと、胸を張って。



 ―――貴方の光が、大好きだって。






 貴方が流した、涙の数も。

 貴方が溢した、笑顔の数も。

 ―――きっと私は、知ってますから。



 だからきっと、かがやいて。

 かがやく(いのち)を、私に見せて。









 ―――私は星。

 ずっと貴方達を見つめる、機械の星。



 光を見つめる、

 貴方を見つめる、


 たった一人の星。

人工衛星ひまわり8号は2022/12/13に、ひまわり9号と交代する予定だそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んですぐに気象衛星って分かりましたが、最後まで明かさず、徹底的に擬人化したところが奇麗でした。 [一言] 気象庁がもつ「静止衛星枠」はたしか2つで、暫くは8号がバックアップで、10号が打…
[一言] 良いですねW
[良い点] 素晴らしかったです。 叙述トリックの一部とでもいうのでしょうか。 お見事です!
2022/12/09 20:15 退会済み
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